交通事故に適用できる保険

交通事故保険

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交通事故が発生した時、大小問わずさまざまな損害が発生します。この損害を埋める(賠償する)のが保険であり、適用する保険によって保険会社から支払われる金額は異なります。

それでは、どのような保険が交通事故と関係してくるのか見てみましょう。

自賠責保険と任意保険

まずは、交通事故に関する保険の中でも最も代表的な「自賠責保険」と「任意保険」を紹介します。

自動車を運転する女性のイメージ画像

交通事故の損害を賠償する時、ほとんどのケースは自動車保険会社から支払いがされます。

その自動車保険には、「自賠責保険」と「任意保険」と呼ばれる二種類があります。それぞれの性質を見てみましょう。

最低限の補償「自賠責保険」

まず、自賠責保険とは、自動車を運転する人が「自動車損害賠償保障法(自賠法)」に基づき、加入を義務付けられているものです。

また、自賠責保険はあくまで「対人保険」であり、車やガードレールなどの「モノ」に対する損害は、自賠責保険では補償してもらうことはできません。

下記が自賠責保険で定められている損害賠償金の金額です。

費用の種類 金額

 1.入院中の看護料

(12歳以下の子どもに近親者が付き添った場合)

 1日4,100円
 2.自宅介護、通院介護、近親者  1日2,050円
 3.入院諸雑費  1日1,100円
 4.休業損害   原則1日5,700円
 5.傷害慰謝料   1日4,200円
 6.後遺障害による損害   下記を参照
 7.死亡慰謝料  本人(相続される)  350万円
 遺族 1人  550万円
 遺族 2人  650万円
 遺族 3人以上  750万円 
 8.葬儀費用 原則60~100万円以下

自賠責保険には支払い金額に上限がある

上記は、損害ごとに定められた金額の基準ですが、自賠責保険における損害賠償の金額は、上限が下記のように定められています。

そのため、実際の損害賠償金は、この上限の範囲内で支払われるということになります。

事故の種類 損害の種類 支払い限度額
死亡事故 ①死亡事故による損害 3,000万円 
②死亡に至るまでの傷害による損害 120万円
傷害事故 ③傷害による損害 120万円
④後遺障害による損害 介護を要する後遺障害 4,000万円~3,000万円
その他の後遺障害 3,000万円 ~75万円

ちなみに、ひとつの事故に被害者が複数いる場合は、それぞれの被害者に限度額まで支払われることになります。

後遺障害等級に応じた損害賠償金

下記は、自賠責保険が定めている後遺障害等級に対する損害賠償額になります。ちなみに、損害賠償を請求するにあたっては、必ず後遺障害等級認定を受ける必要があります。

後遺障害等級について詳しくはこちら

◆自賠法施行令 別表第1(介護を必要とする後遺障害)

等級 保険金額
 第1級   4,000万円
 第2級   3,000万円 

◆自賠法施行令 別表第2

等級  保険金額 
 第1級  3,000万円 
 第2級 2,590万円 
 第3級   2,219万円 
 第4級   1,889万円 
 第5級  1,574万円 
 第6級  1,296万円 
 第7級  1,051万円 
 第8級    819万円 
 第9級    616万円 
 第10級    461万円 
 第11級    331万円 
 第12級    224万円 
 第13級    139万円 
 第14級     75万円 

自賠責保険では損害を補償しきれない

自賠責保険の補償内容は最低限のものとなっており、賠償金額も低額で設定されています。そのため、ほとんどの事故は自賠責保険だけで損害を補償することができません。

例えば、傷害による損害の上限は120万円と設定されていますが、被害者が重傷を負った場合、1日分の治療費だけで120万円を超えることは決して珍しいことではありません。

自賠責保険をカバーする「任意保険」

そこで、自賠責保険では補償しきれない損害を補うのが任意保険です。加入が強制的な自賠責保険に対し、任意保険はその名の通り、加入することが任意である保険です。

人身事故(対人)、物損事故(対物)、搭乗者の傷害など、損害賠償の対象ごとに上限金額を設定することが出来ます。

   自賠責保険  任意保険
加入の自由

 全員加入しなければならない

 (加入していない場合は罰則がある)

 加入義務はなし 
適用

 人身事故のみ適用

 物損事故では適用されない

 人身事故/物損事故

 両方に適用 

損害賠償額や保険金額

 被害者請求⇒支払われる損害賠償額

 加害者請求⇒保険金の額が定額化されている

 契約により保険金額や補償内容は異なる
示談代行サービス  なし  行っている場合もある

任意保険が対応を断るケースもある

しかし、この任意保険は事故が起きた時に必ず対応してくれるわけではなく、ケースによっては対応を断られる可能性があります。

そのケースというのが、被害者の過失が大きく、支払うべき損害賠償が自賠責保険の支払い限度額の範囲内で済みそうな場合です。このような場合は、自賠責保険に直接請求を行うことになります

