加害者が加入する保険で損害を補償できない場合に、被害者が使える保険がある
被害者が使える保険は、任意保険に含まれている
いざというときにきちんと補償が受けられるよう、定期的に保険の契約内容を確認すべき
本来、交通事故被害者への賠償金は、加害者が加入する自賠責保険(および任意保険)から支払われます。
しかし、加害者の保険金で損害を賄えない場合、被害者が自分の保険を使える場合があります。ここでは、被害者が自分の保険を使うためのプランや条件について説明します。
目次
被害者が自分の保険を使える場合もある!
基本的に交通事故の賠償金は、基本的には加害者側の自賠責保険から支払われ、それでも不十分な場合は任意保険から支払われます。
しかし、加害者が任意保険に加入していない場合や被害者にも落ち度(過失)がある場合は、被害者自身も損害額を支払う必要があり、そうなると満足な補償を受けられなくなります。
このような場合に、被害者が、自分が加入している保険から保険金の支払いを受けられるプランがあるのです。
加入中の保険の契約内容は、定期的に確認・把握することが大事!
保険に加入している人の多くは、自分が加入している保険の契約内容をきちんと把握していないのではないでしょうか。保険を更新する際など、定期的に自分が入っている保険の契約内容をチェックしておきましょう。
交通事故の被害者となった時に、自分が使える保険があっても保険会社から詳しい説明がないことも多く、せっかくお金を払って保険に加入していても、その保険の内容を知らなかったばかりに受けられるはずの補償を受けられない可能性があるからです。
自動車に関する保険は、“自賠責保険”“任意保険”の2種類
今回は、自動車に関する保険についてみていきましょう。自動車を運転する人の自動車保険は、大きく分けて2種類あります。
1.【自賠責保険】強制加入である
2.【任意保険】任意加入である
交通事故に遭った場合、被害者への損害賠償額は加害者側の保険会社より支払われます。その際、人身事故の場合は自賠責保険と任意保険で、物損事故の場合は任意保険から支払われます。
加害者側の保険会社が積極損害・逸失利益・慰謝料などの損害賠償額を見積もり、被害者が準備した書類をもとに示談交渉を行って最終的な損害賠償額を決定します。
自賠責保険とは
「自賠責保険」は、交通事故が発生した際に、被害者が最低限の補償を受けられるよう、加入が義務づけられている保険です。
しかし、自賠責保険の補償は最低限であるため、交通事故の規模によっては被害者への損害賠償額をまかなえないこともあります。
また、自賠責保険は人身事故の場合のみ使えるもので、対物事故の場合は保険を使うことができません。
任意保険とは
「任意保険」とは、自賠責保険では補償しきれない部分を補償するために、任意で加入する保険です。任意とは言え、現在ではほとんどの自動車運転者が加入しています。
補償の適用範囲や補償額は保険会社やプランによって異なり、自分で好きなプランを選ぶことができます。
もしも加害者が任意保険に加入していなかった場合は、被害者は自賠責保険会社に直接賠償金を請求する事ができます(被害者請求)。
自賠責保険と任意保険の特徴
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
加入義務 | 法律により強制加入 | 自由に加入 |
目的・趣旨 | 被害者保護のための最低限の補償を実現 | 自賠責保険の不足分を補てんすること |
補償や賠償の内容範囲 | 法令で定められている。対人賠償のみ | 保険商品によって異なり、加入者本人が任意で選べる |
過失相殺 | 重大な過失w(7割以上)がない限り、減額されない | 示談代行サービスに基づき、加害者が加入している保険会社担当者が厳格に対応 |
限度額 | 傷害:1,200,000円 後遺障害:750,000~40,000,000円 死亡:30,000,000円 | 保険会社や加入プランによって異なる |
被害者が絶対に知っておきたい重要な保険4つ
それでは、被害者がどんな保険に加入していれば、自分の保険を使うことができるのか見てみましょう。なお、ここで紹介する保険のほとんどは任意保険の特約にあります。
保険名 | 種類や特徴 |
---|---|
対人賠償保険 | 相手方の人的損害を賠償 |
対物賠償保険 | 相手方の物的損害を賠償 |
車両保険 | 自分の車の物的損害を補償 →加害者が対物賠償保険に未加入の場合に重要! |
人身傷害補償保険 | (被害者の過失の有無に関わらず)被害者の人的損害を補償 |
搭乗者傷害保険 | 保険をかけた車両の搭乗者の人的損害を賠償 |
無保険車傷害保険 | 加害者からの賠償金では損害を賄えない場合の補償 |
自損事故保険 | 単独事故などで被害者が死亡または後遺障害を負った時の補償 |
7つのうち、特に重要な4つの保険について詳しく見てみましょう。
