交通事故に遭った時、被害者が加害者側に対して請求する慰謝料。
慰謝料=損害賠償と考えている人が多いのですが、実はそうではないって知っていましたか?
ここではそもそもの慰謝料とは何かというところから、被害者の方が交通事故にあってから慰謝料を請求するまでの流れ、慰謝料の請求方法、算出方法、種類についてご紹介していきます。
目次
慰謝料とは?
慰謝料とは、「交通事故で被害者が受けた怪我の精神的苦しみや被害に対して支払われる賠償金」の事です。
たとえば、交通事故の精神的苦痛は以下のような事例があります。
事例①:事故による怪我で入院や通院する事により生まれるストレス
事例②:事故にとる怪我が完治せず、後遺症となり痛みが今も継続している
事例③:事故で死んだ被害者が将来を奪われた悲しみ、死亡による遺族が受けた精神的ショック
また慰謝料について知っておくべきこととして「慰謝料は損害賠償金の一つである」という事です。
損害賠償金は下記のイラストのように、治療費・休業損害・逸失利益や慰謝料などを加えた金額の総称です。
「損害賠償金=慰謝料ではない」と事を予め覚えておきましょう。
交通事故の慰謝料は3種類存在する!相場の求め方
慰謝料の金額や相場を知る前に、まず知っておきたい知識として、交通事故の慰謝料には3つの慰謝料が存在することです。
慰謝料は「怪我をした事」「死亡した事」に対する苦痛として相手に請求します。慰謝料ごとに条件や計算式が異なっているため、相手に請求する際には条件を満たしているかどうかを必ず確認しましょう。
また下記の表のように、被害者の怪我の状況によって請求できる慰謝料のパターンは大きく4つに分類されます。
交通事故の状況別・被害者が請求できる慰謝料のパターン | |
---|---|
入院・通院→完治 | 入通院慰謝料 |
入院・通院→(症状固定後)後遺障害 | 入通院慰謝料+後遺障害慰謝料 |
入院→死亡 | 入通院慰謝料+死亡慰謝料 |
事故でほぼ即死(死亡) | 死亡慰謝料 |
このように、被害者が複数の慰謝料の請求条件を同時に満たしている場合は、加害者側の保険会社に複数の慰謝料をそれぞれ請求できます。
たとえば、交通事故により意識不明の重体で入院し治療の甲斐なくそのまま死亡してしまった被害者の場合、入通院慰謝料と死亡慰謝料を相手側に請求する事が可能です(左記のケースは保険会社によってはまとめて死亡慰謝料として内訳に出される事もある)。
慰謝料の種類① 入通院慰謝料:交通事故が原因の怪我で入院や通院した際に支払われる
入通院慰謝料▶入院期間・通院期間(or実通院日数)
入通院慰謝料(別名傷害慰謝料)とは交通事故で受けた怪我が原因で入院したり、治療のために通院をしたときに支払われる慰謝料です。
怪我の重傷、軽傷ではなく、主に入院期間や通院期間で慰謝料の金額を算定します。つまり入院や通院の日数が長期化するほど慰謝料における相場の金額が高くなります。
1~3ヶ月入院or通院した場合の入通院慰謝料の相場 | |||
---|---|---|---|
入院期間 | 自賠責基準 | 任意保険基準 (旧任意保険支払基準) | 弁護士基準 (/むちうち) |
1ヶ月 | ¥126,000 | ¥252,000 | ¥530,000/¥350,000 |
2ヶ月 | ¥252,000 | ¥504,000 | ¥1,010,000/¥660,000 |
3ヶ月 | ¥378,000 | ¥756,000 | ¥1,450,000/¥920,000 |
通院期間 | (※通院日数は月10日とする) | ||
1ヶ月 | ¥84,000 | ¥126,000 | ¥280,000/¥190,000 |
2ヶ月 | ¥168,000 | ¥252,000 | ¥520,000/¥360,000 |
3ヶ月 | ¥252,000 | ¥378,000 | ¥730,000/¥530,000 |
1~3ヶ月の間に入院、もしくは通院していた場合の入通院慰謝料の相場は上記の金額です。
慰謝料の算出基準や計算方法について下記で詳しく説明しています。
そのためこれらの相場金額はあくまで大まかな目安として参考程度にとどめておいてください。
通院日数が少ない場合の計算方法
Q:4ヶ月間の通院期間のうち、実際に通院した日数が併せて15日の場合でも4ヶ月で計算していいの? |
A1:いいえ。通院期間に比べて実際に通院した日数が余りにも少ない場合は、通院期間をそのまま適用しません。 |
では、ひたすら通院期間を長くすればその分もらえるのでは、と思われてしまうかもしれません。何ヶ月間の通院期間のうち実際に通院したのは週1回のペース、というように実通院日数(=実際に通院した日数)が少ない場合は、実際に通院した日数の約3倍程度を通院期間と定めるケースがあります。
質問を例にすれば、「15日×3=45日」となり、45日(1ヶ月半)が通院期間となります。この場合は4ヶ月ではなく1ヶ月半が入通院慰謝料の算定基準になります。
慰謝料の種類② 後遺障害慰謝料:交通事故の怪我が後遺障害だと判断された際に支払われる
