交通事故に遭った後、損害賠償の金額(示談金)を決める示談交渉を行う際、何をすればいいのか、だれにお願いするべきか、いつのタイミングで行えばいいの、など示談に関する疑問点についてご説明していきます。
目次
交通事故 発生から示談成立までの流れ
交通事故が発生した直後から損害賠償の示談が成立までには、主に下記に記載する5つのステップがあります。
病院で検査を受ける
事故に遭ったら必ず病院で検査をしましょう。
検査結果は示談における大事な証拠にもなりますし、後遺障害等級の申請の際にも認定の参考資料として扱われるからです。
病院で怪我の治療を行う
病院や薬局でもらう診察明細書やレシートは必ず保管しておきましょう。治療費として保険会社に請求するときに必要です。
怪我の完治or症状固定診断を受ける
※症状固定とは、これ以上症状が良くならない状態と担当医師より診断を受けること
治療を続けて怪我が完治すればそのまま示談の準備に入ります。
痛みが残り症状固定と診断されると、保険会社からの治療費が止まります。この段階で損害賠償金の計算が始まります。
後遺障害等級申請を進める。(怪我が完治しない場合)
症状固定だと確定した後は後遺障害等級の申請を行います。
等級に応じて保険会社が支払う後遺障害慰謝料の金額が変わります。
申請方法は事前認定と被害者請求の2つがありますが、自分で資料を集めて申請する被害者請求が認定されやすくおすすめです。
加害者側と示談交渉を開始
示談成立、不服の場合は裁判に保険会社と直接話し合うこともあれば、書類のやり取りの示談もあります。
示談が決まれば示談書を作り、もし交渉が決裂すれば調停や裁判といった別の方法をとります。
という流れで決まります。
加害者側の保険会社との示談交渉は下記の3つの対応で示談金・賠償金も変化してきます。
怪我の治療や検査を適切な病院で事故の直後に行ったか
症状固定の診断のタイミング、後遺障害等級
事故の過失割合
示談交渉を上手く進める8つのコツ
交通事故において、被害者に示談金を払うのは基本的に加害者本人ではなく加害者側の保険会社になります。
よって事故の被害者の多くは、加害者側の保険会社と交渉を進める形になります。
コツ1 損害賠償金を決める3つの基準を知る
保険会社との交渉を進めるにあたり、まず知っておくべき点は損害賠償を決める基準が自賠責基準、任意保険基準、裁判基準の3つの基準があるということです。
・自賠責基準
法律で定められた最低限の補償を行うための基準。3つの中では一番、保険の金額が低い基準となります。
・任意保険基準
自賠責保険は保険会社が独自に定めている損害賠償の基準。
自賠責基準より支払い基準は高い保険ですが、各保険会社で基準が異なりますので注意が必要です。
・裁判基準(弁護士基準)
裁判基準は別名弁護士基準とも呼ばれ、過去の交通事故の判例に基づいて、賠償金を算出する基準です。
この3つの基準うち、過去の判例に基づいて損害賠償金が決まる裁判基準が最も高い基準となります。
保険会社が提示してくる金額は基本的に自賠責基準に基づいた金額となりますので、金額が低い傾向があります。
コツ2 保険会社側の交渉パターンを知る
その為知識がない被害者に対して、一番低い基準である計算した示談金を提案してくるケースが多いといわわれています。
★保険会社が示談交渉で使う交渉内容例★
▶治療費の支払いを打ち切ると伝える
▶症状固定にさせようとする
▶過失割合の変更を認めない
少ない示談金で終わらせたい保険会社と、適切な示談金を貰いたい被害者との間で認識の食い違いが起こっている為、何の対策もとらないでいると、気が付いたら低く見積もられた示談金を受け取って終わってしまうケースもありますので、上記のような交渉パターンをあらかじめ知っておくと良いでしょう。