1.人身傷害補償保険(重要度:★★★★★)
人身傷害補償保険は、交通事故の被害者になった場合に、被害者の過失の有無に関係なく治療費や休業損害を(契約した保険金額の範囲内で)全額補償してくれる保険のことです。
人身傷害補償保険は、契約者本人だけでなくその家族も事故による補償を受けることができます。また、契約車両での交通事故だけでなく、契約車両以外での自動車事故や、歩行中や自転車での自動車事故も補償されます。
さらに、通常は示談が成立しないと賠償金を受け取ることはできませんが、人身傷害補償保険は示談成立に関係なく保険金を受け取ることができます。
しかし、酒気帯び運転や無免許運転など、契約者の故意による事故や契約者自身に極めて重大な過失がある場合は、保険金を受けることができません。
支払われる保険金は「裁判所基準・弁護士基準」ではなく、あくまで保険会社の支払い基準にもとづいて算定され、加入時に定めた範囲でしか支払われません。そのため、損害額との差額が出た場合は加害者に別途請求する必要があります。
人身傷害補償保険のメリット・デメリット | |
---|---|
メリット | 自分の落ち度(過失)に関係なく保険金が支払われる 自分以外の家族が乗車していても保険金がもらえる 示談成立に関係なく保険金を受け取ることができる |
デメリット | 故意の事故や自業自得に近い落ち度の場合は支払われない 支払われる保険金の基準は保険会社の支払い基準(実は低い!) |
メリット:人身傷害補償保険は被保険者以外も保険金の支払いが受けられる
さらに、人身傷害補償保険では、記名被保険者(保険証券に記載されている被保険者)だけでなく、配偶者や同居の親族などが保険に加入している自動車に搭乗中に事故でケガや死亡した場合や、歩行中に起きた自動車との事故であった場合でも、補償を受けることができる可能性があります。
デメリット:損害額すべてをカバーできない可能性がある
しかし、故意による事故や被害者自身に極めて重大な過失がある場合は、支払いを受けることができません。
また、支払われる保険金は「裁判所基準・弁護士基準」ではなく、あくまで保険会社の支払い基準にもとづいて算定される金額ですし、加入時に定めた範囲でしか支払われません。
そのため、損害額との差額について加害者に別途請求する必要があります。
賠償金が支払われる前に人身傷害補償保険金を受け取った場合
加害者側から賠償金が支払われる前に保険金を受け取ることもあります。この場合、まずは保険金が被害者の過失割合に応じた損害額にあてられます。
その上で被害者の過失割合に応じた損害額を上回る金額があれば、その範囲で保険会社が被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得し、保険会社が加害者に請求(求償)をすることになります。
人身傷害補償保険金を先に受け取った場合の具体的な事例を見てみましょう。
【裁判所が認定した事件の総損害額】5,000万円
【被害者の過失割合】40%
➡5000万円の40%=2000万円(2000万円が被害者の支払い)
【人身傷害補償保険から支払われた金額】3,000万円
・人身傷害補償保険に加入していない場合
加害者負担分3,000万円 | 被害者負担分2,000万円 |
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・人身傷害補償保険に加入している場合
2,000万円 | 人身傷害補償保険金3,000万円 |
---|
→2,000万円の部分は被害者が加害者側に請求
人身傷害補償保険と加害者、どちらを先に請求するべきか
先に加害者側から賠償金の支払いを受けた後、不足した被害者の過失部分の損害額を人身傷害補償保険に請求するという方法もあります。
しかし、被害者に落ち度がある場合に使用する人身傷害補償保険において、被害者の保険会社が代位取得する損害賠償請求権の範囲に関しては、裁判によって取扱い方法が異なります。
その為、通常は加害者から賠償金の支払いを受ける前に、まず人身傷害補償保険金の支払いを受けた方が無難と言えます。
つまり、双方に過失がある場合の事故の示談の結果、先に加害者から損害賠償金をもらって、自分が支払う分を人身傷害補償保険で支払おうとすると、トラブルが発生する恐れがあるという事です。
豆知識:代位取得 |
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代位取得は保険用語の一つです。 損害保険において保険会社が被保険者に保険金を支払った場合、被保険者(保険契約者)が他人に対して持つ権利(賠償請求権)を保険会社が取得することです。簡単に言えば保険金を受け取ったから請求権を譲渡すると言うことです。 |
2.搭乗者傷害保険(重要度:★★★★)
搭乗者傷害保険は、保険をかけている自動車に搭乗していた人が事故によって傷害を負った時に、一定額の保険金が支払われる保険です。