後遺障害等級▶後遺障害等級1級~14級
後遺障害慰謝料とは、交通事故の受けた怪我を治療しても完治することがなく後遺症として残り、且つ後遺障害として認定された際に支払われる慰謝料の事です。
これは、残った後遺障害の痛みと共存するしかない被害者の未来に対しての賠償とも言えます。
後遺障害慰謝料は、損害保険楼算出機構から認定される14段階の等級ごとに金額が定められているため、等級により慰謝料の金額が大幅に変化します。
自賠責基準 | 任意保険基準 (旧任意保険統一支払い基準) | 裁判所基準 (弁護士基準) | |
---|---|---|---|
1級 介護1級 | ¥11,000,000 ¥16,000,000 | ¥13,000,000 | ¥28,000,000 |
2級 介護2級 | ¥9,580,000 ¥11,630,000 | ¥1,120,000 | ¥23,700,000 |
3級 | ¥8,290,000 | ¥9,500,000 | ¥19,900,000 |
4級 | ¥7,120,000 | ¥8,000,000 | ¥16,700,000 |
5級 | ¥5,990,000 | ¥7,000,000 | ¥14,000,000 |
6級 | ¥4,980,000 | ¥6,000,000 | ¥11,800,000 |
7級 | ¥4,090,000 | ¥5,000,000 | ¥10,000,000 |
8級 | ¥3,240,000 | ¥4,000,000 | ¥8,300,000 |
9級 | ¥2,450,000 | ¥3,000,000 | ¥6,900,000 |
10級 | ¥1,870,000 | ¥2,000,000 | ¥5,500,000 |
11級 | ¥1,350,000 | ¥1,500,000 | ¥4,200,000 |
12級 | ¥930,000 | ¥1,000,000 | ¥2,900,000 |
13級 | ¥570,000 | ¥600,000 | ¥1,800,000 |
14級 | ¥320,000 | ¥400,000 | ¥1,100,000 |
上記の表のように後遺障害慰謝料には14の等級と3つの基準が存在し、慰謝料の相場はこのようになっています。またこの表には逸失利益などの後遺障害に関わる他の損害は含んでいません。
慰謝料の種類③ 死亡慰謝料:被害者が死亡した時に被害者とその遺族に対して支払われる慰謝料
死亡慰謝料▶被害者の家庭の位置
(①大黒柱、家計を支えている人②配偶者③独身の男女、子供)
死亡慰謝料とは、交通事故で死亡した被害者や、被害者が死んだことで遺族が受けた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
この場合は被害者は死亡している為、実際に請求の手続きをするのは配偶者や子供といった遺族の中でも法定相続人にあたる人達です(離婚した前妻、前夫、内縁の妻や夫、愛人は含まれない)。
死亡慰謝料は、被害者がその家庭においてどのような立場にいたか、または収入によって金額の相場が変化します。
死亡した被害者が一家の経済的支柱の場合の死亡慰謝料の相場金額 (※遺族は妻と18歳以下の子で扶養している) | |||
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自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
¥12,000,000 | ¥20,000,000 | ¥28,000,000 |
また、相続人には被害者の死亡慰謝料の請求権利だけではなく遺族固有の慰謝料請求権がありますが、この請求権を使用できるのは被害者の両親、配偶者、子供になります(民法711条より)。
その他の死亡した場合の損害賠償金の対応方法はこちらの記事をご覧ください。
交通事故の慰謝料の算定方法は3種類の基準
入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料を算定する際、3つの基準による計算で金額を割り出します。慰謝料の相場はこの基準によって大きく増減します。
自賠責基準―――国から保証される自賠責保険での基準。請求の限度額があり、総じて最低限で計算された金額の傾向。
任意保険基準―――保険会社が個別で決めた基準。統一の基準だった金額をそのまま使用している会社が多い
弁護士基準(裁判基準)―――日弁連が過去の判例や事例から定めた基準。請求金額が最も高いが、弁護士に依頼しなければこの金額での請求は難しい。
交通事故の慰謝料は、3種類の慰謝料のほかに上記の3つの基準が存在します。どの基準で算定したかによって、請求する慰謝料の金額や相場が変化します。
加害者側の保険会社が最初に提示する慰謝料の算定方法のほとんどは、一番低い自賠責基準で算定した金額です。
慰謝料の基準① 自賠責基準の慰謝料の相場金額の求め方
