交通事故の被害者と検察との関係を徹底検証。 ~加害者が不起訴になったとき、被害者が絶対に知っておきたい対処法~

公開日:2016/01/15
最終更新日:2018/04/18

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交通事故加害者被害者

腕を組んでいる検察官のイメージ写真

 

 検察官とは書類をもとに加害者の処分を決定できる権利を持っている

 被害者が何もしなければ加害者はそのまま不起訴処分になる可能性が高い

 もし加害者の不起訴処分が不服の場合、異議申し立てができる

ナビ夫

交通事故と検察官?―――意外な組み合わせかもしれませんが、交通事故が刑事事件(=犯罪)の一つだと考えてみれば関係があるのではないかと思うはず。

そして検察官は交通事故の加害者を起訴or不起訴にできる力を持っている上、通常なら被害者と接触することが無いため、検察官の立場を知らない人が多いのです。

では検察官と接することで被害者にどのような強みが出てくるのか、見ていく事にします。

検察官は交通事故においてどういう立場なのか

りんね
交通事故の加害者が不起訴処分になるニュースを見たんだけど、あれって警察が決めてるの?
アシスト爺ちゃん
違う違う。警察はあくまで調べるだけじゃ。決定権を持つのは検察官という人たちじゃよ。
りんね
検察官ってよくドラマとかで出てくるね!よくわからないけどすごい人なのはわかる!
アシスト爺ちゃん
ううむ……ドラマは脚色しすぎなんじゃが。まあそれはさておき、交通事故にその検察官がどうかかわるか見ていこうかのう。

どちらが正しいのか考える女性のイメージ画像検察官は、警察で作成した書類(送致書、捜査報告書、実況見分調書、現場見取図、被疑者・参考人供述調書、診断書など)をもとに、加害者を起訴または不起訴にするかを決める重要な役割を担っています。

なお、検察官は検事総長(最高検察庁のトップ)・次長検事(最高検察庁のナンバー2)・検事長(高等検察庁のトップ)・検事・福検事(区検察庁に属する検察官)の5つの官名の総称です。

交通事故における検察(官)の役割とは

・警察で作った書類(刑事記録)をもとに加害者の処分を決定する人
・検察官は総称であり、副検事・検事・検事長・次長検事・検事総長がいる
・基本的に被害者ではなく加害者と会うことが多い

被害者が検察官と話す機会はほぼ無い

交通事故について調査する検事のイメージ画像

検察官は基本的に、警察で作成した書類(刑事記録)をもとに加害者の処分を決定(起訴or不起訴)するのですが、警察の捜査に不備があるようであれば、補充的な捜査を行うこともあります。また、独自に加害者を呼んで取調べを行う場合もあります。

ちなみに、警察の書類(刑事記録)のみで特に追加の捜査をせずに加害者の処分を決定する時はほとんどが不起訴処分です。

検察官と話す機会が多い加害者の方が有利…?

一方で、被害者と加害者の供述に重大な食い違いがある場合などを除いて、被害者や目撃者などの事故関係者が、検察官に呼ばれることはほとんどありません。

この点、検察官に詳しく状況を話す機会のある加害者の方が有利と言えるかもしれません。

検察官と被害者がコンタクトをとる方法

相手と連絡を取るイメージ画像

自身が被害に遭った交通事故に関して、事故の担当の検察官に伝えたい状況や心情などがあり、被害者側なりに収集した資料や情報がある場合はどうすれば良いのでしょうか?

検察庁に担当の検察官が誰か問い合わせよう

そのような時は、事件を捜査した警察署に事件が送られた検察庁名を問い合わせ、その検察庁に電話で事故の内容(捜査した警察署名、事故発生日、加害者名、被害者名など)を伝えれば、事故を担当している検察官を教えてもらうことができます。

Q:事故を担当している検察官に証拠を出したり心情を打ち明けるにはどうすればいい?

A:担当している検察官に対して書類を提出したり直接会って話をする。

担当の検察官を教えてもらえば、被害者側が把握している事故の状況や、加害者側の不誠実な態度への憤りなど、検察官への訴えを「上申書」として提出することができます。また、担当の検察官に面会を申し込むという方法もあります。

豆知識:上申書とは

官公庁や警察などの国家機関に対しての意見(申し立て)や報告を行う時に用いる書類や報告書の事を指します。
なお、上申書は、法律などに基づかない場合の意見書です。(法律に基づく場合は「申立書」「申請書」と呼ばれますので注意)

つまり、警察署に連絡して検察庁を教えてもらった後はその検察庁に事件の概要(加害者や事故発生日など)を伝え検察官を教えてもらい、アポイントを取り付けて直接会って心情や証拠を渡す、という流れです。またアポイントが難しいならば上申書という書類を書いて検察庁に提出します。

Q:何故被害者自らが動かなければいけないのか?

