損益相殺は交通事故の被害者が事故の損害以上の利益を得ることを防ぐ
実損害(相手に請求する金額)=保険金(賠償金)-損益相殺の考え
損益相殺の対象となる保険もあれば対象外の保険もある
交通事故における損害賠償は、加害者と被害者ができるだけ損害を公平に負担するという考えから、過失相殺や損益相殺などの調整が行われることがあります。
ですが損益相殺という言葉を初めて聞いたという人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は「損益相殺」について詳しく説明します。
目次
損益相殺とは
そうじゃ。損害賠償は確かに加害者が被害者に支払うものじゃが、なにも二重に支払う必要はないということじゃ。例えば、事故に遭って保険金200万が出たとする。その保険金200万を同じように加害者が払ってしまったら、被害者は200万の利益を得たことになる。だからその200万は加害者の支払いから差し引かれるのじゃ。
損益相殺とは、被害者が交通事故によって損害を被る一方で、労災保険などで利益を受けた場合、その利益を加害者側が支払う損害賠償額から差し引くという方法です。
道徳的な問題、と言われてしまう事もあるのですが、公平な理屈で見ると「不法行為の被害に遭ってしまったことで保険金という利益を得た」という事になるのです。
損益相殺については民法上明確な規定はありませんが、被害者に被害以上の金額を与えることは公平さを欠くという事から、交通事故における損害賠償の「損害」とは損益相殺後の実損害を意味します。
負担の公平性を保つための調整
交通事故の被害者が自賠責保険からの保険金に加え、加害者からの賠償金も受け取ることは、損害賠償金の二重取りとなり、加害者と被害者の負担が公平ではなくなってしまいます。
そこで加害者と被害者の負担を公平にするために損益相殺が行われるのです。ですが受け取った保険金の全てが損益相殺の対象となるわけではありません。
例えば、任意加入の生命保険や傷害保険など、損害の埋め合わせを目的としない任意の保険は、損益相殺の対象とはなりません。損益相殺の対象となるもの、対象ではないもの、がどのようなものか見てみましょう。
損益相殺の対象となるもの | ◇労災保険・健康保険・年金などの公的な社会保険給付 |
損益相殺の対象ではないもの | ◇生命保険金・障害保険金 |
被害者の持病で損害が拡大した場合は損益相殺が行われる
例えば、通常であれば1か月の治療期間、100万円の治療費で済むはずが、被害者の元々の病気が影響して2か月の治療期間、200万円の治療費へ被害が拡大したとします。
このような場合、拡大した被害の分100万円の支払いをどうするかが問題になります。100万円は被害者自身の問題だからと、支払いを拒否するか、あるいは拡大した被害の分100万円も加害者側が責任を負うのかが争点になります。
被害者側の原因か、体質か、見極めが重要
交通事故において事故の加害者側が被害者に対して責任を負うべき損害は「加害者の行為が原因で発生した損害」です。つまり、被害者側の「原因」で拡大した被害は、加害者側は責任を負う必要がないと考えられます。
そのため上記の例であれば、被害者が抱えていた病気によって拡大した1か月分の治療期間、100万円の治療費は損害賠償額から減額されることになります。
しかし、病気にはならない程度の、被害者の「体質」による損害の発生または拡大に関しては、原則として賠償額の減額は認められず、加害者が全額を賠償することになります。この辺りは精神的なものによる通院の長期化同様自己での判断が難しいため、もし悩むようであれば弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
損益相殺の二つの意味
【損益相殺をする理由】
1▶被害者と加害者の負担が公平になるように、被害者が被害以上の金額をもらわないようにする
2▶被害者が死んでしまったときに支払う損害賠償の中に被害者の生活費が含まれないようにする(生活費も負担してしまう結果になるため)
交通事故において、損益相殺は二つの意味を持ちます。一つは上記にもあがっている被害者の保険金の二重取を防ぐという事。
そしてもう一つは被害者が死亡してしまった時に発生する損益相殺です。これは被害者が生きていれば得ていた収入から生きるうえで必須となる生活費などが支払われます。
加害者が収入分を賠償する際に支払った生活費を控除しなければ、加害者は被害者の生活費分も支払うことになってしまうのです。また、事故に遭わなければ被害者が得ていた収入分を逸失利益と呼びます。
損益相殺についてのまとめ
交通事故の損害賠償にかかわってくる「損益相殺」についてみてきました。被害に遭う前以上のお金をもらわないようにする、という公平さからくるものですが、これを知らない人はとても多いのではないでしょうか。
しかし、すべての保険金が当てはまるわけではないので、自身が入っている保険などをもう一度確認して、どれが損益相殺の対象なのか見ておくと示談交渉の時にも役立つといえます。
またこのような事は被害者自身も知らない細かいところですので、もし示談交渉に赴くときは損益相殺される実損害が損害賠償金だという事をしっかり把握しておくことが大切です。
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