コツ3 示談金の内訳を知る
「賠償金=慰謝料」と誤解している人がいるのですが、実はそうではありません。よく言われる「慰謝料」とは損害賠償金の中の一部にあたります。
損害賠償金は損害内容によって二つに分類されており 、そのうちの 「精神的損害)」がいわゆる慰謝料になるのです。
交通事故における損害賠償金の内訳は上記の樹形図のように表現されます。
交通事故における示談金の内訳は上記のようになっています。
「財産的損害」は「交通事故が原因で被害者が支払ったり失ったもの」を指し、「積極損害(交通事故が原因で実際に支払った金額)」と「消極損害(交通事故が原因で得られなかった金額)」の二つに分かれます。
「精神的損害」は「交通事故が原因で被害者が受けた心の傷」になり、ここにいわゆる「慰謝料」が属します。
積極損害 | |
---|---|
治療費 | 交通事故の怪我の治療費。事故前から患っていた持病の治療費は認められない事が多い。 |
通院交通費 | 通院にかかった交通費。車の場合は1km=15円で計算される。駐車料金も請求可能。 |
入院雑費 | 洗面具、電話代、コップ等、入院の際に必要になる雑費。1日1,400円~1,600円で計算される。 |
付き添い看護費 | 被害者が幼児の場合や、重傷で動けない怪我の場合の家族が付き添い看護した費用。 |
将来介護費 | 重い後遺障害を患い、これからも介護が必須の場合の介護費用 |
改装費(自宅、車など) | 後遺障害が残った場合、被害者が生活をしやすくするために家屋の一部や車を改造した費用の実費相当 |
器具・装具費 | 被害者の怪我の状態でこれからの生活で義足、義手や車椅子等が必要な場合の実費相当。 |
葬儀関係費 | 被害者が死亡した場合その葬儀費用。おおよそ130万円~170万円が目安 |
弁護士費用 | 弁護士を雇って裁判を行い勝訴した場合、その賠償額の1割程度を弁護士費用として請求する。 |
消極損害 | |
逸失利益 | 被害者が後遺障害や死亡した際に、事故に遭わなければ本来得られたはずの賃金 |
休業損害 | 被害者が事故で入通院していた期間に、事故に遭わなければ貰えたはずの賃金 |
精神的損害 | |
入通院慰謝料 | 事故で怪我を負った被害者が入通院を行う苦痛に対する慰謝料 |
後遺障害慰謝料 | 事故の怪我が後遺障害と残った際、怪我の苦痛に対する慰謝料 |
死亡慰謝料 | 事故で被害者が死亡した時の苦痛や残された遺族が受けた苦痛に対する慰謝料 |
このような保険会社との示談交渉には下記のコツや進め方といった示談の流れを覚えておくのが必須となります。
コツ4 弁護士を立てて示談交渉を進める
弁護士を立てて交通事故の示談交渉を行った場合、被害者自身で示談を行うよりも多数のメリットがつきます。
特に慰謝料を最高基準で請求できるため、もともと低い基準で計算された保険会社からの提示金額よりも高い金額で交渉できるのです。
他にも、示談に関わる一切の手続きや保険会社からの電話対応を任せてしまう事ができます。
★弁護士を立てて示談を依頼するメリット★
▶一番高い弁護士基準で算定した慰謝料をもとに保険会社と示談交渉できる
▶保険会社とのやり取りを一任できる為、治療に専念でき、ストレスにならない。また交渉において保険会社から主導権をとれる。
▶煩雑かつ専門的な知識も欲しい申請手続きを任せる事ができるので失敗がない
またこちらの記事では上記の事柄を含めたコツを記載しています。
コツ5 示談交渉を始めるタイミングは治療終了・後遺障害等級申請後
交通事故の示談は、被害者の治療が終了、または症状固定になった後に後遺障害等級を申請して認定された後に行います。
示談を行う前の注意点:示談の権利には有効期限がある!
