交通事故の被害者が労災保険を使うことができる(使える)条件

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被害者が交通事故に遭ったのが通勤中や勤務中だった場合、健康保険ではなく労災保険(労働者災害補償保険)を使って治療を行うことができます。ここでは、その労災保険を使うことができる条件や労災保険を使うメリット、使う際の注意点などを説明します。

「通勤途中」の定義

労災保険が適用される事故には、「業務中の災害」と「通勤途中(出勤・退勤)の災害」の2つの種類があります。

rosai_tukin後者の通勤途中の災害である場合、事故が発生した時間や場所が非常に重要となります。「通勤」の定義は「住居と就業の場所との間を、合理的な経路および方法により往復すること」であり、途中で個人の用事をした場合は、その時点で通勤が中断したとみなされ、労災保険の対象ではなくなります。

しかし、主婦が仕事帰りにスーパーマーケットで買い物をしたことを、通勤の中断とみなさず、労災保険が適用されることもありますので、判断しかねる場合は努めている会社などに相談するようにしましょう。

勤め先が労災保険の使用を嫌がった場合

企業によっては、労災保険を使うことに難色を示す場合もあるようです。また、経営者の中には、業務中の事故以外は労災にはならないと思い込んでる方もいます。もし会社が労災を使うことを渋った場合、事故の状況をきちんと説明し、話し合う事が重要となります。

労災保険はどのような保険なのか

労災保険とは、交通事故が仕事中や通勤中に起きた際に適用される労働者のための保険で、正式には労働者災害補償保険といいます。

労災保険の他に適用される保険についてはこちら

それでは、労災保険がどのような特徴があるのか見てみましょう。

過失相殺の対象にはならない

加害者側が支払う賠償ではないため、慰謝料は支払われませんが、過失相殺の対象とならないのが特徴です。ちなみに、支払われる損害の内容は、自賠責保険とほとんど変わりません。

つまり、相手保険会社から「加害者に過失がないため賠償金は支払えません」と言われたとしても、労災保険から入通院費用や休業補償を受けることができるのです。また、治療費の2割または3割が個人負担となる健康保険と比べ、労災保険は個人負担が一切かかりません

自賠責保険との二重請求はできない

労災保険と自賠責保険の両方が使える状況であっても、この2つを同時に利用することはできません。すなわち、どちらかの支払いしか受けることができないということです。

労災保険から先に支給された場合は自賠責保険からの賠償金は受けれず、自賠責保険から先に支払いがあった場合は労災保険の支給が一定期間(最大で災害発生後3年間)停止されます。

労災保険を使った方が良いケース

自賠責保険と労災保険、どちらかしか利用することができないことはわかりましたが、それではどちらを優先するべきなのでしょうか。

どちらを優先して使わなければいけないという決まりはありません。しかし、以下のようなケースは労災保険を利用した方が良いと言えます。

1 被害者の過失が大きい場合
→被害者の過失割合が7割以上だと自賠責保険では賠償金が減額されてしまうため
2 過失割合で加害者側と揉めている場合
3 加害車両が盗難車で所有者が運行供用者責任を認めない場合
→盗難車の所有者が責任を認めなければ、自賠責保険を使うことができないため
4 加害者が無保険または自賠責保険のみ加入している場合

労災保険にはアフターケア制度がある

労災保険には、業務災害や通勤災害により被災した被害者に対し、症状固定後にも再発や後遺障害後に伴う別の病気を防ぐために、労災保険指定医療機関において、診療や保健指導などを無料で受けることができる「アフターケア制度」が設けられています。

健康管理手帳が必要

そのアフターケア制度を利用するためには、都道府県労働局に申請を行い、アフターケア健康管理手帳を交付される必要があります。

アフターケア制度の対象となる傷病は、脊椎損傷、頭部外傷症候群、人工骨、外傷による末梢神経障害、精神障害などが含まれます。制度を受けることができる期間に制限はありませんが、3年ごとに健康管理手帳の更新手続きをする必要があります。