A:基本的に検察官は刑事記録と加害者への聞き取りだけで処分を決定することが多いからです。

被害者が動かなければ不起訴処分

警察が作成した書類と加害者の話だけで検察官が加害者の処分を決定した場合、加害者が不起訴処分になる確率は非常に高いです。

簡単に不起訴処分にさせないためにも、何もしないで決定した処分を待つだけではなく、被害者としてやれることはやっておきましょう。

りんね
不起訴処分にしたくなければ、検察官に自分で集めた書類を持って話を聞いてもらうことが一番大事。自分の担当の検察官が誰なのかわからない時は警察に問い合わせるのが一番簡単だよ。

また、現在は各検察庁内に「被害者相談室」があり、検察庁を定年退職した人が相談員として、被害者の相談に対応してくれます。

相談は無料ですし、電話の窓口もありますので、後悔しないためにも気になる点や不満に思う点があれば積極的に利用するようにしましょう。

加害者の処分を知る方法

処分の連絡を受ける被害者のイメージ画像

被害者やその親族、参考人などに加害者が起訴されたかどうか、起訴・不起訴の理由、起訴の場合は略式起訴か本裁判か、裁判の場合は行われる裁判所や裁判の日時を教えてくれる「被害者等通知制度(https://ji-ko.jp/knowledge/yougo/higaisya-tuuti/)」というものがあります。

被害者等通知制度 
制度を申し込むことができる人

➡被害者(もしくは被害者の親族)、また親族に準じる方

➡目撃者など重要な参考人(下記の1~3のみ)

▼被害者通知制度の通知内容
1

事件の処分結果(起訴or不起訴)

2

起訴の場合、裁判所とその日時

3

裁判の結果(有罪or無罪)

4

加害者の身柄状況(釈放されたのか)、起訴事実(起訴された理由)、不起訴の理由など

5

有罪確定後の加害者に関する状況

またこの通知を受けるには、事件を担当している検察官や被害者支援員らに被害者通知制度を通知する、という希望の有無を伝えなければなりません。

担当した検察官の名前や部署名がわかっている場合

事件を担当した検察官に電話する被害者の写真

事件を担当した検察庁に電話をして、「検察庁の被害者等通知制度の件で、交通部の○○検察官をお願いします」と伝えます。すると事故を担当した検察官につないでもらえます。

被害者本人、もしくは遺族(親族)、重要参考人などであることを確認してもらえば、加害者の処分について知りたい項目(重要参考人は事件の処分結果や裁判の結果のみ)を教えてくれます。電話した後日に、文書で通知してくれる場合もあります。

担当した検察官の名前がわからない場合

事件を担当した検察庁に電話して、「被害者通知の件です」と伝えます。すると担当検察官を調べる部署に電話が回されます。

そこで事故の内容、加害者の名前、検察庁に事件を送致した警察署の名称などを伝えると、担当した検察官を調べてもらえ、電話も繋いでもらえます。事件を担当した警察署は交通事故証明書(https://ji-ko.jp/knowledge/yougo/koutsujiko_syomeisyo/)に掲載されています。

事件を担当した検察官の部署が変わっている場合や、検察官が不在の場合などは、被害者相談室に電話が回されることがあります。そのため、最初から被害者相談室に電話をかけ、要件を伝えるという方法もとっても良いでしょう。

不起訴処分の理由を知る方法

処分の結果を知る被害者と伝える人のイメージ画像

加害者の処分結果が不起訴になった場合、被害者側は少なからず不服に思うことになりますし、当然ながら不起訴の理由を知りたいと思います。

そのような時は、電話で問い合わせるのではなく、検察官に直接会って聞くようにしましょう。そして、その面会のとき被害者側で見つけた証拠品や情報があれば、積極的に持っていくようにしましょう。

 不起訴の理由を聞くときは! 

YES!:直接会話する

NO!:電話で会話する

起訴猶予などで加害者の不起訴処分が決まっていても、再捜査を求める被害者側から新しい証拠品(防犯カメラの映像、ドライブレコーダーなど)や新たな目撃者といった情報が提出された場合、検察で事件を検討し、再捜査や事故の当事者の事情聴取などを行う可能性があります。

その結果、担当の検察官が起訴した方が良いと判断し、不起訴がくつがえったケースもあります。また、最初に提出された診断書から症状が変化したり、加害者の態度が悪かった場合に、不起訴が見直され起訴にくつがえるケースもあります。

不起訴処分に対して不満がある場合

納得できない被害者の女性のイメージイラスト人身事故(https://ji-ko.jp/knowledge/yougo/jinshinjiko/)の場合、加害者が不起訴処分になる割合が非常に高く、たとえ起訴されたとしても、書面の審理だけで50万円以下の罰金という軽い処分が言い渡される略式起訴で済まされてしまいます。その為、多くの被害者がその結果に対して不満を感じることになります。

Q:処分の結果について被害者が何か言うことができるの?

