休業損害は慰謝料ではなく、事故が原因で貰えなかった収入の事
休業損害の請求には「休業損害証明書」が必要
休業損害=1日の収入×休んだ日数(事故~症状固定)
交通事故に遭ったことで入院や通院を優先し仕事を休んだ場合、その分の給料を休業損害として加害者に請求できます。
社会人、特に会社員は欠勤になると収入が減ることもある為、休業損害の請求は必須とも言えます。また有給休暇の扱いや、休業損害の計算式、請求の際に必要な書類を紹介します。
目次
交通事故被害者が請求できる休業損害は“財産的障害”|慰謝料とは別のもの
交通事故に遭った被害者が加害者に請求する賠償を「損害賠償」といいます。この損害賠償は、財産的損害と精神的損害という損害に大きく区分けされます。
一般的に、民法709条に基づく損害賠償請求では財産的損害が対象になり、民法710条に基づく損害賠償請求では精神的損害が対象になります。
請求の根拠となる法律が異なっているように、財産的損害と精神的損害は全く別の損害です。
財産的損害とは怪我の治療費や通院にかかった交通費、車の修理費など金銭で評価しやすい財産面での損失です。これに対し、精神的損害とは事故のショックや入通院することの不自由さ、死亡した場合の苦しさや残された家族の苦しみなど精神的な苦痛を金銭的に評価したもので、広く慰謝料と呼ばれています。
休業損害は貰えなかった収入なので財産的損害の中の消極損害に属する
更に財産的損害は、被害者の現実的な支出を伴う積極損害と、本来得られるはずであった収入を得られなかったという消極損害に区分されます。
休業損害は、本来勤務して収入を得られるはずだったものの、事故によって働けなかったために得られなかった収入をいい、消極損害にあたります。
財産的損害にあたる休業損害と精神的な苦痛に対して支払われる慰謝料は全く別のものです。
休業損害の「休んだ日数」=事故直後~症状固定まで
基本的に休業損害は完治、死亡、または症状固定日までの収入分だけしか支払ってもらえません。
たとえば、1月15日に事故に遭い5月31日に症状固定と診断され、7月1日まで仕事を休んだとします(このあいだの給料は一切受け取れず)。
そうすると、事故から7月1日まで収入を得られていないことになりますが、休業損害として認められるのは基本的に症状固定と診断される5月31日までの減収分です。
6月1日以降の分は「後遺障害による逸失利益」として請求していくことになるでしょう。
会社員が休業損害を請求するための手順を解説|請求時は”休業損害証明書”が必要!
交通事故の休業損害を加害者の任意保険会社に請求するには、交通事故に遭った事が原因で一定期間収入を得られなかったことを証明する資料を、任意保険会社に提出する必要があります。この資料を「休業損害証明書」と呼びます。
休業損害証明書の発行方法
休業損害証明書は、被害者自身が作成するものではなく、勤務先の社長や人事・総務担当者が作成し、記名押印をして作られるものです。
交通事故を原因として行った欠勤や早退・遅刻、有給休暇の取得、また休業期間中の給与の支給の有無、交通事故前の給与の内訳、保険給付の有無を記入してもらいます。
事故による有給休暇は休業損害に含まれる!