厚生労働省の公式HPでアフターケア制度を詳しく見る

労災保険の申請方法

労災保険の申請は、「第三者行為災害届」を所轄の労働基準監督署に提出して行います。

労災保険の申請に必要な書類

第三者行為災害届に添付する書類が下記になります。

 交通事故証明書 入手できない場合は交通事故発生届を提出
 念書 必ず請求書本人の署名が必要
 示談書の謄本 示談が行われた場合のみ(コピー可)
 自賠責保険などの損害賠償金等支払証明書
または保険金支払通知書
仮渡金または賠償金を受け取っている場合のみ
(コピー可)
 死亡検案書または死亡診断書 被害者が死亡した場合のみ(コピー可)
 戸籍謄本 被害者が死亡した場合のみ(コピー可)

休業損害補償を申請したい時

また、事故でケガをして仕事を休まざるを得なくなった時、事故に遭わなければ得られるはずだった給与を支払ってもらえる「休業損害補償」についても、労災保険からの給付を受けることができます。その場合は、下記の資料も必要になります。

休業損害について詳しくはこちら

書類 休業(補償)給付支給請求書
※医療機関への入通院の証明が必要
その他 勤務先の証明が必要(事故前3か月の給与支給明細書など)
2割の特別支給金のみの請求も可能

労災保険からは、被害者の実際の給与の6割の休業補償と、2割の休業特別支給金の計8割が支給されます。

しかし、自賠責保険であれば全額を支払ってもらえますので、加害者が任意保険に加入している時は自賠責保険に請求をする方が良いでしょう。

労災保険が使えるのに健康保険を使ってしまった場合

被害者の中には、労災保険が利用できるにも関わらず、健康保険を使って治療を行ってしまったという方もいらっしゃいますが、心配はありません。そのような場合でも、健康保険から労災保険に切り替えることができます

健康保険から労災保険へ切り替える方法

まず、病院の窓口に連絡し、病院で切り替えの手続きができるかを確認します。病院で切り替え手続きができる場合は、窓口負担の3割が病院から返還されます。

反対に病院では切り替え手続きができない場合は、健康保険の適用で支払いをしていない7割分を病院に支払い、領収書と診療報酬明細書を発行してもらいます。そして、健康保険適用の3割の領収書・診療報酬明細書と一緒に、所轄の労働基準監督署に全額を請求して返還してもらいます。

個人の曖昧な考えで労災の使える・使えないを判断し、結果的として間違っていた場合、病院側は一からレセプト(診療報酬明細書)を作り直さなければいけません。それは、保険によって1点の単価が異なるためです。

ちなみに、労災保険の医療点数単価は1点につき12円、健康保険は10円、自由診療は病院によりますが20円程度となります。例えば、治療を行って点数が100点になったとき、労災保険では1200円、自由診療では2000円となり、800円も労災保険の方が安くなります。

後遺障害が残った場合の労災保険

交通事故から1年6か月が経過しても完治せず、傷病年金の第1~3級に該当する労災保険が適用される場合、「労災の傷病年金」を受けることができます。

また、症状固定と診断された場合でも、後遺傷害等級第1~7級であれば「年金(または一時金)」、第8~14級であれば「一時金」の給付を受けることが可能です。

すでに労災保険から年金を受けており、実際に介護を受けている精神神経の障害及び胸臓器の障害者は、更に介護補償の給付も受けることができます。

国民/厚生各障害年金との同時給付の注意点

しかし、国民年金の障害基礎年金、厚生年金の障害厚生年金と、労災保険の障害年金は同時に受けることが可能ですが、その場合、下記の表の通りに労災保険の障害年金が減額調整されて給付されることになります。

同時に受ける年金 受けることが可能な労災保険の割合
障害厚生年金 83%
障害基礎年金 88%
障害厚生年金/障害基礎年金の両方 73%

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