交通事故の被害者向け 示談交渉時に知っておきたい10個の項目【保存版】

公開日:2016/05/19
最終更新日:2019/02/28

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交通事故保険弁護士損害賠償示談交渉被害者

交通事故後の示談交渉をしている人の身振り手振りのイメージ画像

 

 示談の前提として「事故の状況」「自分の損害賠償」「双方の保険と保険の契約内容」の3つの情報を把握しておく

 領収書や事故現場の画像をきちんと残しておく

 示談交渉では「損害賠償金を計算する」「感情論は禁止」「交渉は書面で」「双方譲り合いの気持ちで」「裁判に怯えない」「総額で判断」の心を持つ

ナビ夫

交通事故の示談交渉は被害者の治療がひと段落つき、最終的な損害賠償額が決まってから始まるのが基本です。しかし実際の示談交渉は、交通事故直後の加害者側とのやり取りから始まっています。

つまり、交通事故に遭って治療を始めた段階から、示談交渉を見据えて資料や証拠といった準備を整えることが示談交渉を有利に進めることに繋がるのです。

交通事故の内容によっては被害者が示談交渉をしなくてはならないケースも存在します。しかし多くの被害者は示談交渉の経験が無いでしょう。そこで今回は示談交渉のテクニックについてお伝えします。

交通事故の示談交渉に臨む前に覚えておきたい前提3つ

りんね
おじいちゃん、どこにいくの?
アシスト爺ちゃん
はす向かいのタバコ屋じゃよ。あそこのおじいさんから保険会社が相手の場合の示談交渉の知恵を貸してほしいと言われてのぅ。
りんね
だからそんなに本を持っているんだね。持つのを手伝うよ!

項目1〜3 示談前 交通事故の示談前に知っておきたい3つの項目

項目1.交通事故の事故現場の状況を正しく把握する
項目2.自分側の損害賠償に関する事実を正しく把握する
項目3.相手と自分が加入している保険と保険の契約内容をしっかり把握する

交通事故の示談を行う際、自分が提出した示談交渉の中身が間違っている可能性を考えておいてください。

損害賠償金の計算が正しくても、過失割合慰謝料の基準といった計算の前提が違っていると最初からやり直しになってしまうからです。示談を行う上で最も大切なのは正しい事実と情報を手に入れている事です。

つまり、示談交渉の場において相手側に比べてより正確、且つより多くの情報を持っている側が有利な立場になるという事です。

特に上記3つの項目は正しく知っておくべきでしょう。

項目1:交通事故の事故現場の状況を正しく把握する

交通事故の示談交渉の際、当事者間の責任(主に過失割合)を判断するうえで、交通事故の状況を把握することは非常に重要です。

事故から時間が経過すると記憶はどうしても曖昧になりますし、道路状況や交通規制などが変わってしまう可能性もあります。そのため事故後はなるべく早めに事故現場に足を運ぶようにしましょう。

事故現場でチェックするべきポイント

事故現場では、道路の状況や加害者/被害者の双方からの見通しの良否、交通量、一時停止の有無や制限速度、ブレーキの痕、残っていれば警察の実況見分の時のマーキングなどを確認して、写真やメモをとって記録しておきます。

また、事故によって破損した車や自転車、衣類などの被害状況を写した写真も、損害や衝撃の大きさを証明する証拠になります。

【事故現場のポイント】

point・被害者・加害者双方の車からの見通し、ブレーキ痕、事故の時間の交通量を確認する
・残っている事故の状況をスマホやカメラで撮影する
・被害者側の被害状況を写真に撮っておく