自賠責基準は国から最低限の金額で補償されるため、基準値が低く設定されています。
また自賠責保険基準で計算した3つの慰謝料の相場は下記のようになっています。
入通院慰謝料には支払いの限度額が120万円と決められており、この金額を超えた場合は任意保険会社に超過分を請求することになります。
しかし任意保険会社に未加入(=自賠責保険にしか加入していない)ですと自費での支払いか、加害者に直接請求する事になります。
また自賠責保険基準の慰謝料や相場金額についてはこちらの記事をご覧ください
慰謝料の基準② 任意保険基準の慰謝料の相場の求め方
任意保険には、かつて全社で統一の支払い基準(旧任意保険統一支払い基準)が存在していましたが、独占禁止法の兼ね合いでこの基準が廃止されました。そのため現在は各社ごとに相場や金額が違います。
任意保険基準による慰謝料の相場は下記のようになっています。
任意保険基準における入通院慰謝料の相場
任意保険基準は保険会社ごとに独自の金額で定まっています。したがって、相場をいくらと断定する事は難しいでしょう。
しかしかつて使用されていた旧任意保険支払い基準の表をそのまま採用している会社も多く存在しています。
旧任意保険支払い基準による相場(単位:万円) | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
月数 | 入院 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 128.5 | 141.1 | 152.5 | 162.5 | 170.1 | |
1ヶ月 | 12.6 | 37.8 | 63.0 | 85.7 | 104.6 | 121.0 | 134.8 | 147.4 | 157.5 | 167.5 | 173.9 |
2ヶ月 | 25.2 | 50.4 | 73.1 | 94.5 | 112.2 | 127.3 | 141.1 | 152.4 | 162.5 | 171.3 | 176.4 |
3ヶ月 | 37.8 | 60.4 | 82.0 | 102.1 | 118.5 | 133.6 | 146.1 | 157.4 | 166.3 | 173.8 | 179.0 |
4ヶ月 | 47.9 | 69.3 | 89.5 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.1 | 161.2 | 168.8 | 176.4 | 181.5 |
5ヶ月 | 56.7 | 76.9 | 95.8 | 114.7 | 129.8 | 143.6 | 154.9 | 163.7 | 171.4 | 178.9 | 184.0 |
6ヶ月 | 64.3 | 82.2 | 102.1 | 119.7 | 134.8 | 147.4 | 157.4 | 166.3 | 173.9 | 181.4 | 186.5 |
7ヶ月 | 70.6 | 89.5 | 107.1 | 124.7 | 138.6 | 149.9 | 160.0 | 168.8 | 176.4 | 183.9 | 189.0 |
8ヶ月 | 76.9 | 94.5 | 112.1 | 128.5 | 141.1 | 152.5 | 162.5 | 171.3 | 178.9 | 186.4 | 191.5 |
9ヶ月 | 81.9 | 99.5 | 115.9 | 131.0 | 143.7 | 155.0 | 165.0 | 173.8 | 181.4 | 188.9 | 194.0 |
10ヶ月 | 86.9 | 103.3 | 118.4 | 133.6 | 146.2 | 157.5 | 167.5 | 176.3 | 183.9 | 191.4 | 196.5 |
上記の表はある大手保険会社が公開している慰謝料の表を参考にして作成しています。 入院2ヶ月なら504,000円、通院4ヶ月なら479,000円、入院4ヶ月に通院9ヶ月の場合は1,437,000円の入通院慰謝料が支払われます。
しかし被害者の怪我の状況や治療の進行具合で通院日数や請求する金額も増減するため、必ずしもこの通りの金額になるとは限りません。こちらはあくまで相場の参考程度と覚えておきましょう。
慰謝料の基準③ 弁護士基準による慰謝料の相場の求め方
弁護士基準は過去の裁判例や判例をもとに日弁連(日本弁護士連合会)が算定した金額です。
弁護士が「私があなたに代わって訴訟を起こした場合、これくらいの金額は相手に請求できますよ」と公言できる金額の相場と言い換えることもできます。
弁護士基準による慰謝料の相場は下記のようになっています。
弁護士基準における入通院慰謝料の相場
入通院慰謝料を弁護士基準(裁判基準)で算定する場合、通称「赤い本(民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準)」に掲載されている別表を元に金額を求めます。なお、赤い本を採用するのは主に関東圏で、それ以外の地域では青い本、緑の本(大阪)、黄色い本(名古屋)などがあります。
