被害者が未成年の場合、親権を持つ親が損害賠償請求権を持つ
未成年の場合、成人と違い勉強や習い事の損害も示談交渉に含まれる
未成年だと責任能力の有無で金額が変わってくる
交通事故の障害事故の場合、損害賠償請求権者は被害者本人ですが、被害者が子供や未成年だった場合は両親が請求権者になります(注1)。ここでは、被害者が子供や未成年だった場合の示談交渉の流れについて説明します。
(注1:民法・第八百十八条
成年に達しない子は、父母の親権に服する。三項:親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う)
目次
法定代理人は親
前述したように、被害者が未成年だった場合は、両親が法定代理人となり、加害者に対して示談交渉を行い、損害賠償を請求することになります。
ただし、両親が死亡していたりする場合は家庭裁判所で後見人が選任され、選任された人が法定代理人となり損害賠償請求権者となります。
示談交渉の流れ
被害者が子供や未成年だった場合、示談交渉には被害者が成人だった場合とは異なる点が何かあるのでしょうか?まずは、示談交渉の流れから見ていきましょう。
示談交渉は症状固定後から開始する
示談交渉は症状固定後からスタートするのが基本です。これは、治療中に示談交渉を行うことは精神的にも負担が大きいことと、症状固定前の治療中に示談交渉を行うと、心身に生じた被害がきちんと明らかにならないためです。
子供や未成年者が被害者の場合、示談交渉を行うのは「法定代理人」となる両親(もしくは後見人)なので、被害者本人の精神的苦痛はあまり関係ないと言えるでしょう。
しかし子供が怪我をして看護をしている最中に、示談交渉に応じてしまい話を進めるのは心身ともにに負担がかかります。
何よりも「被害の状況が明確になっていない症状固定前」に示談交渉を開始すると、後からどんな症状が現れるかわかりませんし、後遺症などが残る恐れもあるので、やはり、どんな状況においても、示談交渉は「症状固定後に行うのが最適」と言えるでしょう。
交渉相手は加害者の保険会社
示談交渉を行う相手は加害者本人ではなく、加害者の加入している保険会社の担当者と行うのが一般的です。
ただし、加害者が自賠責保険にしか加入していない場合は保健会社が示談交渉を行うサービスが付随していないので、加害者本人か、加害者が立てた弁護士と交渉を行う場合もあります。被害者側も加入している保険の担当者が交渉にあたってくれるのが一般的です。
この交渉相手も、被害者が未成年であっても成人であっても同じことです。
成人者と未成年者で異なるのは示談交渉の内容
まず、損害賠償金には「積極損害(治療費、看護費、交通費など)」と「消極損害(休業損害)」、そして、「慰謝料」、「その他(服・車などの物損)」などがあり、それを合計したものが損害賠償額になります。
成人と未成年の違いは、成人(働いている人のみ)の場合、消極損害(休業損害)が示談交渉の場にあがり、未成年(学生または習い事をしている子)には勉強の遅れや習い事の遅れを取り戻すために必要な金銭も示談交渉の場に上がるという点です。
成人者の未成年者の慰謝料の内容の違い | |
---|---|
成人者 | 消極障害(休業損害) |
未成年 | 未成年 勉強・習い事の遅れ |
死亡時の損害賠償額も就労者と未成年では異なる
また、死亡時の損害賠償額も計算方法が変わってきます。
働いている成人の場合、治療費、葬儀費用、逸失利益(本来、得られたであろう利益)、慰謝料となりますが、被害者が働いていない子供や未成年の場合は、「逸失利益」の計算が成人のものとは異なります。
「死亡逸失利益=1年当たりの基礎収入×(1-生活費控除率)×稼働可能期間に対応するライプニッツ係数(またはホフマン係数)」で算出されますが、未就労の未成年者の場合、基礎年収や就労可能年数などが不明なため、成人と同様の死亡逸失利益の計算式では金額を算出することができません。そのため、基礎収入には「平均的賃金」を用いることになり、その平均的な賃金は賃金センサスから引用されます。
また、大学進学まで達していない子供の場合は、18歳から働くということを前提に死亡逸失利益を計算します。(ただし、大学進学を目的とした進学校に通っている子供の場合は、大学卒業後から働き、大卒の平均的賃金が用いられることもある。)
上記のことを踏まえた「死亡逸失利益の計算式」は下記のようになります。
「死亡逸失利益=平均賃金×(1-0.5)×(死亡時から67歳までのライプニッツ係数(またはホフマン係数)−死亡時から18歳までのライプニッツ係数(またはホフマン係数))」となります。
このように、成人(就労者)と未成年(未就労者)では、死亡逸失利益の計算方法が異なり、金額も変わってきます。
死亡時の計算方法まとめ | |
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成人 | 死亡逸失利益=1年当たりの基礎収入×(1-生活費控除率)×稼働可能期間に対応するライプニッツ係数(またはホフマン係数) |
未成年 | 死亡逸失利益=平均賃金×(1-0.5)×(死亡時から67歳までのライプニッツ係数(またはホフマン係数)−死亡時から18歳までのライプニッツ係数(またはホフマン係数)) |
親御さんへの慰謝料も認められる
交通事故の被害に遭った場合、通常であれば本人への慰謝料が主ですが、被害に遭ったのがまだ年端もない子供で、事故によって死亡してしまった場合は、親御さんへの精神的苦痛に対する慰謝料も認められています。
必ず、認められるというわけではありませんし、慰謝料をもらってもなくなった子供さんが帰ってくるわけでもありませんが、子供を失った親御さんの精神的苦痛を考えると慰謝料は請求すべきものだと言えるのではないでしょうか?
