交通事故の示談をしないと起きるトラブルとその解決方法

公開日:2019/07/30

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交通事故保険加害者弁護士示談被害者

示談交渉の写真

 

 示談をしないと被害者側に「賠償の時効成立」「賠償金が貰えない」の二つのトラブルが起こる

 示談をしないと加害者側に「刑罰が軽くならない」「賠償金を自腹で支払うことになる」の二つのトラブルが起こる

 トラブルの解決策は「相手と示談をする」こと

ナビ夫

交通事故に遭うと、最終的に損害賠償金を決めるべく当事者同士で示談を行います。ですが被害者や加害者の中には「示談をしない」という選択をとる人もいます。その理由は様々ですが、示談をしないことで当事者に何が起こるのでしょうか?
示談をしない事でトラブルが起こった場合、その解決方法を見ていきます。

交通事故における「示談」の存在

りんね
さっきそこで交通事故があったみたい。パトカーや救急車のサイレンが鳴ってたし、言い争ってる声も聞こえてなんか嫌な感じだったなあ。
アシスト爺ちゃん
それは大変じゃのう。下手に意地になって示談交渉をやらないって事にならずにうまく進むと良いんじゃが。
りんね
え? 示談交渉ってやらない事も出来るの?
アシスト爺ちゃん
示談はあくまで事故の当事者の権利だからやるやらないの選択は自由なんじゃ。だが個人の感情や忙しさにかまけて示談をせずにいると、大変なトラブルが起きることもあるんじゃよ。

交通事故に遭うと一般的には加害者側と被害者側が話し合いの席を設けて「示談」を行います。示談とは、被害者側の損害やケガの症状の有無、過失割合などを確認します。そして加害者側がどれくらいの損害を出していて、いくら賠償金を支払えば良いのかを、裁判所が絡まない状態で、当事者同士で話し合って決めて約束する事をさします。
もし裁判所が絡んできた場合の話し合いは「調停」となり、話し合いではなく裁判で決める事になると「訴訟」となります。

示談交渉の基本的な流れ

どのように示談を進めるかは個々のケースで異なりますが、下記のイラストのような流れになる事が殆どです。

交通事故発生から解決までの流れ

まず交通事故の被害者が病院を受診してケガの程度の確認や通院・入院による治療を行い、怪我の治療の結果(症状固定か完治か)を知ったうえで、最終的な損害賠償額を明確にするという流れです。

怪我が完治すればそのまま賠償金の話し合いに入りますが、怪我が治らない場合は、半年以上通院して症状固定と判断して後遺障害等級の申請を行う為、どうしても時間がかかってしまいます。

過失相殺と損益相殺が行われて賠償金が確定する

しかし被害者が受け取る賠償金は、示談で話し合った金額がそっくりそのまま貰えるわけではありません。実は下記のような作業が行われています。

被害者の賠償金が確定するまでの流れ

賠償金の総額がはっきりしたところで、加害者側・被害者側それぞれにどの程度の過失があるか話し合います。この過失の割合を過失割合といい、被害者側の過失がある場合、賠償金がその割合だけ相殺されて減額されてしまう可能性が高いでしょう。これを過失相殺といいます。

また交通事故の賠償金は、加害者・被害者双方を公平にみるという考えから、被害総額以上の金額を受け取らないように調節されます。この調節を損益相殺といいます。これらの手順を行って初めて賠償金の金額が確定するのです。損益相殺や過失相殺に関してはこちらの記事をご覧ください。

示談が成立すれば証拠となる示談書の作成を行う

過失割合やの認定や賠償金額などが当事者双方で合意されれば、証拠となる示談書を二部作成します。場合によっては免責証書になる可能性もあります。

示談書は、当事者全員の署名が必要になりますが、免責証書は被害者のみの署名でよいため、書類の作成がスムーズになるメリットがあります。この二種類の書類の違いについてはこちらの記事をご覧ください。

示談書の内容にしたがい、加害者側が賠償金をきちんと支払えば示談は終了です。
しかしこれはあくまでもスムーズに示談が進んだ場合の流れであり、場合によっては話がこじれたり加害者側と連絡が取れなくなったりしてトラブルになることもあります。示談についてもっと深く知りたい場合は、下記の記事をチェックしてみましょう。

被害者が自分で行う示談のメリット・デメリット

示談は交通事故が起きたら必ずするものというイメージがありますが、法律で定められた義務というわけではありません。するもしないも当事者の自由なのですが、実際には多くのケースで示談が行われます。
被害者が「自分で」示談を行う場合は下記のメリット・デメリットがあります。

被害者が自分で行う示談のメリット・デメリット
メリット・訴訟よりも短期間で解決できる
・必要な証拠が少なくて済む
・訴訟よりもかかる費用が少ない
デメリット・慰謝料の算定基準が低くなりやすい
・保険会社の対応に振り回されやすい(強気な対応が多い)
・電話の応対等で精神的なストレスが増す