別表Ⅰ・通常の怪我(単位・万円) | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
月数 | 入院 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
通院 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | |
1ヶ月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 |
2ヶ月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 |
3ヶ月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 |
4ヶ月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 |
5ヶ月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 |
6ヶ月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 329 |
7ヶ月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 |
8ヶ月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 |
9ヶ月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 |
10ヶ月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 |
上記の別表は「赤い本」より参照して作成しています。
この表の見方としては、通院のみ4ヶ月なら90万円・入院のみ2ヶ月なら101万円となります。入院2ヶ月後に通院5ヶ月ならば、173万円になります。
また10日等の1ヶ月以内の日数の金額を求める場合は、1ヶ月の金額を30日で割って1日の金額を割り出してから、日数をかけます。(時間の場合も1日の金額から24時間をかけて1時間を割り出してから数字をかけます)
参考:1ヶ月以内の入通院慰謝料の相場(小数点以下切捨) | |||
---|---|---|---|
1日の場合 | 530,000円÷30日=17,666円 | ||
1時間の場合 | 17666円÷24時間=736円 |
そして他覚症状が認められないことが多いむち打ち症や打撲、捻挫等の軽症の怪我の慰謝料は、下記の別表Ⅱの計算を用います。
別表Ⅱ・むち打ち症(単位・万円) | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
月数 | 入院 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
通院 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | |
1ヶ月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 |
2ヶ月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 |
3ヶ月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 |
4ヶ月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 |
5ヶ月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 |
6ヶ月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 |
7ヶ月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 |
8ヶ月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 |
9ヶ月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 |
10ヶ月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 |
上記の表も別表1同様「赤い本」より参照して作成しています。
むち打ち症でも他覚的症状が認められるケースは別表Ⅰで計算することができます。
但しこれはあくまで参考程度の数字であり、この金額の通りに慰謝料が支払われる事はありません。被害者の怪我の状況や通院の回数、怪我の部位等のような様々事情に応じて金額が増減します。その為、入通院慰謝料の相場は被害者の怪我に応じて変化する、と覚えておくとよいでしょう。
