後遺障害と後遺症は全く違う症状で、慰謝料が請求できるのは後遺障害
後遺障害診断書の書き方のコツは「作成経験がある医師を選び自覚症状の中身
後遺障害が通りやすい申請方法は事前認定よりも被害者請求
交通事故に遭い治療を続けても結果として後遺症が残ってしまう事があります。その場合、後遺症ではなく後遺障害として認定されれば加害者に後遺障害の慰謝料を請求することができます。
しかし後遺障害に申請するには医師による後遺障害診断書が必須であり、診断書の中身で認定されることが多いのです。そこで今回は後遺障害等級に認定されやすい後遺障害診断書の書き方について紹介します。
目次
後遺障害の慰謝料をもらうには後遺障害等級認定が必要
交通事故で負った怪我は治療を続けても残念ながらその全ての怪我が完治するわけではありません。
壊死した足を切断しなければならなかったケースや痛みが常に続く腰や腕のように、ケガのなかには治療を続けても事故前の体の状態には戻らないことがあり、後遺症として体に残ってしまいます。
この場合、事故前と同様の仕事ができなくなり被害者は不便な生活を余儀なくされます。
★交通事故における「後遺症」と「後遺障害」の違い★ |
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●後遺症……交通事故の直後から一定の期間に現れた強い機能障害や神経症状が、治療が終了しても残り続けているもの ●後遺障害……後遺症のうち、「怪我が完治した後も障害が残る」「該当する怪我と交通事故に因果関係がある」「将来において回復が困難な精神もしくは肉体で、それが医学的に認められる」「この障害により労働能力の喪失を伴う」の4つを全て満たしたもの |
つまり、後遺症の中でも特別な条件を全て満たしている身体の症状を、後遺障害というのです。
このように事故に遭った事で怪我を負い事故前の生活ができなくなった被害者は加害者に対して後遺障害による逸失利益や後遺障害慰謝料を請求できます。
もっとも、後遺障害に関する損害賠償金を請求するには、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、加害者側の保険会社に提出して後遺障害等級認定を得なければなりません。
例外的に自賠責保険上の後遺障害等級に該当しなくても後遺障害の損害賠償(主に慰謝料)が認められるケースはありますが極めて少数です。
等級ごとに後遺障害慰謝料の金額が変わるので注意!
後遺障害といっても症状の重さに差があり、その程度に応じて後遺障害慰謝料、逸失利益(労働能力の喪失率)の金額が異なります。
14級よりも1級のほうが重傷で、受取れる損害賠償の金額も高くなっています。また慰謝料の基準にも差があり、自賠責基準より弁護士基準のほうが高額です。
むち打ちの後遺障害はいくらになる?
たとえば、追突された衝撃で起こるむち打ち症は、14級9号、12級13号、9級10号、7級4号に該当する可能性があります。
しかし、一般的にむち打ち症は後遺障害と認められること自体が簡単ではなく、ほとんどのケースで14級9号、よくて12級13号の後遺障害等級しか認められません。
★むちうちの後遺障害等級と獲得できる後遺障害慰謝料の違い★
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
7級4号 | ¥4,090,000 | ¥10,000,000 |
9級10号 | ¥2,450,000 | ¥6,900,000 |
12級13号 | ¥930,000 | ¥1,800,000 |
14級9号 | ¥320,000 | ¥1,100,000 |
後遺障害等級認定を得るには後遺障害診断書が大切
後遺障害等級を申請する際に必須の後遺障害診断書は医師が作成する怪我の治療に関する後遺障害の診断書です。
後遺障害診断書は、治療開始日、入院期間、実通院日数、他覚的所見など後遺障害の認定にあたって必要となる事項を漏れなく記載できるようになっており、自賠責保険会社や任意保険会社に請求すれば入手できます。
後遺障害等級認定の申請が通りやすい後遺障害診断書の書き方 5つのポイント
【後遺障害申請が通りやすい診断書の書き方の5つのポイント】
1.後遺障害診断書の作成経験のある医師を選ぶ
2.怪我の自覚症状を的確に医師に伝える
3.自分の状態が症状固定後であることをしっかり医師に伝える
4.医師に全て任せず自分でも後遺障害診断書の内容を確認しておく
5.弁護士に同行を求める、もしくは相談する
後遺障害診断書を作成する事ができるのは医師のみです。また、患者である被害者が医師に対して具体的な書き方を指示することはできません。
もっとも、症状の内容を自らの身をもって体感しているのは被害者であり、医師も被害者の意見を参考にしつつ作成していくことになります。
しかし、医師だからといってすべての医師が診断書や交通事故に関わる診断書(後遺障害診断書)を書いた経験があるとは限りません。
その為、後遺障害診断書の書き方を被害者側もある程度知っていないと後遺障害等級に申請しても自分の望む結果にならない可能性があります。今回は後遺障害申請が通りやすい診断書の書き方の5つのポイントをお伝えします。
★ポイント1:後遺障害診断書の作成経験のある医師を選ぶ
後遺障害等級の認定を得られるか否かは書面審査で決まるので、同じ症状であっても診断書の中身が審査機関の認定ポイントを突いて作成されているか否かによって、結論が異なることがあります。
このため後遺障害診断書を作成する際は、後遺障害診断書の作成経験のある医師に依頼したほうが良いでしょう。また、もしも後遺障害診断書の作成を医師に拒否された場合は転院することも考えておきましょう。