項目2:交通事故の損害賠償に関する事実を正しく把握する

交通事故の通院費などの領収書をまとめて束にした画像

加害者に対して事故で被った自分の損害賠償金を請求するには、領収書や診断書や写真などの資料で財産的損害や怪我を証明しなければなりません。

特に怪我の治療費や交通費(ガソリン代)など事故に遭ったことで支出したお金の領収書や事故の損害に関係がある書類は必ず保管しましょう。

また事故に遭ったことで仕事を休む必要になった場合は、相手に休業損害を請求するため、給与明細や源泉徴収票などの資料を用意する必要があります。

休業損害について詳しくはこちら

【損害賠償を請求する際のポイント】

point・交通事故に遭った事で支払ったお金(治療費、通院費など)は必ず領収書をもらい保管
・怪我で入院、会社を休んだ時は休業損害の請求の為、給与明細、源泉徴収票を用意する
・交通事故による後遺障害等級の請求を考えて怪我の容態や日々の生活を常にメモしておく

項目3:加害者と被害者が加入している保険と保険の契約内容

保険を確認するイメージ写真

交通事故の示談で確定した損害賠償金は、基本的に加害者が加入している保険会社から支払われることになります。

しかし、加害者が保険に未加入だったりまたは自賠責保険にしか加入していない場合、被害者は納得のいく損害賠償金を受け取ることができません。

Q:どうして加害者が保険に未加入や自賠責保険にしか入っていないと損害賠償金が少ししか受け取れないのですか?

A:自賠責保険の支払い金額の限度が決まっているからです。限度以上の支払いの場合は加害者の自己負担になる為、加害者が音信不通になる恐れがあります。

しかし、被害者が加入している保険の中には、こういうケースに使うことができる契約内容が含まれている可能性があります。

また通勤途中や仕事中の交通事故ならば労災保険を利用したり、国民年金や厚生年金の基金を利用する選択もあります。

【保険のポイント】

point・加害者の保険の加入状態を確認する(自賠責保険だけか、未加入か)
・自身の保険内容を今一度確認する
・勤務中の場合は労災保険が、年金に加入していれば年金基金が保険の代わりに利用できるケースがある

交通事故の示談交渉で必要なテクニック7つ

項目4〜10(示談交渉中 交通事故の示談交渉時に必要な項目7点)

項目4.被害者側で計算した損害賠償額を前提に示談交渉を行う
項目5.法律と事故の証拠を中心に淡々と交渉を行う
項目6.示談交渉は口頭ではなく書面に残して行う
項目7.譲り合いの気持ちを持つ
項目8.裁判を恐れない
項目9.最後は総額で判断する
項目10.誠意を持って交渉に臨む

交通事故の示談交渉をする時に、被害者側に求められるテクニックは上記の7点です。こちらも一つずつ詳しく見ていきましょう。

項目4:被害者側で計算した損害賠償額を前提に示談交渉を行う

被害者の中には「交通事故の加害者側から誠意ある損害賠償額を提示するのが筋なのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかしそれは間違いです。

交通事故の損害賠償金額を計算するのはあくまで加害者の保険会社の担当者です。そしてその担当者は提示した損害賠償金額を少しでも下げることを目的に示談交渉を行います。

そのため、当初の時点で被害者が納得できる金額が提示される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

交通事故で発生した被害者側の損害を把握しているのは本人のみ

交通事故で、被害者側にどんな損害や怪我が発生したのかは被害者本人にしかわかりません。交通事故に遭うことで一変したであろう被害者の仕事や家族の生活などは、加害者側にはわかりません。

加害者側が提示する損害賠償金額は、過失割合や似たような事故の示談内容から算定されるのです。

被害者側から提案することで示談が早めに決着する可能性もある

被害者側が交通事故の損害賠償金額を算定し加害者側に提示することは加害者側に被害者が法的な知識を持っていることを知らせることができます。

また、被害者側が求めている損害賠償金の上限を加害者側が知ることで、支払う側は相手が提示した金額以上は請求されないだろうととらえてもらえる可能性もあります。

被害者側が求めている金額を敢えて相手に伝える事で、相手側に「これくらいなら……」と譲歩させるのです。

アシスト爺ちゃん

示談の交渉相手はあくまで加害者本人ではなく保険会社の担当者じゃ。そこを間違えてしまっては大変だから、勘違いせぬようにしないといけないのう。

項目5:法律と事故の証拠を中心に落ち着いて交渉を行う

怒りに震えながら供述する被害者の写真被害者は自身が交通事故に遭ったことで怪我や仕事の休業といった損害を受けてしまいます。被害者自身だけではなく扶養家族がいる場合は家族も打撃を受けるでしょう。