自賠責保険と任意保険への請求手順

このように、自賠責保険の最低限の部分に任意保険を上乗せする形になるのですが、自賠責保険の賠償部分を先に受け取るかどうかは、被害者側が選択することができます。

その選択方法として、2つの方法を紹介します。

1.自賠責保険に請求後、不足分を任意保険に請求

ひとつめは、自賠責保険会社に対し、被害者請求として仮渡金請求、内払金請求、本請求(損害賠償額の請求)を行い、不足部分を任意保険会社に支払ってもらう方法です。

仮渡金請求や内払金請求の制度

仮渡金請求と内払金請求は、いずれも本請求に先行して保険金の一部を支払ってもらう制度を言います。治療費がかさんで生活費が苦しい場合などは、低額ではありますが自賠責保険に損害賠償金の一部を先渡ししてもらう仮渡金の制度を使うと良いでしょう。

死亡または負傷をしたことの証明書があれば、損害賠償責任や損害額が未確定の段階であっても、死亡した者につき290万円、傷害を受けた者につき5~40万円の仮渡金を支払ってもらうことができます。

2.任意保険に一括払い

ふたつめは、自賠責保険会社には請求せず、自賠責保険会社が支払う分も含めて任意保険会社に一括して賠償金を支払ってもらい、任意保険会社が立て替え分を自賠責保険会社に請求するという「一括払い」という方法です。

自賠責保険における過失割合

事故で被害者に落ち度(過失)があった場合は、その過失の割合に応じて、被害者が加害者側に請求できる損害賠償金が減額されます。

過失割合について詳しくはこちら

しかし、自賠責保険はあくまで被害者の救済を目的としているため、被害者の過失の割合が7割未満の場合には、損害賠償金の減額はされません。

被害者の過失割合が7割以上の場合は、過失割合に対して減額率が下記のように定められています。

後遺障害・死亡事故の場合

被害者の過失 減額の割合
 7割以上8割未満   2割減額 
 8割以上9割未満   3割減額
 9割以上10割未満  5割減額

傷害事故の場合

被害者の過失 減額の割合
 7割以上10割未満   2割減額 

このように被害者の過失割合が大きい場合も、大きな減額を受けずに損害賠償を受け取ることができますが、自賠責保険は低額の支払い基準が固定されていますし、限度額も設定されているため、不足分が生じる可能性が高いです。

その場合、加害者側の任意保険にも請求を行うことになりますが、任意保険に関してはこのような緩和措置がないため、過失割合が非常に重要な問題となります。

加害者が自動車保険に未加入だった時

加害者が加入している自賠責保険と任意保険から損害賠償金が支払われることがわかりましたが、その保険に加害者が加入していない時はどうすれば良いのでしょうか。

交通事故に遭ってしまったイメージイラスト

加害者が自賠責保険に未加入またはひき逃げで加害者が不明

まず加害者が自賠責保険に加入していない場合を見てみましょう。

無保険者が事故を起こしてしまった場合や、ひき逃げなどで加害者を特定することができない場合、加害者側の車両の保有者が不明な場合などは、自賠責保険から損害賠償の支払いを受けることができません。

政府保障事業からの支払いを受ける制度を利用

このような場合、被害者を救済するために、自賠責保険が支払うべき金額と同額になるまで、政府保障事業から支払いを受け取ることができる制度があります。

この政府保障事業は、あくまで最終的な救済措置という位置づけのため、被害者や労災保険から支払いあるいは給付を受けた、あるいは給付が受けられる場合には、その給付額に相当する金額を差し引いた金額が政府保障事業より受け取ることができる金額になります。

政府保障事業への請求方法

政府保障事業に対する請求は、損害保険会社、協同組合等の事務所が窓口となります。直接出向くか、電話で連絡をすれば手続きの方法を教えてくれます。

なお、あなたが任意保険に加入している場合は、代理店等の担当者に聞くのが一番早い方法となります。

請求する権利は時効があるので要注意

政府保障事業に対して請求を行う権利は、2年で時効消滅します。

その時効ですが、事故の内容によって起算日が異なります。下記の表がそれぞれの起算日になり、そこから2年で時効消滅することになります。

交通事故の内容 起算日
死亡事故 被害者が死亡した日
後遺障害事故 症状固定日
(後に後遺障害が現れた場合)
後遺障害について医師の診断書が出た日
傷害事故 事故発生日

加害者が任意保険に加入していない

次に、加害者が任意保険に加入していない場合です。任意保険はあくまで加入が任意であるため、自賠責保険の未加入より起こる可能性は高いです。

加害者が任意保険に加入していない場合、損害を加害者側に請求したとしても、全額を支払うことができない可能性があります。

そのため、そのような場合は、被害者自身が加入している任意保険の契約内容を確認する必要があります。

「無保険者障害条項」

被害者が加入している任意保険に「無保険者障害条項」という項目があれば、本来は加害者側から支払ってもらえる賠償金を、被害者が加入している保険会社より受け取ることができます。