弁護士基準の入通院慰謝料の相場例 | ||
---|---|---|
通常の怪我 | むち打ち症 | |
入院のみ1ヶ月(30日) | 530,000 | 350,000 |
入院のみ1ヶ月半(45日) | 794,990 | 524,990 |
通院のみ7ヶ月 | 1,240,000 | 970,000 |
入院2ヶ月+通院8ヶ月 | 1,940,000 | 1,390,000 |
上のように同じ通院日数を弁護士基準で計算して比較すると、むち打ちとそれ以外の怪我では金額が約1.5倍も違っているのが一目瞭然です。
被害者自身がこの弁護士基準で保険会社に慰謝料を請求することも可能ですが、算定の根拠をきちんと示さなければ保険会社は支払いを了承しないでしょう。
つまりこの基準で請求を考えている被害者は、弁護士に依頼して金額を算定してもらう必要があるのです。
慰謝料増額交渉を弁護士に依頼する利点
交通事故に遭った後に相手の保険会社から提示される慰謝料を含む損害賠償金は、任意保険基準か自賠責基準で計算した相場より低めの金額です。また後遺障害の申請も相手の保険会社に任せてしまった場合、保険会社は最低限の資料で申請する事が多い為に、被害者が思っていた以上に低い等級の認定結果が来てしまいます。
もし慰謝料をふくむ損害賠償金を相手から提示されても、示談を成立する前ならば、弁護士に相談する事が可能です。ある被害者は保険会社から提示された損害賠償金額に納得いかず弁護士に依頼した結果、資料を再収集した弁護士の異議申し立てによる後遺障害等級の再認定と、弁護士基準の慰謝料請求で後遺障害慰謝料が大幅にアップしました。
この被害者のように弁護士に依頼する事で、慰謝料を弁護士基準で請求できかつ適切な後遺障害等級を認定できる可能性があります。
弁護士が介入すると……
慰謝料や損害賠償金を増額する以外でも交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットが大きく4つ存在します。
このように、交通事故の被害者だけでは対応しきれない箇所を弁護士がフォローして対応してくれます。
他にも弁護士に依頼するメリットや慰謝料についてはこちらの記事でも詳しく書かれていますのでご参照ください。
交通事故の慰謝料の請求方法と受け取るまでの流れ
慰謝料は保険会社に単独で請求するのではなく、治療費や通院費、文書費という損害を総括した損害賠償金という形で相手に請求します。この理由として、損害賠償金は原則「一括請求、一括払い」で支払われる事が多い為です(相手の踏み倒しを避けるため)。
つまり判明した金額をどんどん追加して積み上げていくのではなく、一度に全ての損害を請求する事になります。
そのため慰謝料を算定する際は請求できる慰謝料の計算が全てできるようになってから、つまり怪我が完治、または怪我の症状固定後に申請した後遺障害等級の結果が出た後に行うのをおすすめします。
慰謝料を請求してから受け取るまで
交通事故の慰謝料を請求してから受け取るまでは、下記のような流れが一般的になっています。
示談が始まってから受け取るまでの平均期間は(相手の保険会社とのもめ具合にもよりますが)、過失割合でのもめごとが無く後遺障害を含まない示談の場合は1ヶ月~3ヶ月で終了することが多いです。
後遺障害等級が絡む示談は半年以上かかることも多く、訴訟になればさらに期間が延び判決までに1年以上かかるのが一般的です。
後遺障害等級が絡む示談の長期の理由として、示談を本格的に始めるのが症状固定後かつ後遺障害等級の申請結果後というのが挙げられます。後遺障害等級の認定がされやすい怪我の通院期間(症状固定の認定)は半年以上といわれている為、後遺障害が絡む示談の場合はどうしても時間がかかってしまうのです。
相手側に慰謝料を請求する方法
交通事故の被害者が慰謝料を請求する相手は加害者の自賠責保険会社もしくは加害者の任意保険会社のどちらかになる事が殆どです。
自賠責保険は被害者救済のための保険の為、被害者自身が自賠責保険に請求することが可能です。これを被害者請求といいます
◆慰謝料の請求方法◆ | |
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被害者請求 | 提出先:相手の自賠責保険会社 |
方法:損害賠償額支払い請求書を自賠責保険会社に提出(請求額の欄は未記入で)。その際に必須書類(※)を一緒に添付 | |
メリット:書類を提出して認定結果が届き次第一部の賠償金がすぐに受けとれる、仮渡金制度が利用できる | |
デメリット:資料集めや煩雑な手続きを自分で行う為、手間がかかる | |
任意一括払い | 提出先:相手の任意保険会社 |
方法:賠償金の総額を計算して請求金額を記載した損害賠償請求書を任意保険会社に送付する。請求書は決まった書式はない。(その他保険会社ごとに必須書類が変化) | |
メリット:煩雑な手続きがなくなり手間が省ける | |
