交通事故でケガを負って治療をしても一向に治る兆しが見えない!そのような状態になると担当医師から「症状固定」とを言い渡されます。聞きなれない用語ですが、症状固定になるとならないとでは何が違うのか、症状固定後の治療費や慰謝料の請求はどうすればいいのか?
また後遺障害が残ってしまった際はどのように後遺障害認定を申し込めばいいのか等、どのように対処を進めていけばいいのでしょうか?解説をしていきます。
目次
「症状固定」とは?
交通事故で受けた怪我の治療を行っていると、怪我が治るか、ある一定の状態から症状の変化がなくなるかの二つにわかれます。
このうち怪我が、「ある一定の状態から症状が改善しない」状態になる事を「症状固定」と呼びます。
●症状固定を知る上で押さえておきたいポイント4点● |
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❶症状固定とは、治療を続けても怪我の症状の回復が現状より望めない状態のこと ❷症状固定になると保険会社からの治療費及び通院交通費の支払いが止まる ❸怪我を症状固定だと最終的に判断するのは医師と被害者(保険会社ではない) ❹症状固定以降に受けた治療費は相手への賠償の請求外になり自己負担になる(健康保険は利用可能) |
交通事故の被害で負った怪我を症状固定と判断することや、決定するタイミングは、その後の加害者側との示談交渉において、重要なポイントとなります。
その理由は症状固定の前後で請求できる慰謝料の対象・種類が異なるためです。
具体的には、症状固定前の場合、請求できる慰謝料は治療費や入通院慰謝料など「傷害部分」に対するものが対象になり、症状固定後の場合、請求できる慰謝料は後遺障害慰謝料や後遺傷害遺失利益(事故に合わなければ被害者に入っていたであろう利益)などの「後遺傷害部分」が対象になります。
このように症状固定自体を決定するタイミングで慰謝料や賠償金が区別されてそれぞれ算出されるのですが、下記の表のように分かれます。
交通事故に遭ってから症状固定になるまでの流れ
交通事故に遭って怪我をしてから治療、示談にいたるまでの流れの中で症状固定はどのタイミングなのかという点を図で表すと下記のようになります。
症状固定だと診断されるまでに必要な4つの条件
交通事故に遭った被害者が怪我を負ってから症状固定だと診断されるまでに必要となる主な条件は下記4点になります。
条件1 怪我を病院に通院して治療している
事故に遭った後は必ず病院で診察や検査を受けましょう。
どんなに遅くても事故から1週間以内です。何故なら事故から日数が経過した後に受診しても「その怪我は本当に交通事故が原因なのか?」とされて、最悪、保険会社が治療費を支払わない可能性があるからです。
病院に診察後は定期的に病院に通い、治療を続けていきます。
最初から整骨院で治療をすると、初期症状を医師がわからない為診断書が書けないといわれてしまうケースがあります。
診断書が無いとのちの後遺障害等級による慰謝料や保険金そのものが貰えなくなる可能性が高い為、初回は必ず病院に行きましょう。
条件2 怪我が回復する見込みがない状態が続いている
病院に通院して治療を続けていると、治癒の気配がなく怪我の容態に変化が見られなくなってくる事があります。
特に治療をした直後は治っても、すぐに治療前に戻ってしまう一進一退の状態になってしまったら、要注意です。
条件3 治療を始めてから大体3~6ヶ月ぐらい経過している(目安)
特に、通院を始めて短くて3か月、平均で半年近くになっても怪我が治らない場合、加害者側の保険会社より連絡が入るケースが多く見受けられます。
その内容は「怪我の治療をしてもこれ以上治る見込みがないと思われるので、症状固定にしませんか」というものです。
条件4 医師と相談して怪我を「症状固定」にする
保険会社から症状固定に関する連絡が来てもその場で返事をしてはいけません。必ず担当の医師に相談しましょう。
現在の怪我の容態を確認した医師がこれ以上治療を続けても現状打破は難しい(=回復する見込みがない)、と判断したら「症状固定」にします。
このような流れで、交通事故で負った怪我が治らない場合、症状固定にします。
一般的な治療の経過日数は症状固定になるまでの平均治療期間だといわれており、被害者によっては症状固定だと認定されるまで1年以上かかったケースもあります。
これは、6ヶ月の時点の診断で、治療を続けて治る見込みがあるとされれば、症状固定にならないからです。
また、交通事故で負った怪我が症状固定だと診断された後はそのまま示談交渉に移行するのではなく、先に後遺障害等級の認定申請を行いましょう。