★ポイント2:怪我の自覚症状を的確に医師に伝える
後遺障害等級の有無は、自覚症状と他覚症状の両面から総合的に判断されます。たとえば自覚症状の側面が強いむち打ち症の場合には、医学的所見がなくても後遺障害の14級に該当すると認められることがあります。
虚偽の内容はいけませんが、どういうときに症状があるのか、どの程度なのかを的確に医師に伝えて診断書に反映してもらいましょう。あらかじめ自分の怪我の状態についてメモしておくと伝え漏れを防げるはずです。
豆知識:交通事故における「自覚症状」と「他覚症状」の違い |
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自覚症状➡医師や第三者などの客観的視点から認識できる症状ではなく、自分自身で認識できる症状の事。見た目で異変がわからないけれど本人は痛みやしびれなどがある状態を指す。 |
★ポイント3:自分の状態が症状固定後であることをはっきりさせておく。
後遺障害等級に認定されるには、それ以上治療を続けても治療の効果がないという症状固定にならなればなりません。このため、症状固定日を記載してもらい「障害内容の増悪・緩解の見通し」の欄に「今後症状が改善する見込みは低い」などと記入してもらいましょう。
ただ、症状固定だと認定されますとこれ以上治療を続けても意味がないとされ保険会社からの治療費はストップします。まだ治療の改善の見込みのある方は下手に症状固定だと言わずに治療を続けるのが賢明です。
症状固定後に後遺障害診断書の作成に取り掛かりましょう。
★ポイント4:医師任せにせず、被害者自ら後遺障害診断書の内容を確認する
後遺障害診断書は被害者の今後の生活に関わる重要な資料なので、作成した診断書は被害者自ら確認しましょう。医師が書いたから大丈夫だろう、と任せてしまい提出した後に重大な誤りを見つけても訂正がききません。
確認して怪我の症状や診断日などといった誤りがあれば訂正を希望してください。
★ポイント5:弁護士に同行を求める、もしくは相談する
被害者自身だけで病院に行くことが不安ならば弁護士に同行してもらいましょう。弁護士に同行してもらうと医師へ直接診断書の書き方についてアドバイスしてくれるので、より的確な診断書になるでしょう。
医師との信頼関係を壊してしまわないように信頼できる弁護士に依頼することが大切です。
また、同行までは流石に……と思った被害者でも、診断書の出来が不安な方は出来上がった診断書を保険会社に提出する前に弁護士に見てもらいましょう。
後遺障害診断書を含めた書類の提出先は請求方法により異なるので注意
後遺障害等級認定の申請手続きには、事前認定と被害者請求の2つの請求方法があります。
事前認定は加害者の任意保険会社が後遺障害等級認定の手続きも一括して進めてくれる請求方法です。この場合、後遺障害診断書を保険担当者に提出します。
被害者請求とは、被害者が自ら後遺障害診断書を含めた必要書類を準備して、直接自賠責保険会社に請求する方法です。
後遺障害申請は保険会社にお願いするより被害者自身で行う形がおすすめ
これだけ見れば全て相手の保険会社で行ってくれる事前認定のほうが楽に見えるかもしれません。
しかしそれは罠です。実は、後遺障害に認定されますと保険会社はその分の慰謝料を支払わなくてはいけない為、保険会社は必要な資料を最低限しか集めずに提出してしまうケースが存在します。
結果として、事前認定で加害者側の保険会社に任せてしまうと被害者が思っていた以上に低い後遺障害等級で申請が通るケースがあるのです。
資料を沢山集められる被害者請求の方が、申請が通りやすい
代わりに、自分で行う被害者請求は資料を集めたり自賠責保険会社に提出しなくてならない為手続きが煩雑ですが、その分自分で満足いくまで資料を集めたりすることができるので、被害者自身が望む等級で後遺障害申請が通りやすいのです。
まとめ・後遺障害診断書の出来が等級認定の有無を決める
後遺障害であると認定されるかによって交通事故の損害賠償金(とくに慰謝料の金額)が大きく異なってきます。その為、被害者としてはなるべく後遺障害を申請した場合は認定を望みたいでしょう。
後遺障害等級の認定の判断に用いられる後遺障害診断書は、認定を決める機関にとって極めて重要な資料です。つまり、後遺障害診断書の出来が後遺障害等級の有無を決めるのです。
この記事でお伝えしたポイントを参考に、的確な後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
後遺障害の等級認定を受けるにあたり、スムーズかつ的確に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故でケガを負い完治しないと判断された場合(症状固定)、適正な損害賠償額を受け取るためにも後遺障害の等級認定を受ける適正な等級認定を得るためには、書類作成から専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【後遺障害認定を弁護士に依頼するメリット】
・後遺障害認定に関する書類作成や審査などは専門的な知識が必要となるため、専門家である弁護士に任せることにより、スムーズに手続きを進めることができる。
・専門家により適正な障害等級を得ることができ、後遺障害慰謝料の増額が見込める。
・ケガをしている中で、心理的な負担を省ける。
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