デメリット:示談交渉が成立するまで慰謝料を含む一切の賠償金を受け取れない、治療費が打ち切られるケースがある | |
※必須書類▶▶交通事故証明書・事故発生状況報告書・診断書・診療報告明細書・通院交通費のレシート(領収書)等 |
自賠責保険の限度額を超えると任意保険会社がその超えた分の金額を補填します。
そのため任意保険会社は自賠責保険の分もまとめて一括対応して先に全額支払い、後から自賠責保険に対して請求する制度を取っています。これを任意一括払い(一括対応)といいます。
被害者請求は、自分で書類や手続きをするデメリットがありますが、提出後に審査が通ればすぐに慰謝料を含めた賠償金が支払われるメリットがあります。
また、被害者請求の場合は治療費等のまとまったお金を先払いで受け取る仮渡金(かりわたしきん)制度が利用できます。
仮渡金制度についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
交通事故の慰謝料に関するよくある質問と答え
慰謝料と損害賠償金と示談金の違い
交通事故の被害者が保険会社との示談交渉に苦戦するのは、専門用語が難しいからじゃろう。一般生活ではなかなか聞き慣れない言葉が多いからのぅ。
簡単に言うと、交通事故の被害者が被ったすべての損害を金額に換算したものが「損害賠償金」じゃ。
「損害賠償金」には、治療費など実際にかかる費用だけでなく、被害者の精神的苦痛を補うための「慰謝料」が含まれておるんじゃ。そして「損害賠償金」の金額を、当事者同士が示談の末決めた金額が「示談金」なんじゃよ。
本当に弁護士に依頼すると慰謝料は上がるの?
被害者から頻繁に寄せられる質問のひとつが「慰謝料はどのくらい上がるのか」じゃ。弁護士に相談する時点で、多くの被害者が何らかの支出をして経済的に困っているから、疑問に思うのは無理もないのう。
実際、弁護士に相談することで示談金が増額するケースは多い。それは、弁護士が裁判を見据えた主張を効率的に行っていくからじゃ。しかし、弁護士に相談してもほとんど変わらない、あるいは弁護士費用分だけ損をしてしまうケースの事故もある。
いずれにしろ、弁護士に依頼をして慰謝料があがるのは間違いない。そもそも交通事故にあって得をすることはないんじゃよ。痛い思いをしているのは自分だからのう。
慰謝料を請求できる条件について
法律に基づいてお金を請求するには、法律で定められている条件を満たすことが必要じゃ。慰謝料の請求も同様で、その条件は加害行為・違法性、故意過失、因果関係、損害の4つだとされておる。
加害行為は交通事故、故意過失は加害者の不注意、因果関係は事故との繋がり、損害は精神的な苦痛(入通院したことや後遺障害を負ったこと、死亡したこと)をいう。
問題となるのは、交通事故によって精神的苦痛を受けたといえるかじゃな。たとえば交通事故の3カ月後にうつ病になった場合、交通事故の影響でうつ病になったのかは争われるじゃろう。
交通事故の慰謝料の計算方法について
1カ月入院して3カ月通院した後、14級の後遺障害だと認定されたとしよう。このケースでは、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を請求することができるじゃろう。
3つある基準のうちどれを用いるかによって目安となる金額は異なるが、一番高い弁護士基準なら入通院慰謝料115万円と後遺障害慰謝料110万円を加えて225万円が相場じゃ。
このように、具体的な事情をきかねば慰謝料の請求は難しいのう。気になるなら弁護士にたずねてみると良いじゃろう。
被害者でも加害者に慰謝料を支払うケースはあるか
交通事故の被害者でも、加害者に対し慰謝料を支払うケースはある。しかも、被害者には納得しがたいことじゃが、被害者のほうが加害者よりも多くのお金を支払わなければならないケースもあるのう。まぁ、実際にお金を払うのは保険会社じゃろうがな。
たとえば赤信号を無視した歩行者(加害者)と青信号で走行していた自動車(被害者)が衝突したとする。
この場合、通常は加害者である歩行者の過失割合のほうが高いとされるが、被害者の自動車の運転手は歩行者(加害者)に慰謝料を支払わねばならん。何故なら人と車の事故だからな。
交通事故による慰謝料の体験談を見る
慰謝料請求の交渉は弁護士への依頼がおすすめです
交通事故でケガを負った場合、慰謝料請求を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの慰謝料を増額できるケースがあります。初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、慰謝料を請求するにあたり不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する慰謝料を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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