A:起訴結果について被害者は文句を言うことができませんが、不起訴処分の場合は文句を言うことができます。

被害者は検察官が決定した起訴について異議を申し立てることができません。しかし、加害者の不起訴処分については、被害者(または権限をもつ代理人)や遺族が不起訴処分を不服として、検察審査会に申し立てを行うことができます。

ですが被害者の尽力で不起訴処分が撤回されて加害者が起訴されても、大半は軽い処分である略式起訴にされてしまうのです。

略式起訴とは?

略式起訴が行われる簡易裁判所の画像

書面による審理で、刑事裁判を開かずに罰金などを決める特別な手続きを指します。簡易裁判所で行われ、略式命令という形で罰金額が言い渡されます。

刑事裁判ではないため、「懲役」や「禁固」などの刑罰が与えられません。そしてこの略式起訴は公判請求(手続きを踏んだ起訴)とは違い、起訴内容は公開されずに一般はもちろん被害者にすら非公開のまま審議されます。

ただ、「罰金刑」という刑罰に当たるため加害者は「有罪」であることは間違いありません。いわゆる「前科」扱いになります。

 検察審査会とはどのような組織なのか

検察審査会とは、すべての犯罪において選挙権を有する国民の中からクジで選ばれた11人の検察審査員が、一般の国民を代表して、その事件における検察官の不起訴処分について良し悪しを審査する窓口です。

審査の結果として「不起訴不当」(更に詳しく捜査するべき)or「起訴相当」(起訴するべき)といった判断が下されます。その判断を参考に検察官が再検討を行うことになります。

つまり、検察官が交通事故の加害者に不起訴処分だと結果を出しても検察審査会が「待った」とかけることが可能なのです。

検察審査会に積極的に相談しよう

刑事記録がある裁判所の写真

検察審査会への申し立ての手続きは比較的簡単ですし、いっさい費用がかかりません。

不起訴処分に不服の場合は、最寄りの検察審査会に、積極的に問い合わせや相談をしてみるようにしましょう。検察審査会は、全国の地方裁判所や主な地方裁判所支部の中にあります。

検察審査会の手続きの方法

裁判所にある「審査申立書の書式」に必要事項を記載
➡最寄りの裁判所にある検察審査会に提出するだけ

現実には、検察審査会が不起訴不当や起訴相当と議決するケースは非常に少なく、不起訴処分をくつがえすことは容易なことではありません。

しかし、納得ができずにいつまでも不満を抱えているよりは、検察審査会に相談をして、自分の中で納得ができるまで話を聞いてもらう方が、たとえ不起訴処分の結果が変わらないとしても良いことではないでしょうか。

まとめ・交通事故の被害者と検察官について

交通事故の証拠を集める被害者のイメージ画像

交通事故の被害者になってしまった時、検察官とどう対応すればいいのか見ていきました。検察官は加害者の処分を不起訴、起訴と決める重要な役割を持ちます。

基本的に検察官から被害者へのアクションがないため、被害者が自分から動いて証拠を提出したり面会して話をしたり、検察官宛てに上申書を提出するしかありません。被害者が動かなければ、加害者の処分は基本的に不起訴処分になってしまうからです。

そのため、被害者として納得がいかない場合は結論が出る前にその道のプロである弁護士に依頼して、すべてを任せてしまうのも一つの手です。弁護士は依頼者の味方です。

アシスト爺ちゃん
やっぱり自分一人では限界があるからのう。その筋のプロである弁護士にお願いすると全部任せてしまうからとても楽なんじゃ
りんね
弁護士はなんでもできるんだねぇ
アシスト爺ちゃん
まあ法の番人と呼ばれるほどに、法律に関することなら大抵のことができてしまうのが弁護士じゃ。弁護士しかもっていない権利もあるからのう。
りんね
へぇ、検察官もだけど、弁護士もすごいんだ!

交通事故の被害者になったら、事故からなるべく早い段階で弁護士への依頼がおすすめです!

交通事故の示談交渉を聞いている弁護士のイメージ画像

交通事故で被害に遭い怪我を負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。

損害賠償の交渉を行う場合のほとんどは、相手は示談交渉において知識がある担当者です。保険会社側の担当者は被害者の味方ではありません。

被害にあったら弁護士に依頼をすることで、示談交渉に臨むことをおすすめします。初回相談が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは相談してみましょう。

【交通事故の被害に関する示談交渉を弁護士に依頼するメリット】

・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。

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