すなわち、保険をかけていた自動車に乗車していた被害者であれば、被保険者の家族でなくても補償されるということです。
この保険は、加害者側から賠償金の支払いを受けた後にも請求できますし、支払われた保険金が損害賠償金額から控除されることもありません。
しかし、支払われる保険金は一定額で、大きな額は期待できません。
搭乗者傷害保険のまとめ |
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〇 ・この保険をかけてある車なら被害者の家族じゃなくても補償される ・加害者から賠償金をもらった後でも請求できる。 |
× ・支払われる保険金は一定で、少なめ |
3.無保険車傷害保険(重要度:★★★)
無保険車傷害保険は、交通事故により被保険者(被害者)が死亡または後遺障害を負った場合に、加害者が対人賠償保険に加入していない場合および被害者の損害を十分に補償することができない場合に、一定の保険金が支払われる保険です。
無保険車傷害保険は人身傷害補償保険と内容が重複するため、特例の扱いとなるのですが、人身傷害補償保険が支払われない場合や、人身傷害補償保険金の額が無保険車傷害保険金の額と自賠責保険金の額の合計金額を下回る場合に支払われます。
この保険は、被害者が死亡または後遺障害を負った場合のみ支払いを受けることができますので、治療によりケガが治った場合は支払いを受けることができません。
また、加害者に法律上の損害賠償義務が認められることが条件となっているため、被害者の過失割合が100%の場合も支払いを受けることができません。
無保険傷害保険のまとめ |
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〇 ・加害者が対人賠償保険に未加入の場合、一定額の保険が支払われる ・加害者が加入する保険で損害を十分に補償できない場合も保険金が支払われる |
× ・人身傷害補償保険が使えない場合にも適用される ・治療によりケガが治った場合は適用されない ・被害者が100%悪い場合は使用できない |
4.自損事故保険(重要度:★★★)
自損事故保険は、単独事故や加害者に自賠責上の責任が追及できない時に、被害者の過失が100%であっても使うことができる保険です。
人身傷害補償保険と内容が重複しているため、主に人身傷害補償保険が含まれていない保険に入っていることが多いです。
一定の損害が発生した場合に定額の保険金が支払われ、支払われる保険金の種類は、死亡保険金・後遺障害保険金・介護費用保険金・医療保険金となります。なお、自損事故保険に支払われた保険金は、損害賠償金額から控除されません。
自損事故保険のまとめ |
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〇 ・単独事故や、自賠責上の責任を加害者に追及できない事故に使用できる ・被害者が100%悪い事故でも使用できる |
× ・支払われる保険金の種類が決まっている ・被害者が死亡、後遺障害を負った時のみ支払いが受けられる |
交通事故の被害者が使える保険について
交通事故に遭った被害者が使用できる保険についてみてきました。メリット、デメリットがそれぞれあるため、自分の運転頻度に合わせて保険をつけるべきでしょう。
基本的に加害者が任意保険に入っていなかったり、被害者側に落ち度がある事故だったりして、もらえるお金が少ない場合に働く保険といえます。
重要である4つの保険は任意保険のオプションの保険の為、任意保険に入っていなければ意味がありませんが、もしものことを考えて入っておいたほうが賢明といえます。
また任意保険の中には弁護士費用特約という弁護士に実質無料で示談交渉を依頼するオプションもあるため、不安な方はつけてみるのも手だといえるでしょう。
交通事故の被害者になったら、事故からなるべく早い段階で弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故で被害に遭い怪我を負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。
損害賠償の交渉を行う場合のほとんどは、相手は示談交渉において知識がある担当者です。保険会社側の担当者は被害者の味方ではありません。
被害にあったら弁護士に依頼をすることで、示談交渉に臨むことをおすすめします。初回相談が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは相談してみましょう。
【交通事故の被害に関する示談交渉を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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