実は示談ができる権利「損害賠償請求権」に時効が存在します。
この時効の起算日(カウントを始める日)は「被害者が加害者とその損害を知った日」です。
▼損害賠償請求権の時効▼
▶加害者請求(任意一括払い)……3年
▶被害者請求……2年
コツ6 過失割合の変更に必要な手段を知る
保険会社より提示される過失割合は変更できない事が多いのが事実です。
ただし、内容次第では変更になるケースもありますので、その内容について知っておきましょう。
交通事故の示談交渉の争点になるのはどちらがどれだけ悪いのかを示した「過失割合」です。
この過失割合を決めるのは警察でも裁判所でもありません。
保険会社が過去の裁判記事を参考にして確定します。
過失割合そのものはある程度過去で起きた、似たような事例に当てはめて決定する事が殆どの為、変更が難しいケースが多く注意が必要です。
▼パターン化された過失割合の変更に必要な情報▼
▶実行見分調書を見る
▶交通事故に遭った時に事故現場や車の状態を写真にとる
▶目撃者やドライブレコーダーの映像を探す
交通事故の過失割合の決まり方やその変更方法の細かな点についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
コツ7 「示談書」の内容・項目を把握しておく
提示された金額で納得すれば、一緒に示談書(もしくは免責証書)が送られてきます。
中身を確認してから、自分の署名捺印をして返送するのですが、この中身について知っておきましょう。
示談書のポイント①:示談書に必要な項目を覚えよう
示談書の中身は主に下記7つの項目が記載されています。
▼示談書の項目に必須の7点▼
①当事者と事故の特定……いつどこで起きた交通事故について誰が誰に賠償を支払うか特定
②示談金額……示談の結果確定した損害賠償金(加害者が被害者に支払う義務が発生)
③支払い方法……示談金を一括払いor分割払いで支払うのか、分割払いの場合はいくらずつ払うのか、または示談金の支払の期限を特定
④違約条項……支払期限までに加害者が金額を支払わなかった場合どう対応するのか(絶対必要)
⑤留保条項……この示談ではとりあえず保留にして、発生したら別途対応するもの
⑥清算条項……示談書に書かれた示談金以外はこれ以降互いに請求しない、という確認
⑦履行確保(※約束をきちんと守ってもらうための手段や方法)のための条項……加害者が未成年や資力に乏しい人の場合、示談金をきちんと支払ってもらうために連帯保証人をつけること
また、示談書や訴訟の書類は被害者(原告)と加害者(被告)をそれぞれ「甲」「乙」に置き換えて書きます(加害者が複数の場合はそれぞれ「丙」「丁」をあてる)。
詳しくは以下の記事でご紹介しています。
示談書のポイント:示談書と免責証書は違う
交通事故の示談書には示談書と免責証書が存在します。形式は一緒ですが用途が違うので注意しましょう。
双方とも中に書かれているものは「双方が合意した損害賠償金の支払い義務」や「損害賠償金以外の支払い義務がない」です。
▼示談書と免責証書の違い▼
▶示談書……事故の当事者全員の署名捺印が必要
▶免責証書……事故の被害者のみの署名捺印が必要
交通事故の示談書を作る際は万が一を考え、公正証書で作りましょう。
公正証書にしておけば、もし加害者が支払いを拒否した場合、賠償金の強制執行を裁判所に訴えることができます。
その他詳しい内容についてはこちらの記事を参照ください。
コツ8 示談がまとまらなかった場合の解決方法を知る
加害者側の保険会社と示談で話し合っても、当事者同士が納得せず不成立になった場合は、紛争処理機関のADRを利用するか調停や訴訟での解決になります。つまり、第三者の介入による解決です。
示談以外の方法は主にADR機関(紛争解決機関)の利用・調停・起訴の3つの方法があります。
解決策①:ADRを利用する
交通事故の示談が決まらなかった場合はADR(裁判外紛争解決手段)という中立の立場の専門家機関が間に入って折衷案を作成して解決する方法があります。
▼ADRの特徴▼
▶当事者双方から内容を聞き、示談案や仲裁案を提案する
▶弁護士に依頼する必要がない
▶無料で利用可能
▶ADRが利用できない示談のもめごとがある
