休業損害は自賠責保険で、休業補償給付は労災保険
自賠責保険の休業損害は「5,700円×休業日数」
基本的な計算式は「基礎収入額×休業日数」
交通事故に遭って怪我や入院をしてしまうとその治療のために仕事を休まなくてはいけません。
事故が原因で仕事を休んだ時に発生する損害(主に収入)を休業損害といいますが、こちらは勤務の内容によって計算形式が変わります。いざという時の為に覚えておきましょう。
目次
「休業損害」とは、交通事故が原因でもらえなかった収入を指す
交通事故における「損害」とは、事故前の経済状況と事故後の経済状況を比較したときの財産の差額を指します。
この損害には財産的損害と精神的損害があり、財産的損害は積極損害と消極損害に分かれます。
消極損害とは事故に遭わなければ得られていたはずなのに、事故に遭ったことで得られなくなった損害のことで、事故に遭った為に得られない収入である休業損害は消極損害に分類されます。
Q:休業損害と休業補償って同じものですか?
A:「休業補償」を「休業収入補償」か「休業補償給付」のどちらで考えるかによって同じものにもなるし、違うものにもなる。
「休業補償」を単に休業した分の収入を補償する意味で使っているなら、休業損害と同じと言えるでしょう。
弁護士のなかにも「休業損害」の意味で「休業補償」と言う人はいます。
しかし「休業補償」を「休業(補償)給付」の意味で用いると「休業損害」とは違う概念になります。
休業損害が自賠責保険から支払われる保険金に対して、休業補償給付は労災保険から支払われるのです。
休業損害➡自賠責保険
休業補償給付➡労災保険
休業補償給付とは
休業補償制度のまとめ |
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・労災保険からの支給 ・休業して4日目から受け取れる保険金 ・休業補償給付➡日給60% ・休業特別支給➡日給20% ・休業補償制度=休業補償給付+休業特別支給金 |
労災保険に含まれる休業補償給付は、業務上または通勤途中に交通事故に遭った被害者の怪我の治療が4日以上かかる場合に使えます。休業開始日の3日間が待機期間という扱いになり、4日目から受け取れる保険金です。
この場合原則、休業すると1日あたり日給の6割が休業補償給付として、2割が休業特別支給金として支払われる為、日給の8割が受け取れることになります。
ここで注意してほしいのは労災保険と自賠責保険の二重取りはできない為、どちらかを受け取ると、もう片方は減額されます。ただし、休業特別支給金は減額の対象外なので、差し引かれることはありません。
休業補償制度の計算方法
Q:日給10,000円の人が10日間休んだ場合の受け取れる休業補償制度は? |
A:下記の計算式で56,000円になる |
休業損害=100,000円
休業補償制度=休業補償給付+休業特別支給金
↓
休業補償給付:6,000円(日給の60%)×7日(3日間は差し引いた分)=42,000円
休業特別支給金:2,000円(日給の20%)×7日(3日間は差し引いた分)=14,000円
結果:42,000円+14,000円=56,000円
日給1万円の人が業務中に事故に遭い、10日間仕事を休んだ場合、まず単純に休業損害は10万円で、休業補償制度を利用して受け取れるのは5万6,000円(7日×6,000円+7日×2,000円)です。
休業補償の計算方法を勤務体系別に分かりやすく解説!
休業損害は1日あたりの収入額(基礎収入額)に休業日数を掛けて算定します。
裁判実務や任意保険会社とのやり取りでは実際の収入額を基本とするケースが多くありますが、自賠責保険では原則1日あたりの収入を5,700円として休業損害を割り出します。
休業日数とは仕事ができなかった期間をいい、入院期間中ならば仕事を休む必要があるので休業日数に含めて問題ありません。
自賠責保険の休業損害計算方法
・休業損害=5,700円×休業日数
(休業日数=仕事ができなかった期間)
Q:休業日数はどこまで認められますか? |
A:入院期間は認定されます。通院期間は基本的に医師が通院しなくてもいいという期間までです。 |
通院していた期間も基本的に休業日数に含められますが、医師が通院の必要はないと判断した日以降も通院した場合などは認められないでしょう。
具体的な症状によっては、事故日から症状固定日までの期間を休業日数としたうえで、そのうちの一定割合を休業損害として支払うこともあります。
1:給与所得者(会社員)
休業損害=基礎収入額×休業日数 |
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※基礎収入=3ヶ月分(90日)の平均給与÷90日 |
勤務先に休業損害証明書を発行してもらい、過去3カ月の平均給与を90日で割って基礎収入額を算定します。
そのうえで休業日数を掛け、休業損害を導きます。新入社員のように過去のデータがない場合には雇用契約書や求人広告から基礎収入額を算定します。
2:会社役員
休業損害=基礎収入額×休業日数 |
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※収入のうち、労務対価部分が占める割合によって変動する |
会社役員の場合、通常、その収入は労務対価部分と役員報酬部分の2つで構成されています。このうち役員報酬部分は、その人が実際に働いているかに関係なく支払われるので入院中であっても減額されません。
このため、会社役員の休業損害を割り出すには収入のうち何割が労務対価部分にあたるのかを見極める必要があります。
労務対価部分の占める割合は業務内容によって異なり、肉体労働であれば休業損害と認められやすい傾向にあります。基礎収入額を割り出したら、休業日数に掛け、休業損害を割り出します。
3:事業所得者・個人事業主
休業損害=基礎収入額×休業日数 |
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※基礎収入=前年度収入(確定申告書)÷365日 |
事業所得者や個人事業主は、確定申告書の「所得金額」欄などで前年度の収入を調べ、365日で割って基礎収入額を割り出します。その後、休業日数に掛けます。
4:家事従事者(主婦・パートタイマー含)
休業損害=基礎収入額×休業日数 |
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※専業主婦:基礎収入=賃金センサス女子平均賃金から割り出す ※パート兼業:基礎収入=賃金センサスor給与➡高い金額 |
専業主婦であれば賃金センサスの女子全年齢平均賃金から割り出した基礎収入額を、兼業主婦であれば実際の給与か賃金センサスのいずれか高いほうから割り出した基礎収入額を休業日数に掛けます。
5:生徒・学生など
休業損害=基礎収入額×休業日数(アルバイトのみ) |
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※基礎収入=時給×1日勤務した時間 |
生徒・学生は就労していない為、原則として休業損害を請求できません。しかしアルバイトをしている学生ならば、休業損害を請求することができます。
また、交通事故で就職時期が遅れた場合にも、予定通り就職できていれば受け取れていたと思われる金額を受け取ることができます。この場合、勤務先から休業損害証明書を発行してもらい、基礎収入額を算定します。
6:無職者・不労所得者
事故の時点で働いていない為、原則として休業損害は発生しません。ただし、就労意思や就労する能力があり、近い将来ほぼ確実に就労していたと言える場合には休業損害を請求できる可能性があるので、弁護士に相談してください。
7:高齢者
一人暮らしの高齢者は、原則として休業損害の賠償を請求できません。ただし、家族と同居していて、家事や介護をしている場合には家事従事者に準じて請求できる可能性があります。
納得できなければ弁護士に相談しよう
勤務体系別に考慮すべき事情が異なるので一筋縄には計算できない休業損害。逸失利益や慰謝料に比べると金額は低くなりがちですが、休業損害も軽視できない損害項目なので、納得できないことがあれば弁護士に相談してみるといいでしょう。
交通事故での慰謝料を請求するにあたり、交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故でケガを負った場合、慰謝料請求を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの慰謝料を増額できるケースがあります。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、慰謝料を請求するにあたり不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する慰謝料を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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