また怪我をしたことで完治するまでの間は不自由な生活を強いられる為、ストレスが溜まっていきます。精神的にも負担がかかる時期に、金銭の面で相手と冷静な交渉を行うということは、非常に難しいでしょう。

特に交通事故で家族を失ったり、自身に後遺障害が残ってしまった場合であれば被害者側の精神的なストレスの負担は倍増します。

加害者への暴言は絶対禁止

ストレスが募った被害者が感情的に加害者側を怒鳴りつけたり罵っても被害者が求める損害賠償の金額には決してなりません。

最悪の場合、被害者の罵倒に怒った保険会社側が顧問弁護士を窓口に出してしまいます。弁護士が出てくると示談交渉は被害者にとって非常に不利な未来しか見えません。

項目6:示談交渉は口頭ではなく書面に残して行う

示談交渉に必要な書類を作成しているイメージ画像

示談交渉において被害者の相手となる加害者側の保険会社の担当者は、交通事故に関する知識や経験がとても豊富のうえ、交渉の雰囲気に慣れています。

その為、直接会って交通事故の示談交渉を始めて暫くすると、いつのまにか担当者側のペースになり、思うように自分の希望を伝えられない結果になってしまうパターンがあります。

このように終始相手のペースで交渉が進行してしまっては用意した資料が無駄になる可能性もあります。これを防ぐために示談交渉は基本的に書面で行うようにしましょう。また書面に交渉の記録を残すことで、「言った」「言わない」の争いも防止することができます。

不意打ちの質問が来ても慌てず後日回答を心がける

全ての示談交渉を書面で行うことは難しい為、直接交渉を行う機会が出てくるでしょう。直接会った際に加害者側より思いがけない質問をされることもあるかもしれませんが、このような時はその場で慌てて答えてはいけません。

必ず「確認してから後日回答します」と相手に伝えましょう。内容を吟味しきちんと確認したうえで、書面で答えれば間違いはありません。

項目7:示談交渉においては双方譲り合いの気持ちを保つ

譲歩することで示談交渉が成立し和解した被害者と加害者のイメージ画像

交渉事において被害者側と加害者側の双方が納得のいく結果になることは残念ながらほぼありません。交渉の結果、双方が妥協あるいはどちらかが妥協して和解に至る形に落ち着きます。

一般的に示談交渉の支払い金額は裁判基準の7~8割で解決できれば良いと言われています。これを受け入れたうえで譲り合いの気持ちを持てば、自ずと精神的に楽になり良い交渉結果に繋がります。

もし自分の損害賠償額の請求した金額から少しも譲歩するつもりがないという被害者は、示談交渉で長期化させ続けるよりも訴訟を起こすべきでしょう。

項目8:示談から裁判になる事を恐れず強気の姿勢を崩さない

ガベルをたたく裁判官のイメージ画像保険会社の担当者から「これが納得できないのなら裁判で解決しましょう」と言われることがありますが、裁判で解決する事を恐れる必要はありません。裁判という言葉を使って揺さぶりをかけ強気の姿勢を崩させるのが相手の狙いです。

示談から裁判に移ると時間や訴訟費用がかかりますが、弁護士を雇っている場合は、勝てば弁護士費用の一部を相手に負担させる事もできるからです。

紛争斡旋機関に相談する方法も有効

また保険会社が支払基準を変更せず増額に応じない場合、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどの紛争斡旋機関の利用を検討していると伝えるのも一つの方法です。

これらの斡旋機関は基本的に一番高い裁判基準を前提に損害賠償金を計算するため、保険会社としても裁判基準で話し合いに応じるしかありません。そのため、増額に応じる可能性が出てきます。