ADRはあくまで紛争解決が第一目的の為、示談の状態や当事者同士の関係によっては無駄という可能性もあります。
詳しくは下記の記事にて説明しています。
解決策②:調停か裁判で争う
交通事故の示談で当事者同士の主張がぶつかり、話し合いが決裂した場合は示談ではなく裁判所が絡む調停や裁判での決着になります。
●調停の特徴●
▶裁判所が任命した調停委員2名と裁判官1名が当事者の間に入る
▶調停の方法は被害者の地域の簡易裁判所に申立書を提出する
▶調停の場には代理人が出席してもよい
▶加害者側が調停を申し立てる事もできる
▶あくまで和解なので調停案を断ることもできる
●裁判の特徴●
▶裁判所に、被害者が請求した損害賠償金を加害者側が支払うよう訴えてその判決を求める
▶訴状提出→口頭弁論→弁論準備→証拠提出→確認→判決の流れ
▶訴える金額によって裁判所が変わる(140万以下→簡易裁判所/140万以上→地方裁判所)
▶途中で和解に切り替えることもできる
▶訴額が60万以下の場合は少額訴訟になる
ここまで、示談をうまく進めるためのコツを7つご紹介してきました。自分の状況に応じて、参考にして見てください。
交通事故の示談に関するよくある質問と答え
物損事故でも相手に示談金は請求できる?
示談金は修理費などを含めた賠償金の総額じゃから、物損扱いにしても修理費や代車代など示談金を受け取ることはできる。
しかし、治療費や入院交通費、休業損害など怪我を前提とした賠償金を受け取ることはできん。
このため、物損扱いにすると相手に示談金は請求できるんじゃが、示談金額そのものが大幅に減額されてしまうんじゃ。
事故後の示談交渉を弁護士に依頼するメリット
もらい事故なら弁護士に依頼するかどうかを選ぶまでもないのう。保険会社に依頼できるとしても、法的な問題が複雑に絡む場合には弁護士に依頼したほうがいいじゃろう。
保険会社は示談交渉に慣れているとはいえ、法律のプロではない事が弁護士との大きな違いじゃ。過失割合や因果関係、素因減額など争いになる法的論点はケースバイケースじゃが、どの事案であれ法的問題を含むから、弁護士に依頼したほうが良いじゃろう。
示談交渉を始めるタイミングはいつがいい?
どのくらいのお金があれば事故前の状況まで回復できるのか、あるいは、どのくらいの金銭的な埋め合わせがあれば納得できるのかを判断できる状況になるまで待った方が良い。
一般的に交通事故後の示談交渉開始のタイミングは、怪我が完治したときか症状が固定したときと言われておるのう。
示談交渉で必要な書類について
まず、交通事故の起きた日時や場所、当事者などが記載されている交通事故証明書はすべての事故で必要となるのう。より詳細な情報が必要になる場合には、事故発生状況説明書や実況見分調書が有効じゃ。
そのほか被害者が請求したい費用項目に応じて求められる書類が変わってくる。怪我の治療費を請求したいなら診断書や診療報酬明細書、修理代を請求したいなら修理費用の見積書や事故車両の写真が求められよう。
被害者が意識不明の場合の示談交渉の進め方
もっとも被害者が意識不明の重体であれば、被害者自ら誰かに示談交渉を依頼することができん。
その場合もし被害者に意識回復の見込みがなければ、家庭裁判所に対して成年後見人の申立てを行い、本人に代わって意思表示ができる人をつけてもらうことになるんじゃ。
それが認められれば、成年後見人が被害者本人に代わって弁護士に依頼できるようになる。
事故に合ったのが子供の場合の示談交渉の進め方
もし親がいない場合は後見人が選出されるんじゃ。子供の示談の特徴として、請求する賠償金の中に「事故による勉強や習い事の遅れやそれを取り戻す為の金額」が含まれるんじゃ。
また子供が事故で亡くなってしまった場合は、親への慰謝料も認められる。子供が被害者の示談で最も争う内容は「責任能力と善悪の判断の有無」じゃ。
交通事故による示談の体験談を見る
示談交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめ
交通事故でケガを負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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