後遺障害等級に認定されれば、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を相手に請求できるからです。
怪我の後遺障害等級の認定申請の流れと申請方法について
症状固定にすることを医師と相談して決定した後、次に後遺障害認定の申請に向けた動きが必要となります。
症状固定だと決まった後は、後遺障害等級の申請を加害者の保険会社に行います。
請求方法に応じて書類を提出する保険会社が変化します。
怪我の容態や状況に応じて認定される等級が1級~14級まで分類されます。
後遺障害の等級を得ることで加害者の保険会社に後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できるようになります。
*後遺障害等級申請に必要な書類(被害者請求編)* ※は有料 | |
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自賠責保険請求書 | 加害者側の保険会社 |
※交通事故証明書 | 自動車安全運転センター |
事故発生状況報告書 | 加害者側の保険会社 |
※診断書(治療期間) | 病院 |
※診断書(後遺障害) | 病院 |
診療報酬明細書 | 各自で保管 |
交通費明細書 | 各自で保管 |
休業損害証明書 | 勤務先 |
※印鑑証明書 | 役所 |
※レントゲン画像や検査結果等の書類 | 病院他 |
*事前認定編* | |
診断書(後遺障害) | ※一括払いの最中ならば診断書の費用は保険会社が負担する |
また後遺障害等級の申請方法は大きく分けて「事前認定」と「被害者請求」の二つが存在するので注意しましょう。
事前認定について
任意保険会社が主体となって申請する為、手間がかからない、知識がなくても進められる、というメリットがあります。ただし、後遺障害診断書以外の書類は保険会社が用意するケースが殆どですが、被害者が望む後遺障害等級での認定がされにくかったり、保険金が示談終了後でないと貰えないデメリットがあります。
被害者請求について
被害者が手続きを全て自分たちで行う為、書類の収集や診断書作成の際の費用と手間がかかるデメリットがあります。しかし自分で書類を用意できる為、被害者が望む等級の認定がされやすく、また保険会社との示談前に自賠責保険から慰謝料等を受け取れるメリットがあります。
状況に応じて申請方法を使い分けるようにしましょう。
後遺障害等級の結果が届いた後の、示談成立に向けたポイント
後遺障害等級の申請の結果は、書類を投函してから約1ヶ月~2ヶ月後に届きます。
認定された結果がきた後は、認定された等級の後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を含めた損害賠償金の書類が相手側から届きます。そこから示談が始まります。
もし後遺障害等級に認定されなかった場合は、その内容に対して審議した機関に異議申立書を送ることができます。
症状固定になった後は後遺障害等級に認定されるか、されないかで大きく変わります。
その理由は、後遺障害等級に認定されないと、いくら痛みが残っていても損害賠償金の対象にならないからです(例外的に認められた裁判例もあり)。
というような手続きを取る必要があります。また後遺障害等級の手続きは損害賠償の大切なになるため、症状固定になってからがむしろ本番といえるでしょう。
交通事故の症状固定の際に、被害者が覚えておきたいポイントは下記の5点です。
★被害者が覚えておきたい症状固定のポイント5点★ |
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❶症状固定は、これ以上治療を続けても怪我の症状が変化しない状態であることを知っておく ❷交通事故で症状固定だと診断されると「保険会社からの治療費の支払い」が打ち切りになってしまうので注意が必要 ❸怪我を症状固定だと判断するのは基本的に医師であって保険会社ではない (保険会社からの意見だけで判断せず担当医師と話し合って決めるように) ❹症状固定は、損害賠償や慰謝料の金額算定に関わる為、簡単に決めないほうが良い (金額が妥当か、症状固定のタイミングは本当に妥当か第三者の意見を聞くこと) ❺症状固定後の後遺障害等級申請や示談交渉は弁護士に任せてしまうのがおすすめ |
これだけは知っておきたい 症状固定に関する5つの知識
知識①症状固定日を決定するのは医師
