示談書は事故の当事者全員の署名、免責証書は被害者だけの署名が必要
免責証書は「この賠償金を受け取ったら、相手に対して一切の追加請求をしない」というもの
示談書を作る場合は必ず「後遺障害が発生したら別途協議する」の文言をいれること
交通事故の示談内容が決まると、次に作成するのが「示談書」もしくは「免責証書」です。ですがこれらの書類について、何を書けばよいのかわからない人もいると思います。
そしてよく示談書は公正証書で作ったほうがいいと耳にしますが、公正証書はどのような書類なのかと思いませんか?
そこで今回は示談書や免責証書、公正証書についてみていくことにします。
目次
交通事故の示談書と免責証書は似ているようで違いがある!
そうじゃな…まあ簡単に言えば示談書は被害者と加害者の双方が作成、免責証書は被害者が作成するんじゃよ。
交通事故の示談で作成する示談書や免責証書とは一体どのようなものなのでしょうか?
示談書や免責証書は、被害者と加害者双方が合意した示談の内容を正しく記載した書類です。
この2つの書類の大きな違いは、署名捺印が必要な人数です。
事故の当事者全員の確認が必要なのが「示談書」、被害者だけの確認でよいのが「免責証書」です。
当事者全員の署名捺印が欲しい「示談書」
被害者と加害者が作成し、交通事故の当事者全員の署名捺印が必要なのが示談書です。
双方が合意した損害賠償金の支払義務があることや、損害賠償金以外の債権債務がないことを確認する旨が記載されています。
加害者側の保険会社が示談書を作成し、被害者に送付する形になります。
保険会社➡加害者➡保険会社➡被害者と郵送回数が最低でも4回あるため、2週間以上かかってしまう事があります。
被害者だけの署名捺印が欲しい「免責証書」
被害者のみが作成し、署名捺印をすればよいのが免責証書です。
合意した損害賠償金を被害者が受け取った後は、加害者に対して賠償金の増額請求や異議の申立てを行わないという旨が記載されています。
免責証書の負の側面
免責証書は「この損害賠償金を受け取った被害者は、加害者に対して今後一切の請求をしない」という内容が含まれる承諾書です。
なので免責証書に署名捺印した後に後遺障害が発覚して慰謝料や治療費を請求したいと思っても、請求することは難しいでしょう。後遺障害の可能性がある場合は注意が必要です。
そして免責証書は被害者だけの確認でよい為、過失割合が10対0の交通事故や追突事故など、被害者に過失がない事故の示談での使用が多いです。
被害者がわからないように専門用語を羅列している免責証書もあるため、安易にサインするのではなく、プロである弁護士に相談してサインしてよいか尋ねてみるのをお勧めします。
示談書や免責証書で必要な項目6点
その示談書/免責証書において必要な項目とはどのようなものなのでしょうか?
基本的に下記6点の項目が一つでも抜けていたら、修正を要求してください。
★示談書や免責証書でほしい項目6点★ |
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☑ 当事者の特定 ☑ 交通事故の特定 ☑ 事故/損害の内容 ☑ 支払条件 ☑ 将来に関する留保条項 ☑ 期限の利益喪失約款(加害者からの直接支払いかつ分割払いの場合) |
保険会社が作成したものであっても漏れがないか必ず確認するようにしましょう。
項目その1:当事者の特定
加害者と被害者の特定をします。運転者と自動車の所有者が異なる場合は、自動車の所有者の情報も記入します。
なお、示談を行ったのが遺族等の法定相続人や加害者が数名いる場合など人数が多い場合でも必ずすべての当事者を記入してください。
また、加害者と被害者それぞれの車両番号(ナンバー)や車のメーカー・車種も具体的に記入する必要があります。
項目その2:事故の特定
事故が発生した日時・時間・場所など事故の概要を記入します。交通事故証明書に従って正確に記入するようにしましょう。
項目その3:事故/損害の内容
事故が起きた原因や過程をできるだけ詳しく記入します。その際、交通事故証明書に書かれている内容と事実が一致しているか必ず確認しましょう。事故によって発生した損害も記入します。
項目その4:支払条件
損害賠償金の支払方法や支払時期、支払期限、支払いを怠った場合の損害金、期限の利益喪失約款(支払いを何回か怠った場合は残額を一括で支払うなどの取り決め)を必ず記入しておきましょう。
項目その5:将来に関する留保条項
示談が決まった時点では認定されていなかった後遺障害が示談後に発覚、または認定される可能性があります。
その際後遺障害の損害請求を行えるよう、「後遺症が出た場合は改めて示談交渉を行うものとする」といった別途協議条項を必ず入れておくようにしましょう。
項目その6:期限の喪失利益約款
保険会社ではなく加害者本人から損害賠償金を直接支払ってもらう場合は、示談の時に一括払いにするのが望ましいでしょう。
しかし加害者に一括で支払う資力がない場合は、分割で支払ってもらうことになります。
その際に必ず示談書に「期限の利益喪失約款(きげんのりえきそうしつやっかん)」を定めておきましょう。
期限の利益喪失約款とは、加害者が分割支払いを怠った場合にどうするか、の約束事です。
一般的に「2回続けて支払いを怠った場合、支払うべき示談金の残高を一度に支払わなければならない」という取り決めが基本です。
遅延損害金の条項も記載しよう
また、遅延損害金もあらかじめ取り決めておくようにしましょう。
一般的な遅延損害金は、支払いを怠った金額の1割程度になります。
示談書に「加害者が支払いを怠った場合、遅延損害金として年利○%の利息を付加して支払うものとする」といった条項を記載します。
不安なら連帯保証人をつければより安心
加害者の親などの近親者の中で資力があり、安定した収入がある人がいる場合、連帯保証人になってもらうようにしましょう。
示談書/免責証書の中身に納得したら署名・捺印
示談書の内容に当事者が同意できたなら、いよいよ示談書に署名捺印をすることになります。
当事者本人が署名押印をする場合は、実印だけで構いませんが、本人が立ち会わず、代理人がこれらの書面を作成する場合は、委任状に実印の捺印と印鑑証明書の添付が必要です。
被害者と加害者では署名するべき人が異なるので注意
加害者の署名では当事者全員が署名
加害者の場合、示談書に署名するべき人は支払いを承諾した当事者全員になります。
例えば、運転者と車両の所有者が異なる場合は両方の署名が、営業車など会社名義の車が事故車両になった場合は、事故を起こした従業員の他に、会社の代表者の署名も必要になります。
被害者の署名では原則として本人が署名
被害者の場合、原則として被害を受けた本人が署名しますが、被害者が未成年の場合は、親権者または法定代理人が署名することになります。
その際、戸籍謄本の提出が必要となります。
また、死亡事故の場合も、相続人全員が署名することになりますし、相続人であることを証明する戸籍関係の書類を提出しなければなりません。
示談書への署名・捺印の前に必ずもう一度確認しよう!
