交通事故は大きく「物損事故」と「人身事故」の2つに分けられます。交通事故を起こした場合、すぐに警察と加入している保険会社に連絡することは基本的に同じですが、その後に行うべき対応は違うため、このように2つに分けられるのです。今回は交通事故の対処方法の違う物損事故と人身事故について、それぞれ詳しくご紹介します。
目次
「物損事故」の意味と事例
「物損事故」とは物を壊した場合の交通事故のことです。物損事故でいう「物」とはガードレールや縁石、民家の塀、トラック運転手の場合には積み荷など、人以外の対象のことをいいます。さらに物損事故における「損害」というのは、あくまでも加害者以外に対する損害のことです。したがって物損事故を起こした本人がけがを負ったとしても本人以外の人がけがをしていない限り物損事故だと判断されます。
ここで物損事故の具体的事例を見てみましょう。
事例:自動車の操作を誤り、コンビニに突っ込んでしまったAさん
Aさんはコンビニの駐車場でアクセルとブレーキを踏み間違い、コンビニ店舗に乗用車で正面から突っ込んでしまいました。けが人はAさんのみではあったものの、Aさんは結果としてコンビニ店舗のガラス、ガラス側に陳列されていた雑誌などの商品を壊してしまいました。裁判の結果、Aさんは損壊してしまった店舗と商品だけではなく店舗修理のためにコンビニが休業した間に計上できなかった売り上げ(休業損害)も支払うよう言い渡されました。
物損事故の対応の仕方
もし物損事故に遭ったら、落ち着いて以下の項目をひとつひとつ行うようにしましょう。
1.警察へ通報をする
事故現場の状況を警察に把握してもらいます。原則的には他人の車をこすってしまっただけでも通報しなければなりません。警察に事故現場を把握してもらわないと、その後、相手方の都合の良いように話を進められる可能性があります。ゆがめられた事実を根拠に一方的な主張をされてしまうと水掛け論に発展しトラブルになりかねません。
2.相手の身元と連絡先を確認する
相手について把握しておくのは後で相手に損害賠償をしてもらったり賠償の支払い先を明らかにしたりするためです。後で「交通事故証明書」を警察に発行してもらうと事故当事者の連絡先を知ることができますが、そこに記載されている連絡先に連絡をしても音信不通な場合もあります。その後に示談交渉や賠償額の支払いをスムーズに行うためにも事故に遭ったその場で必ず相手の連絡先を確認し、確実に連絡をとれるようにしましょう。
3.交通事故証明書の用意をする
ネットあるいは警察署や交番で「交通事故証明書」を入手し、最寄りの金融機関で手数料を支払って申し込むことができます。また自動車安全運転センターで申請することも可能です。交通事故証明書は警察が「交通事故があったことを証明する」書類になります。この証明書を申請していないと保険適用時に手続きが滞ってしまうことがあるので必ず申請するようにしましょう。
「人身事故」の意味と事例
「人身事故」とは加害者以外の人がけがをした場合の交通事故のことを言います。いくつか具体的な事例を見てみましょう。
事例1:自転車を運転中、自動車と正面衝突を起こしてしまった30代女性
Bさんは赤信号待ちをしていた車の列の間から自転車で飛び出したところを自動車にはねられ5メートル先まで飛ばされました。後遺症は残らなかったものの、お尻と頭の打撲、切り傷、首の捻挫と診断されました。
治療は1カ月程度の通院のみでした。弁護士に相談せずに示談交渉を行い、1年以内に交渉を終了させたものの交渉の進められ方に不満が残りました。
事例の詳細はhttps://ji-ko.jp/taiken/tk015/をご覧ください。
事例2:自転車運転中に、後方からバイクに追突された40代女性
雨がぱらついていたためCさんはスピードを出さずに自転車で交差点を渡っていたところ、バイクにはねられました。加害者は周囲にいた人が救急車を呼ぶ中で事故現場を立ち去ってしまいました。
幸いCさんに後遺症はなかったものの右肩と肘、右太腿の擦過傷と打撲と診断されました。治療は1カ月以内の通院のみでした。Cさんも弁護士に相談せずに示談交渉を行いました。
しかし現場から立ち去ったうえ示談交渉で損害賠償の局面に入ると連絡がつかなくなった加害者の悪質さについて保険会社がCさんの心情を汲み取ってくれなかった点に不満を残しました。
事例の詳細はhttps://ji-ko.jp/taiken/tk021/をご覧ください。
事例3:自転車で横断歩道を渡っていた際、左折してきた車と衝突した20代男性
Dさんは自転車で横断歩道を渡っていたところ自動車にはねられました。後遺症はなく腕と腹部の打撲と診断されました。骨に異常はないとされましたが、痛みが3週間程度続きました。
治療は1カ月程度の通院のみでした。Dさんも弁護士に依頼せずに示談交渉を行いました。しかしDさん側から連絡をしなければ対応をしてくれない保険会社の態度に不満が残りました。
事例の詳細はhttps://ji-ko.jp/taiken/tk008/をご覧ください。
人身事故の対応の仕方
人身事故に遭った場合の対応は物損事故の場合よりもやるべきことが多くなります。ここで面倒だからと手続きをきちんと行わないと、その後損害賠償を請求する際に不利になることもあるので注意が必要です。
1.警察へ通報をする
物損事故の場合と同様に必ず警察に通報し、現場状況を調べてもらいます。加害者側が警察を呼ぶことに難色を示したり現場を立ち去ろうとしたりする場合には3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる旨を伝えましょう。警察への通報を怠ると、その後、保険会社から賠償を断られてしまいますので必ず通報するようにします。
2.相手の身元、連絡先、保険加入状況を確認する
相手の連絡先を確認しておくのは物損事故の場合と同じになります。相手の保険加入状況を確認するのは、その後に加害者本人と連絡がつかなくなってしまった場合でも加害者の加入している保険会社に損害賠償を請求できるようにするためです。
3.目撃者の確認をする
目撃者は当事者の立場とは違い、客観的に事故の状況を説明することができるため、当事者間で事故状況の意見が食い違った場合には目撃者の証言が役に立ちます。このため目撃者がいた場合にはできるだけ協力を呼びかけ、連絡先を交換しておくことがおすすめです。
4.自分が加入している保険の確認をする
自賠責保険だけではなく任意保険にも加入している場合、補償してもらえる範囲が広くなっています。特に特約部分を確認し「無料でレッカー移動してくれるなどのロードサービスを利用できるか」「弁護士費用も補償してもらえる弁護士特約に加入しているか」などを確認しましょう。特に加害者は保険の加入状況を確認して被害者に知らせておかないと、その後の示談交渉がスムーズに進行できなくなってしまいます。
5.絶対に病院へ行く
事故当時は痛みがなかったのに事故後に痛みが発生し、物損事故から人身事故へと切り替えられるケースは非常に多い傾向です。しかし事故後に病院で診断されたけがについては、交通事故が原因だとはいえないとして損害賠償請求を認めてもらえない場合が多いので事故後は必ず病院へ行くようにしましょう。
落ち着いて交通事故に対応するために知っておこう
物損事故と人身事故では対処の仕方が異なっています。特に人身事故では被害者の治療通院費も損害であるとして賠償請求される代わり行うべき手続きは物損事故よりも多い傾向です。物損事故、人身事故どちらにおいても冷静になって警察に通報することから始めましょう。それぞれで行うべき手続きを放置すると後で損害賠償を請求できなくなってしまう可能性があります。
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