りんね
「裁判」という言葉におびえて妥協しちゃう被害者もいるんだね。
アシスト爺ちゃん
そうじゃ。だからこそ相手はそこにつけこむんじゃよ。
りんね
「裁判になっても構いません」という気持ちで挑まないと示談で勝つのは難しいのかな?
アシスト爺ちゃん
その通りじゃ。裁判という言葉を恐れないことが重要じゃよ。

項目9:最終的には損害賠償額の総額を見て判断する

被害者の中には「示談での金額は納得できるけど、事故の過失割合に納得できないから示談に応じられない」という方がいます。

そこで交渉をストップするのは時期尚早というものです。何故ならば、保険会社のテクニックとして「交通事故の過失割合は譲歩しない代わりに慰謝料を増額して損害賠償金の全体調整を図る」という方法があるからです。

示談交渉の最終局面で示談をするか決定を下す際には、あくまでも示談の損害賠償金額の総額で判断するようにしましょう。

項目10:誠意を持って示談交渉に臨む

被害者だからといって主張が全て通るわけではありませんし、加害者側にどんな態度をとっても良いということはありません。

被害者側の主張や事情を十分理解してもらい、譲歩してもらうためには、加害者側とできるだけ友好な関係を築く必要があります。そして、そのためには、誠意を持った態度で交渉を行うことが非常に大切です。

アシスト爺ちゃん
これはあくまで「負けない」ためであって「勝てる」とは限らないんじゃよ。勝つためなら最初から弁護士に頼むのが一番おすすめじゃ。
りんね
えー!? それじゃこのテクニックの意味ないじゃん!
アシスト爺ちゃん
意味がないことはないぞ!りんねが弁護士になるならこれぐらいは知っておかないとのう。
りんね
私が弁護士に!?おじいちゃんったら!

交通事故の示談交渉は弁護士に依頼しよう!

交通事故の示談交渉で役立つテクニックについてお伝えしましたが、そもそもの前提として一般人の被害者とプロの保険会社の担当者では、交通事故に関する知識や示談交渉経験、情報や資料収集の格差が大きい事が挙げられます。

素人である被害者自身が一から資料を準備して示談交渉を行い、納得のいく損害賠償金を得られる可能性は難しいでしょう。

重要!示談交渉で自分が納得いく損害賠償金を得たいと思ったら弁護士に依頼するのが一番おすすめです。

弁護士は損害賠償額を最も高い基準で計算してくれるうえ、保険会社の対応も全て行ってくれます。弁護士費用も、弁護士費用特約に加入していれば実質ゼロ円です。

りんね
つまり自分で交渉してもいいけど、成功する可能性は低いってこと?
アシスト爺ちゃん
そうじゃな。お金がかかるからと弁護士を頼まない被害者が多いんじゃが、自分で一生懸命示談をしても、それに見合うだけのお金が貰えないことが殆どじゃ。
りんね
じゃあやっぱり最初から弁護士に依頼したほうが安心ってことだね。確か弁護士がもらえる金額って示談金に依存してるって聞いたよ。
アシスト爺ちゃん
そうそう。報酬金ってやつじゃな。そのあたりは弁護士によって異なるが、大体示談金じゃ。弁護士事務所によっては最初に払う着手金無料のところもあるぞい。
りんね
それなのにどうしてみんな嫌がるのかなぁ?
アシスト爺ちゃん
そりゃ先行イメージが強いからじゃなあ。こればっかりはどうしようもない。

まとめ・交通事故の示談交渉をする時のテクニック

交渉中のイメージ写真

交通事故における示談交渉のテクニックや注意点を見てきました。正しい法律の知識や金額、誠意をもって、冷静に、書面で進めてその場で返事をしないというテクニックなのですが、これらのテクニックを意識せずに示談の場で活用するのはとても難しいといえます。

また実際には精神的ストレスも関わっているため、焦ってしまう可能性も高いです。その為、示談交渉に臨む時には何よりも冷静になり正しい情報の取捨選択を行う事が大切です。

交通事故の被害者になった場合、示談交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!

弁護士と握手する被害者のイメージ写真

交通事故でケガを負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。

初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。

【交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット】

・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。

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