示談書に署名・捺印する前に、内容におかしい部分や不明点がないか慎重に確認するようにしましょう。
示談書の形式によって変わってきますが、以下の金額のポイントは必ず記載されていますので、金額に間違いがないか再度確認するようにしましょう。
・治療費等も含めた損害額の合計金額
・過失相殺額
・既払金額
・最終支払い金額
また、傷害部分の示談だけをする場合や、後遺障害部分の請求を後でする可能性がある時には、「後遺障害が発生した場合には、別途協議する」等の条項を必ず入れる必要があります。
示談書を作成するときは公正証書がおすすめ!
示談書は契約書であるため、債務者(主に加害者)が示談書に記載されている義務を無視した場合、債務不履行として裁判所に訴えることができます。
示談書を公正証書にして執行承諾文書を入れておけば、強制執行の手続きや裁判をせずに、そのまま強制執行を行い、賠償金を回収することができます。
賠償金を一括で支払ってもらうのであれば、公正証書にする必要はありません。
しかし支払方法が分割払いの場合は、万が一を考え公正証書にしておきましょう。
豆知識:公正証書 |
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公正証書とは法律に基づき、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書です。 公正証書には公的な証明力はもちろん、強い執行力を持っています。 条項を書き加えておくだけで、本来ならば裁判を通さなければできない差押といった国による強制執行などが可能になるのです。 |
公正証書に作成するには
公正証書は公証役場を訪問して作成を依頼します。
公証人は示談内容を公正証書にするだけであって、示談案を提案するなどの中身の調整は一切行いません。
示談書を公正証書にする場合は、必ず被害者と加害者の間で示談内容の合意がされた後に公証役場を訪問するようにしましょう。
なお、公証役場には2度訪問する必要があります。訪問する前に電話で予約するとスムーズに対応してもらうことができます。
公証役場 訪問1回目
1度目は、被害者と加害者の双方はもちろんですが、どちらか一人の訪問でも構いません。
しかし公正証書を作成するために、被害者と加害者双方の身分証明書が必要となりますので、どちらか一人が訪問する場合は、必ず相手方の身分証明書のコピーも持参するようにしてください。
また認められる身分証明書に決まりがありますので、「こちらは身分証明書として認められません」とならないように必ず確認しておきましょう。
公証役場 訪問2回目
2度目は、公正証書を受け取るために訪問することになります。
被害者と加害者の双方が訪問する必要がありますが、代理人に依頼することも可能です。
公正証書の内容に間違いがないか確認し、間違いがなければ双方が署名と押印をします。
また公正証書の受け取りの際に公正証書の作成費用の支払いがあるため、あらかじめ双方でいくらずつ払うか話し合っておきましょう。
なお、2度目の訪問時も身分証明書が必要となります。公正証書の費用は種類によって異なってくるため、必ず訪問前に確認しておきましょう。
なお、訪問時に必要となる身分証明書は、下記の4つのみ認められています。主に写真付きの公的身分証明書です。
1 | 運転免許証 |
2 | パスポート |
3 | マイナンバーカード |
4 | 発行から3カ月以内の印鑑証明書 |
つまり保険証や社員証は公的な身分証明書としては認められません。
上記四つを持っていない場合はどれか一つを作成しておきましょう。
示談書や公正証書についてのまとめ
示談書や免責証書、公正証書についてみてきました。示談書や免責証書は存在しているだけで強い効力を持つため、作る際は最新の注意が必要です。
また、保険会社が提示してきた示談書や免責証書の内容に不安があるようならば、法律のプロである弁護士に相談するのがおすすめです。
そして公正証書は法律的にも安心かつ安全な書面です。また、これがあれば差し押さえなどの公的機関による強制執行も起こしやすいため、万が一の為にも示談書(免責証書)は公正証書で作るべきでしょう。
簡単に言えば国による差し押さえじゃ。
交通事故の被害者になった場合、示談交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故でケガを負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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