症状固定は「あなたの怪我は本日より症状固定です」と唐突に決まることはありません。まず、怪我を症状固定だと判断するのは、一般的に被害者の怪我の治療を担当している主治医です。
担当医に症状固定を言い渡されたら
主治医から「この怪我の状態ではそろそろ症状固定ですね」という意見が出された時、被害者はその意見に同意するかどうか判断を迫られます。
被害者が医師の意見に従い症状固定を受け入れると、症状固定が確定します。この確定した日が「症状固定日」です。
つまり症状固定日を決めるのは主治医で、最終的な判断は被害者が行うという事です。
症状固定日を決める「タイミング」が重要な3つの理由
最終的な症状固定日は担当医と被害者ですが、ここで大事なのは症状固定日自体をいつにするか?という点です。
なぜ重要なのかというと症状固定日を基準として保険会社からの支払いがストップする、症状固定日を基準として後遺障害診断書が書けるようになるなど、損害賠償金額を決めるために重要なタイミングとなるためです。
また、症状固定日で保険会社と争う事になった場合、最終的に判断を下すのは裁判所になります。
このように裁判所が絡む為、もし症状固定日をめぐって保険会社と意見が対立したら弁護士に相談することをお勧めします。
知識②怪我の内容によって症状固定になるまでの期間は違う
交通事故に遭ってから症状固定になるまでの怪我の治療期間は、怪我の状態や痛みの具合によって変化します。
その為、下記イラストの怪我別(むち打ち、骨折、高次機能障害)の症状固定までの目安期間はあくまで一例ですが参考までにご紹介させていただきます。
※怪我をした箇所や被害者の状態によって症状固定になるまでの期間は変わると思ってください。
また、治療を行う事で怪我が回復し続けているのであればそれは治る見込みがあるということですので、無理に症状固定にする必要はありません。
症状固定の期間については下記の記事にてより詳しく説明しています。
知識③保険会社が事故の怪我を症状固定にしたがる理由
怪我を症状固定だと判断するのは医師と被害者ですが、加害者側の保険会社から「そろそろ怪我を症状固定にしませんか」と誘われることがあります。
どうして保険会社が症状固定にしたがるのか、その理由と言われた時の対処法について下記の記事で説明しています。
知識④症状固定になると保険会社からの治療費が打ち切られやすい理由
交通事故の怪我を症状固定と判断すると、それまで保険会社から支払われていた治療費が打ち切られることが多くあります。
保険会社側の理由としては、「治療に効果があるから加害者側の責任として治療費を支払うのであって、治療しても効果がでないとわかったのならば、これ以上治療費を支払う必要はない」というものが多いです。
中には、症状固定になる前の被害者に対して、保険会社が治療費の打ち切りを一方的に伝えて支払いを終わらせるケースがあります。
交通事故の損害である治療費の賠償は加害者側の義務にも関わらず、保険会社が一方的に打ち切ろうとする代表的な理由は、上記3点になります。
また、保険会社から治療費の打ち切りを伝えられた場合の対策はこちらの記事にてより詳しく説明しています
知識⑤症状固定後に後遺障害認定を受けるまでの流れ
被害者が実際に後遺傷害等級認定を受けるまでに必要な事項・流れをまとめると下記図のようになります。
症状固定になった後の被害者がとる目的は、怪我が後遺症ではなく後遺障害に当てはまることを証明し、後遺障害等級を申請して適切な等級に認定される事です。
ここで知っておかなければならない点は後遺傷害等級認定を受けなければ「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」の二つの損害賠償を請求できないということです。
●後遺障害の条件● |
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後遺症と後遺障害は似て非なるものであり、後遺症の中の分類の一つとして後遺障害が存在します。 後遺症は、怪我が治療しても治らずに障害として残り続ける事です。後遺症のうち、「怪我が完治した後も障害が残る」「該当する怪我と交通事故に因果関係がある」「将来において回復が困難な精神もしくは肉体で、それが医学的に認められる」「この障害により労働能力の喪失を伴う」の4つを全て満たしたものを後遺障害と呼びます。 |
こちらの記事では交通事故の怪我で一番多いむち打ちを例にして、後遺障害等級に認定される流れを説明しています。
交通事故の症状固定に関するよくある質問と答え
症状固定になる、ならないで慰謝料に変化はある?
