交通事故の被害者が、事故の手続きについて弁護士に依頼をした場合でも、その弁護士費用は被害者自身が負担しなければならないのでしょうか。
そうであれば事故を起こしたのは加害者なのに腑に落ちないでしょう。実は被害者側の弁護士費用は加害者に負担してもらうことが可能です。今回は被害者の弁護士費用を加害者に負担させる方法についてご紹介します。
目次
相談料、着手金、報酬金などを合わせたのが「弁護士費用」
弁護士と結ぶのは手続きや裁判の「委任」契約
弁護士に交通事故の示談などについての手続きを依頼するには「労働契約」ではなく「委任契約」を結ぶことになります。「どのような手続きを行うのか」「どのように報酬を支払うのか」は、それぞれの弁護士と結ぶ契約内容によって異なります。
しかしながら基本的な費用内容というものは、だいたい決まっているものです。弁護士費用となるものは主に「相談料」「着手金」「報酬金」になります。
弁護士費用についてのあれこれ
まず「相談料」というのは本格的に依頼する前の相談段階で発生する費用です。初回無料や相談内容によって無料とするところもあります。
次に「着手金」というのは実際に法的手続きを弁護士が引き受けて依頼者が依頼をするための費用のことです。着手金についてはおよそ10万~30万円が相場とされています。
最後に「報酬金」というのは示談などの結果、弁護士の行った手続きの成功の度合いによって金額が変わる費用のことです。
ここで注意しておきたいのは依頼人の納得がいかない結果になったとしても着手金と報酬金は支払わなければならない場合が多い点になります。弁護士と契約しているのは「手続きをしてもらうこと」であり「成功した場合に報酬を支払うこと」ではありません。
また事故の損害が大きければ大きいほど報酬金の額も大きくなります。交通事故の場合は(15万円に加えて)加害者から賠償してもらう額の8~10%が相場です。
弁護士と契約している内容について誤解の無いように確認しよう!
債務整理 | 相談料=手続きを依頼する前に弁護士に話を聞いてもらう費用(初回無料もあり) |
---|---|
任意整理 | 着手金=依頼者が手続きを成功させるために弁護士に支払う費用(弁護士はここから裁判に必要な資料を集めるためのお金を支払っていく) |
報酬金=手続き終了後、弁護士にお礼として支払う費用 |
裁判を起こす際に必ず必要になる「訴訟費用」
さらに「報酬金」の内容には訴訟手続きを含みません。基本的に示談交渉その他の手続きについての費用になるのです。
このため裁判を起こした場合には「弁護士費用」とは別途で「訴訟費用」というお金を支払わなければならないので注意が必要になります。
費用の内訳についてはそれぞれの契約によって異なりますので相談時に弁護士へ直接たずねるようにしましょう。
訴訟費用は訴える側が必ず負担する費用なので裁判を起こす際は弁護士にきちんと聞いておこう
加害者に弁護士費用を負担させるには裁判を行うしかない
示談やADRでも解決できない場合に行う「裁判」
交通事故の解決方法は主に3つの方法があります。1つ目は当事者同士での話し合いを行う「示談」です。2つ目は当事者以外の第三者が間に入って話し合いを行う「ADR(裁判外紛争解決手続)」という方法があります。最後は示談でもADRでも解決できなかった場合に裁判所に訴え出る「裁判」となります。
このうち被害者側の弁護士費用を加害者側が全額負担するよう請求できるのは実際上、裁判を起こしたときのみです。
示談やADRでも請求自体は行うことができます。しかし、どちらか一方に弁護士費用を全額負担させようとして交渉すると示談やADRが長引くうえに当事者が納得できず解決できなくなってしまうおそれがあるのです。
これは当事者間で円満に紛争が解決されることを目的とする示談やADR手続きに反してしまいます。そのため示談やADRで仮に加害者側へ弁護士費用を全額請求したとしても認められるのは損害額の1割とされるケースが非常に多い傾向です。
裁判はどちらかが良いか悪いかをはっきりさせる最後の手段
これに対し裁判では裁判官という第三者が結論を判断します。そのため請求に理由があるとされれば加害者が納得のいかないケースだったとしても弁護士費用を全額請求することが認められます。
したがって交通事故の損害が非常に大きい場合や加害者が自賠責保険にすら加入していない場合は裁判を検討する必要があるのです。
示談やADRをスムーズに進めることが困難だと予想される場合には裁判を起こして弁護士費用を請求するとよいでしょう。
弁護士費用を抑える方法はこれ
まずは「弁護士特約」に入っているか確認
「裁判までは起こしたくない」「裁判を起こすとしてもできるだけ自腹で支払う額を抑えたい」という場合は任意保険に「弁護士特約」が付帯しているかを確認してみてください。
任意保険では補償内容を充実させるため、加入者が付与したい特約を加えていくことができます。
入っているか不安な場合は弁護士に尋ねてみよう
弁護士費用特約によって弁護士費用のうち報酬金の一部まで補償されたり訴訟費用もすべて補償したりしてくれるかは、それぞれの契約内容次第です。このため契約書に書かれている内容をよく確認する必要があるでしょう。
契約書に記載されている内容がよく理解できないという方は弁護士特約を使えるかどうかを弁護士に確認してもらうと安心です。自分が納得できる結果を得たい場合には弁護士に相談することがおすすめといえます。
したがって弁護士費用特約は特に加入している保険会社に示談交渉を任せることが不安なときに活用するとよいでしょう。
弁護士費用について知って納得のいく結果を
裁判において正当な請求であると認められれば加害者に対して弁護士費用の全額を請求することは可能です。裁判を起こさなくても任意保険契約に弁護士費用特約を付帯させることで弁護士費用を抑えることができます。
また弁護士によっては相談料を無料とする場合もありますので弁護士に依頼する際には費用の内訳を確認するようにしましょう。
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