休業損害証明書の記載欄に有給休暇の取得があるように、年次有給休暇を取得した場合でも休業損害を受け取ることは可能です。
有給休暇はそれ自体財産的価値を有するものであり、有給休暇を取得したあとで休もうとすると欠勤扱いになり収入が減ってしまうからです。
つまり、事故に遭った被害者が入院や通院の為に有給休暇を使用した場合、その有給休暇も休業損害に入るのです。
もっとも、入院・通院のために休まざるを得なかったと証明できなければ、任意保険会社は休業損害の請求になかなか応じてくれないでしょう。
休業損害証明書と一緒に提出する書類
▼休業損害の提出書類▼
・休業損害証明書
・近年の源泉徴収票
・3か月分の給与明細表
休業損害証明書には会社の押印があるとはいえ、それを証明する客観的な資料が添付されていたほうが保険会社の信用性は増します。
そこで、スムーズに休業損害を請求したいのであれば、源泉徴収票や、勤務先の賃金台帳、交通事故前3ヵ月分の給与明細等のコピーを添付するとよいでしょう。
ボーナスも休業損害と同じように証明書が発行できる
月収の減収分だけでなく支払われなかった賞与についても、賞与減額証明書を提出すれば休業損害として支払ってもらえることがあります。
もっとも、賞与が支払われるかどうかは勤務状況だけでなく、会社の業績や業界の景気なども関係するため「交通事故に遭ったから賞与を受け取れなかった」と証明するのはなかなか難しいのが実情です。
特に、小規模な会社の上に決まった時期に決まった額の賞与が支払われていないケースでは、保険会社はなかなか支払いに応じてくれないでしょう。
休業損害の計算方法は2通り!知っておかないと請求時に不利になることも…
休業損害の計算式 | |
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自賠責基準 | 1日5,700円(上限19,000円)×休んだ日数(症状固定まで) |
弁護士基準 | 1日の基礎収入×休んだ日数(症状固定まで) |
※任意保険基準の計算式は公開されていない |
休業損害の算定方法は、慰謝料の算定方法同様に自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類があります。
休業損害はどの基準でも「1日の収入×休んだ日数」の計算式
自賠責基準では、1日あたりの収入を5,700円として休業した日数分の休業損害を割り出します。
もし給与明細などから1日5,700円を超える収入があったことが一見して明確な場合には、1日あたり1万9,000円を上限として休業損害を割り出します。
任意保険基準は外部に公表されておらず不透明ですが、証拠があれば実際の減収分の支払いに応じてもらえるはずです。
弁護士基準でも自賠責基準同様に1日の収入を基準として算定します。ですが自賠責基準とは違い、実際の収入を基準として休業損害の金額を割り出します。
3種類の基準がありますが、サラリーマンのように収入額が比較的明確なケースでは、どの基準で算定しても特に大きく変動することはないでしょう。
何故なら、5,700円と決まっている自賠責基準の場合でも、給料明細書で金額が5,700円以上だと証明できれば、弁護士基準と同等の金額になるからです。
収入から「1日の収入」を割り出す方法
▶1.(事故から遡って)3か月分の給料の合計額÷90日(3か月)
▶2.(事故から遡って)3か月分の給料の合計額÷実際に働いた日数
実際の収入から1日の収入を割り出す方法には2通りあります。
基本的な方法は、事故前3カ月の給料の合計額を90日で割り、1日当たりの収入を割り出すものです。
これに対して、事故前にほとんど働いていなかったようなケースでは、事故前3カ月の給料の総額を実際の就業日数で割ることもあります。
たとえば、事故前3ヶ月の給料額が90万円であったとして、90日で割ると1日当たり1万円ですが、30日で割ると3万円になります。
Q:事故前3か月分の給料額が90万円で、2ヶ月休んだ場合の休業損害はいくらですか? |
A:下記の計算式で60万円です。 |
弁護士基準:1日の収入額×休んだ日数
(1日の収入額:\900,000÷90=\10,000)
→10,000×60日=600,000
※自賠責基準においても給料明細書で5,700円以上の金額だと証明できれば、1日10,000円計算になる為、弁護士基準と同じ計算になる。
保険会社から「仕事に行けたはずだ!」と言われ納得できないなら弁護士に相談しよう
ある日突然交通事故に巻き込まれた被害者は、働けない状態になります。もし働けない分の補償を誰からも受け取れないとすると、事故前はサラリーマンとして働いていた被害者が路頭に迷ってしまいかねません。
そのような事態を防ぐために、被害者は加害者やその保険会社に補償の一種として休業損害を請求します。
交通事故が原因で仕事を休むことに対しての必要性・相当性については、被害者と保険会社の間で争点になりやすい箇所です。
その為、休業損害の金額に納得できない、もしくは休業損害そのものが認められない場合は、被害者自身で解決しようとせず、一度弁護士に相談するのが良いでしょう。
交通事故での休業損害を請求するにあたり、交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故で怪我を負って仕事を休んでしまって休業損害が発生した場合、休業損害の請求を弁護士に依頼することによって、休業損害を受け取れるケースがあります。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、休業損害を請求するにあたり不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【交通事故の休業損害を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方や会社に休業損害を認めさせることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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