その理由は、示談をすることで訴訟に発展するのを避け、短期間で解決できる事や必要な証拠が少なくても済むというメリットがあるためです。裁判で争わなければ、高額の裁判費用や弁護士費用がかかることもありません。示談を弁護士などに任せた際も、裁判費用よりは安く済む可能性が高いです。

一方で、弁護士が関わらない場合は相手の保険会社も強気な対応をしてくるため、高額の慰謝料が認められにくくなります。また当事者双方の合意が得られない場合、交渉が平行線になり、示談が成立しなかったりするデメリットもあります。

示談が成立しないという事は、保険会社に時間を拘束されたり賠償金を支払ってもらえない為、被害者の精神的なストレスが増してしまうこともあるでしょう。
被害者が自分で示談を行う場合、このようなメリット・デメリットをよく理解してから進めることが大切です。

示談をしないことで当事者に降りかかる4つのトラブルと解決策

ガベルの写真

本来であれば示談交渉を行い、正しい損害賠償金を受け取って解決させたほうが良いのですが、中にはあえて示談に応じない人もいます。話し合いが面倒くさい、忘れたいから関わりたくない、相手の態度や提示された賠償金額が気に入らないなど、その理由はさまざまです。

しかし、示談をせずに放置していると、当事者にさまざまなトラブルが降りかかる可能性もあるので注意しなければなりません。被害者側の場合、示談をしなければ紛争解決処理センターを利用するか、裁判で正当な賠償金額について争うか、そのまま放置することになります。
そして被害者側には、「お金を受け取れない」「時効を迎えてしまう」という2つのトラブルが起きやすくなります。

被害者側のトラブル①:裁判で争っている間は賠償金を受け取れない

民事裁判の流れ

民事裁判の流れ1

民事裁判の流れ2

民事裁判は上記のような流れで進行する為、判決までに早くても数ヶ月、通常なら数年かかることもあります。もちろんその期間は相手側と戦っているので慰謝料を含む一切の賠償金を受け取ることができません。
そして訴訟そのものは被害者本人でも可能ですが、もし代理人を立てる場合は弁護士に依頼しなければなりません。このため被害者によっては、裁判を行ってから判決が出るまで生活がひっ迫する可能性があります。

また、示談に応じていれば加害者側の保険会社が示談金を支払ってくれることが多いのですが、訴訟になると加害者の保険会社ではなく、事故を引き起こした加害者本人への請求になります。
したがって訴訟の結果、損害賠償金が高額になると、加害者本人が支払うことができず自己破産の道を選んでしまうため、損害賠償金が全額回収できなくなる可能性もあるのです。

被害者側のトラブル②:賠償請求ができる権利の時効を迎える

また、交通事故の損害賠償の請求権には時効があるため、示談もせず訴訟も起こさなければ通常3年で請求の権利を失ってしまいます。「そのうち話し合えばいいや」と放置していると、いつの間にか3年経っていて請求すらできず泣き寝入りという事態もあり得るのです。時効の数え方は、事故が発生した翌日から数えて〇年、となります。

交通事故別の時効年数の違い

またひき逃げ事故等加害者がわからない場合は、政府保証事業制度という制度があります。これは国が自賠責保険の賠償金を支払う制度で、時効は2年です。通常より1年短い為注意しましょう。
ですが時効を過ぎたから全く請求できないといわれれば、そうではありません。時効成立には「時効の援用」による意思表示が必要です。

豆知識:時効の援用(えんよう)による意思表示
時効が成立する事で利益を受ける立場の人間から「時効の利益を受けます」という旨を相手に示す主張(意思表示)を指す。つまり加害者から「時効が経過したので損害賠償は支払いません」という内容の書面が届かない限り、時効は成立していない。 民法145条より「時効の効力を発生させるには当事者の援用が必要」と定められているため。

従って時効が経過しても相手側から時効の援用による意思表示が記載された内容証明郵便が被害者の所に届かない限り、損害賠償を請求できる可能性があるのです。この辺りは民法等専門分野になりますので、自分で判断せず弁護士に相談する事をお勧めします。時効に関してはこちらの記事をご覧ください。

加害者側のトラブル①:刑事的責任が重いまま確定する

加害者側の場合も、示談せずにいると「刑事罰が軽くならない」「自分で賠償金を支払わなければならない」という2つのトラブルを招くことがあります。
これは加害者が3つの責任を負うからです。

交通事故の加害者が背負う「3つの責任」

交通事故の加害者は損害賠償金の支払いに相当する民事的責任とは別に、いわゆる免許取り消し等の行政的責任と、罰金〇万円や懲役〇年等の刑罰である刑事的責任も背負わなければなりません。

このとき、被害者側が示談に応じていると「加害者も謝罪して反省している」「被害者に誠実に対応している」と見なされて刑罰が情状酌量されることが多いのです。しかし被害者に示談を拒否されている場合は「反省の色が見られない」「誠実な対応がされていない」と裁判所に判断されて罪が軽くならないケースもあるのです。

加害者側のトラブル②:高額な損害賠償金を自分で支払う事になってしまう

さらに示談ではなく訴訟になれば、上述したように裁判の相手が加害者本人になるため、自身の保険会社が賠償金を支払う必要がなくなります。つまり判決文にある賠償金を自腹で支払わなければなくなります。
もし支払えないからと無視していると、ついには強制執行に踏み切られてしまい、自身の預金通帳や不動産を国家に抑えられてしまいます。

Q:加害者に支払い能力がない場合、加害者の家族や親兄弟に損害賠償金を請求することは出来ますか?