「搭乗者傷害条項」と「人身傷害条項」

また、「搭乗者傷害条項」や「人身傷害条項」という項目があれば、保険を契約した車に搭乗していた人が死亡あるいは負傷した時に、搭乗者の分の賠償金も支払ってもらうことができます。なお、保険の対象には運転手本人も含まれますので、被害者自身の賠償金も受け取ることができる可能性があります。

重要!しかし、これらの条項については、保険会社からきちんとした説明がされないことがありますので、積極的に保険約款を確認し、不明な点は保険会社に問い合わせる必要があります。

ちなみに、「弁護士費用特約」が含まれる任意保険に加入しているのであれば、弁護士を雇う場合に、定められた限度額まで費用を支払ってもらうことができます。

この特約が使う・使わないは別として、損害賠償請求は弁護士に代行してもらう方が有利になるケースが多いため、積極的に弁護士に相談するようにしましょう。

健康保険

次に、健康保険について説明します。

被害者がケガの治療を行う時、保険会社が健康保険を使うように言う一方で、病院によっては交通事故によるケガの治療には健康保険は使えないと言うところもあります。

そのため、被害者としては健康保険を使うべきかどうか悩んでしまうと思います。どちらが被害者にとって良いのでしょうか。

治療には健康保険を使うのが無難

結論としては、健康保険を使って治療する方が無難と言えます。

まず、事故によるケガの治療であっても、健康保険は問題なく使うことができます。病院が健康保険の使用を渋るのは、治療費が患者の10割負担となる「自由診療」で扱う方が、病院にとって都合が良いからです。

そのため、健康保険を使うことができないと病院から言われたとしても、はっきり健康保険の使用を要求するようにしましょう。

ポイントとなるのは被害者の過失の有無

健康保険を使用した方が良いのか、使用しない方が良いのかにおいて重要な点は、被害者に過失があるかどうかです。

過失が少しでもあるとわかっている場合は、損害賠償金が過失相殺によって減額されてしまうため、治療費を少しでも抑えるために健康保険を使用した方が良いです。

ちなみに、ここで注意するべき点は、警察の言う「過失」と損害賠償での「過失」は考え方が異なるということです。警察に「被害者に過失はない」と言われたからといって、それを鵜呑みにすることは危険です。

過失相殺について詳しくはこちら

自賠責保険が定めた資料に記入してくれるか要確認

健康保険を使用する場合、病院によっては自賠責保険が用意した診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書では作成を拒否する可能性があります。

これらの書類が揃わない場合、自賠責保険に対する請求に支障が出る可能性がありますので、治療を始める前に必ず病院に確認するようにしましょう。

労災保険

次は、労災保険について説明します。

事故が仕事中や通勤中に起きた場合は、労働者災害補償保険(以下、労災保険)が適用されます。労災保険を使う時は、健康保険は使うことができませんが、労災保険には健康保険のような自己負担がないため、その点に関しては労災保険の方が良いと言えます。

労災保険の請求は、「第三者行為災害届」を労働基準監督署に提出することで行います。

労災保険の補償にはいくつか種類がある

また、労災保険は、業務時間や通勤中に起きたケガや病気、死亡事故の補償だけでなく、被害者の社会復帰や遺族の援護なども目的としています(労働者災害補償保険法第1条)。

どのような補償があるのか見てみましょう。

1.療養補償給付

業務上の事情で病気やケガをした場合、労災保険が指定する病院で診察を受けると、治療費は無料になります。その他の医師の診察を受けた場合は、治療費は支給されます。

2.休業補償給付

療養のための休業で賃金が得られない場合、被害者の負傷または死亡当時の賃金を基準とし、休業4日目より支給されます。

3.障害補償給付

業務上に負ったケガが治った後にも身体に障害が残った場合、障害の程度に応じて障害補償年金か障害補償一時金が支給されます。

4.傷病補償年金

療養を開始して1年6か月を経過しても完治しない場合、かつ障害の程度が後遺障害等級の第1級~第3級に該当する場合は、休業補償給付ではなく、等級に応じた傷病補償年金が支給されます。

後遺障害等級について詳しくはこちら

5.遺族補償年金給付

業務上の事情で死亡した場合は、遺族に遺族補償年金か遺族補償一時金が支給されます。

6.葬祭料

業務上の事情で死亡した被災労働者の葬祭を行う人に支給されます。

7.介護補償給与

業務上の事情で病気やケガをした場合、かつ障害補償年金または傷病補償年金を受給している人が介護を必要とする場合に支給されます。

重要!ちなみに、労災保険の支給内容が自賠責保険の支給内容が重複する場合は、同時に利用することはできません。そのため、労災保険の保険金を先に受け取った場合は、自賠責保険からの賠償金を受け取ることはできません。逆に自賠責保険の支給を先に受け取った場合は、労災保険の支給が一定期間(最大で災害発生後3年間)停止することになります。

労災保険について詳しくはこちら

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