「症状固定」という言葉は、日常生活ではなかなか聞き慣れない言葉かもしれんのう。イメージ的に言えば、治療を続けても症状が回復するとは期待できず、将来的にもその状態で固定されてしまうことじゃ。
治療を続けることに意味がないと考えられておるから、症状固定日以降治療費やそれに関する費用(交通費など)を請求することは難しい。その代わり、逸失利益や後遺障害に関する慰謝料を受け取れる可能性が生まれるのう。
症状固定にならない場合は、事故によるケガが完治した場合じゃ。この場合には完治するまでの治療費などを受け取れるわい。
症状固定に認定された場合、保険会社へ治療費は請求できる?
事故で負ったケガの治療のため通院していた場合、「これ以上治療を続けても効果がないと思われます」と医師から告げられ、症状固定を迎えるんじゃ。
もちろん場合によっては完治することもあるがの。症状固定を迎えると、治療費や病院への交通費、休業損害を請求することはできなくなる。
そうなると、なかなか病院に通いづらくなるかもしれんのう。痛みなど何らかの症状が残っていれば、後遺障害の等級認定申請をすることになる。生活が急激に変化することは少ないじゃろうが、必要になる手続きは変わるじゃろう。
症状固定の了承後に症状固定を撤回することことは可能?
んー、難しい質問じゃのう……。保険会社がなぜ症状固定日を決めたがるかというと、示談金額を確定させるためじゃ。
つまり、保険会社から提示された症状固定日を了承するということは、その日以降の治療費は請求しないという意思表示とも言える。
保険会社の対応によるところが大きいが、症状固定日を遅らせてほしいという被害者の言い分を聞き入れようともしない保険会社もあるじゃろう。だから、症状固定日をいつにするかは慎重に決めねばならん。
症状固定になっても病院に通院しても大丈夫?
「症状固定」という言葉はなかなか聞き慣れん言葉かもしれんのう。症状固定とは、簡単に言えば医学上一般的に承認されている治療法の効果が期待できなくなった状態じゃ。
症状固定になるともはや治療を続けても意味がないことになるから、治療費や通院交通費、入通院慰謝料を請求できなくなる。
もっとも、保険会社が症状固定日を決めるわけではないから、保険会社から一方的に「症状固定にします」と言われて治療費の支払いを打ち切られたとしても、保険会社に治療費を請求できないとは限らん。もちろん自己負担で通院することは禁止されておらんぞ。
症状固定だと診断される期間に決まりはある?
事故でむち打ち症を患い半年ほど通院すると、保険会社から「そろそろ症状固定にしましょう」と持ち掛けられることがあるんじゃ。
症状固定とは、それ以上治療を続けても症状の回復が期待できない状態に至ることをいう。事故から症状固定までの期間は病名や患者の状態などによっても異なるから、むち打ち症とはいえ一概に半年で症状固定日を迎えるとは限らん。
つまり、症状だと言われる期間は決まっておらんのじゃ。後遺障害が残るようなケースだと症状固定日が損害額を確定させる重要な日となるから、主治医とも相談して症状固定日をいつにするかを決めるとよかろう。
交通事故による症状固定の体験談を見る
症状固定と診断されたら、弁護士への相談がおすすめ
交通事故でケガを負い、その治療が長期に渡ると症状固定と診断されることがあります。特に相手方の保険会社から症状固定と診断されると、その後の治療費を打ち切られる場合もあるため、一度弁護士へ相談することをおすすめします。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【症状固定に関して弁護士に相談するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・弁護士に依頼することにより、後遺障害認定に関する手続きをスムーズに行い、かつ『弁護士基準』で後遺障害慰謝料を請求できる。
・ケガをしている中で、交渉にかかる心理的な負担が省ける。
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