A原則として、請求できません。加害者の親兄弟だからという理由で賠償金を負担する責任の法的根拠がないからです。

また加害者に支払い能力がない(無資力状態)場合、損害賠償金を加害者の親兄弟に請求したいと考える人がいますが、それは原則不可能です。民事的責任を負うのはあくまで法律に則り、責任を負う立場の人間のみであり、家族だからという理由で民事的責任を負わなければいけないという根拠はありません。

加害者以外に請求できるケース

かといって加害者以外に損害賠償を請求できないかといわれればそうでもなく、下記の5つのケースに該当する場合なら、その該当者に損害賠償を請求できるのです。

加害者以外の人間に損害賠償を請求できる5つのケース

加害者以外の人間に損害賠償を請求できる5つのケース1

加害者以外の人間に損害賠償を請求できる5つのケース2

トラブル解決策:「示談をする」

これら4つのトラブルを解決するには、やはり「相手と示談をする」ことが一番です。
示談を行えば、交渉の進め方次第で短期間(平均で3ヶ月前後)で解決できますし、相手の保険会社が支払うため賠償金を回収できない最悪の事態も避けられます。

また加害者側も刑罰の情状酌量が認められて刑が軽くなり、自腹で賠償金を支払う可能性も格段に下がります。

このようなことが起きないよう、運転者は無保険のままでいる事は避け、早いうちに任意保険(特に弁護士費用特約つき)に加入しておくべきでしょう。
もし交通事故が起きたらできるだけ早く、遅くとも3年が経過する前に必ず示談を始めるようにしましょう。示談交渉に不安になった場合は弁護士に依頼する手段もあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

被害者は「訴訟をする」のではなく「示談をする」選択を取るべし

交通事故の被害者が「示談をしない」という選択は、被害者にとって全くプラスになりません。被害者側から示談を切り出されないのを良いことに、加害者側が賠償金を支払わず得をする可能性もあるのです。
交通事故の被害に遭ったにもかかわらず、正当な賠償金を受け取れなかったり時効を迎えて泣き寝入りしたりするのは、被害者自身到底納得できるものではありません。
自分が損をしないためにも、被害者は必ず示談を行うようにしましょう。

事故の示談を行うなら弁護士に相談・依頼を検討しよう

交通事故後から示談までの流れ

交通事故後から示談までの流れ1

交通事故後から示談までの流れ2

なお示談を行うなら加害者と話し合う最初の時点(示談前)で弁護士に示談代行を依頼したほうが安心でしょう。上のイラストのように、弁護士に依頼する際のベストなタイミングが存在しています。

示談がある程度進んでからだと、いかに弁護士といえども被害者に有利な内容に持っていけない可能性もあるため、示談の前に依頼するのが一番良いといえます。

加害者側は経験豊富な保険会社のスタッフが示談を行うことも多いため、被害者側も最初から専門の弁護士に任せたほうが対等に話し合えるでしょう。そのほか弁護士に依頼するメリットは下記の3つが存在します。

弁護士に相談する3大メリット

また弁護士が関わっていれば、被害者の言い分を加害者側の保険会社が簡単に無視することもできません。上記のメリットのように、弁護士に依頼すればその後の対応は全て弁護士が受け皿になってくれるため、被害者が直接加害者側とやり取りする必要もありませんし、慰謝料も増額される可能性も高く、請求漏れも少ないでしょう。したがって示談に手を煩わされずケガの治療や仕事などに専念できるのも魅力です。

なにより被害者自身に頼りがいのある第三者の絶対的味方がつくことで精神的な安心感も得られるため、示談をしようと考えたら弁護士に相談してみると良いでしょう。

まとめ・示談をしない事でおきるトラブルの回避は「示談をする」

事故で窪んだ車の写真

交通事故の示談交渉は、被害者が正当な賠償を受けるために必要なものです。示談をすることによるデメリットもありますが、それよりもメリットのほうがずっと大きいといえます。示談しないとさまざまなトラブルが降りかかる可能性もあるため、専門知識を持つ弁護士に相談したうえで解決を目指していきましょう。

交通事故の被害者になった場合、示談交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!

弁護士と握手する被害者のイメージ写真

交通事故でケガを負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。

初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。

【交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット】

・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。

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