ひき逃げの統計の中でほぼ8割を占めるのが軽微事故
ひき逃げに遭ってもまずは怪我の治療を最優先に
加害者が見つからない場合は政府保証事業制度か任意保険の特約を使う
交通事故に遭った時、加害者がそのまま逃走してしまうひき逃げという事故があります。
逃走してしまい加害者が分からずじまいになるため、被害者は泣き寝入りするしかないと思われがちですが、実はちゃんと救済措置があります。
今回はひき逃げに遭った時の損害賠償請求についてみていきます。
目次
ひき逃げ事件の現状・推移
交通事故を起こした運転者等には、負傷者を救護する義務が課せられています(道路交通法72条1項)。これは違反者に5年以下の懲役または50万円以下の罰金を科すという罰則規定の設けられた義務です(同法117条1項)。
たとえば、車通りの少ない山道で事故が起きた場合、加害者が負傷している被害者を放置して逃走すると被害者の命さえ奪われかねないので、このような義務・罰則が定められています。
ひき逃げの現状
ところが、現実にはいわゆる「ひき逃げ」と呼ばれる人の死傷を伴う道路上の交通事故に係る救護措置義務違反は後を絶ちません。
2015年には8,666件(そのうち、死亡事故150件、重傷事故722件、軽症事故7,794件)のひき逃げ事件が発生しました。2005年以降ひき逃げ事件の発生件数は減少傾向にあり、2004年と比べると2分の1以下になっています。
交通事故全体の発生件数が減少傾向にあり、取り締まりの強化などが功を奏しているといえるでしょう。実際、死亡事故の検挙率は例年90%を上回っています。
しかし、その一方、重傷事故でさえ70%の検挙率であり、軽微な事故であれば加害者がそのまま逃げてしまうことは少なくありません。
状況別にみる!ひき逃げの被害に遭った人が採るべき行動
自分が怪我をした場合
突然交通事故に巻き込まれたら、普段冷静な人でもパニックになります。怪我をしたならば、無理に動かないほうがよく、身の安全を確保して後救急車及び警察を呼んでください。
もし自ら救急車・警察を呼べない状況であれば、周囲に助けを求めましょう。加害者が逃走すると今後のことに関して不安になるかもしれませんが、ひとまず怪我の治療を最優先します。
物損事故や軽傷で済んだ場合
物損事故などであれば、できる限りナンバープレートや車種など加害者の情報をメモしておきましょう。
躊躇うことなく逃げ去る加害者もいますが、加害者の中には少し離れたところで停車してしばらく考えた後に逃走する人もいます。加害車両が停車した場合には、スマホで拡大写真を撮ると良いでしょう。
その後、警察に通報した後、事故の状況を把握できている目撃者がいないかを探してみてください。
そこまで大きな傷を負わなかった場合
➡相手車両のナンバープレートや車種をメモして写真を撮る。
➡事故の目撃者を探す。
同乗者など他人が怪我をした場合
道路交通法72条の救護義務や危険防止措置義務が課せられているのは、加害車両の運転手に限られません。
たとえば、四輪車同士で接触したところ被害車両の助手席の人が意識を失ったのであれば、被害車両の運転手は軽症で動ける限り、救急車を呼び、警察に通報する必要があります。
もっとも、被害車両の運転手自身も怪我をしている可能性があるため、無理はしないでください。怪我をした人がいる場合でも加害者の情報が重要なことに違いはありませんが、怪我をした人がいるのであればその手当てを優先すべきでしょう。
その場で自らメモできなかったとしても、目撃者や防犯カメラなどから加害車両を特定できる可能性があります。
同乗者が怪我をしていた場合
➡怪我した場合と同様、すぐに救急車と警察を呼ぶ
ひき逃げの加害者へ損害賠償請求をする際のポイント2つ
ひき逃げの場合であっても、警察の捜査などによって加害者が見つかるケースは少なくありません。もっとも、「保険に入っていないから」との理由で逃走を図る人が一定数いるため、ようやく加害者が見つかっても自賠責保険にすら入っていないケースがあります。
ひき逃げだからといって交通事故の損害賠償が変わる事は無い
その場合には「ない袖は振れない」ということで示談金額がかなり少なくなる可能性がありますが、基本的にひき逃げとそれ以外のケースでは損害賠償額は異なりません。
むしろ裁判になると、加害者がひき逃げをしていることから被害者が多大な精神的苦痛を被ったとされ、損害賠償額が増額する可能性があります。
その場合、解決までの期間を早めるには弁護士に一度相談するのが良いでしょう。
損害賠償請求をする際のポイント
・ひき逃げだからといって損害賠償請求の金額が変わる事は無い
・裁判になればなるほど加害者の損害賠償額が増額する
ひき逃げの加害者が見つからなくてもお金をもらえる2つの方法
ひき逃げの加害者が見つからない場合には、政府保証事業制度を使うことになります。
1.政府保証事業制度を利用する
この制度によって補填される範囲、限度額は自賠責保険の基準と等しく、死亡事故であれば3,000万円を限度として逸失利益や葬儀費用、慰謝料を受け取ることができます。
傷害事故であれば120万円が限度であり、後遺障害の残った事故の限度額は障害の程度によって異なります。
健康保険や労災保険など社会保険から給付を受けるべき場合は、その分の金額が差し引かれます。
また政府保証事業制度は請求できる年数が決まっており(2年間)、それを過ぎると請求できなくなるので注意しましょう。
2.任意保険の特約で利用可能なものを利用する
ですが、政府保証事業制度で補填される金額は極めて少額であるため、保険会社の特約を利用できるのであればそれを利用すると良いでしょう。
ひき逃げ事故においては「人身傷害補償保険」や「無保険車傷害保険」が利用できます。人身傷害補償保険は過失割合に関係なく保険金が支払われるというものであり、無保険車傷害保険は無保険車との事故で死亡または後遺障害の結果が生じた場合に利用できる保険です。
まとめ・もしもの事を考えておこう
交通事故に遭っただけでも被害者には大きなダメージであるにもかかわらず、加害者が逃走してしまうと被害者の経済的・精神的な負担はさらに大きくなってしまいます。
いざというときのために、自分が人身傷害補償保険または無保険車傷害保険に加入しているかを調べておくと良いでしょう。もしいずれも加入していないのであれば、示談交渉の期間が長引いたときにも利用しやすい人身傷害補償保険へ加入してみてはいかがでしょうか。
交通事故での慰謝料を請求するにあたり、交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故でケガを負った場合、慰謝料請求を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの慰謝料を増額できるケースがあります。初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、慰謝料を請求するにあたり不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する慰謝料を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも交渉を任せられるため、治療に専念できる。
↓ ↓ ↓
ひき逃げの対応に関連する記事はこちら
被害者に事情聴取をしてそれらをまとめた警察が「被害者供述調書」を作成する 「供述調書」は一度署名拇印をしたら内容の書き直しはできない…
「事故直後」は加害者側の情報確認が非常に大事(氏名、連絡先、車のナンバー、契約保険会社など) 事故後は警察への連絡は必須、治療にどの…
被害者請求権(被害者から加害者への賠償請求)は3年で時効になる 時効は加害者と事故の損害を知った日が起算日 請求権の時効起算日は中…
交通事故は大きく「物損事故」と「人身事故」の2つに分けられます。交通事故を起こした場合、すぐに警察と加入している保険会社に連絡することは基本…
対人賠償責任保険と対物賠償責任保険は当たり前! 特約を付けると保険料は高くので沢山つけても意味がない 特約の中で弁護士費用特約は絶…