責任能力の有無で損害賠償額は変わる
子供の交通事故というと、「飛び出し」などが頭に浮かぶ人も多いかもしれません。道路に飛び出して事故に遭うというのは「不注意」からくるものですが、2歳や3歳くらいの子供に責任能力を問うても無駄というもの。
このような場合では「過失相殺(被害者の過失による損害賠償額の減額)」にはあたらないとされています。
しかし、最高裁では「事理弁識能力(物事の良し悪しを判断する能力)」がある場合は過失相殺できると判断しています。
具体的には5歳から6歳で「事理弁識能力ある」とみなされる判例が出ています。その為、子供だからといって100%加害者が悪いということにはならない事もあるようです。
保護者にも適用される過失相殺
また、両親や祖父母など、子供を引率している大人が目を離した隙に子供が道路に飛び出したという場合も過失相殺される可能性は高いと言えます。
子供の交通事故というと、損害賠償額は高額になりそうなイメージですが、上記のように、「過失相殺」が認められると損害賠償額は大幅に減少してしまうケースも多々有ります。そうならないためにも、周りの大人が注意する必要があると言えるのではないでしょうか?
子供の事故で一番大事なのはきちんと親が目を離さずに面倒を見る事じゃのう。過失相殺になってしまうのも悲しいが、子供は何をしてしまうのかがわからんのが恐ろしいものじゃ。
賠償金額がまとまれば示談は終了
賠償金額がまとまれば示談は終了です。成人の場合も子供や未成年の場合も、交渉内容に若干の違いはあるものの、だいたいの流れはあまり変わりません。ただし、注意深く観察しておきたいのは示談交渉を行う前の「症状固定のタイミング」です。
Q:示談交渉で一番大切なのは何ですか? |
A:交渉を開始する前の「症状固定」が決まるとき、です。 |
子供は大人と違いまだ、体が未発達な部位が多いもの。事故当時は問題がなくても、のちに重大な後遺症が発覚するというケースも少なからずあります。
症状固定の時期は医師ときちんとコミュニケーションをとりながら、子供にとって最善のタイミングで行えるように注意しておきましょう。
示談が終了したらもう交渉はできない
後から後遺症が発覚しても、その時すでに示談に応じてしまっている場合は、どんなことをやっても示談のやり直しをすることはできません。
子供の一生に関わることなので、親御さんは最善の策をとる必要があります。そのためにも、交通事故に強い弁護士の力を借りるのはおすすめと言えるでしょう。
示談交渉の相手は交通事故の示談交渉を何度も経験してきたプロの保険会社です。付け焼刃の知識では到底太刀打ちできません。
子供にとってのベストを考えるのであれば、そのベストの答えを一緒になって考えてくれる弁護士にお任せするのもいい方法だと思います。
煩わしい手続きや損害賠償額が妥当かどうかといった精神的苦痛から解放され、子供の看護に集中することができますし、子供の怪我の回復にもそれがベストな選択と言えるのではないでしょうか?
交通事故の被害者が未成年や子供の場合の示談交渉のまとめ
被害者が未成年や子供の場合の示談方法を見ていきました。基本的に成人者と流れは一緒ですが、法定代理人が請求者だったり、休業損害の代わりに勉強などの遅れの請求、死亡に関する違いなど、様々なところで違ってきているのがわかります。
そして、示談交渉で最も争点になるのは「子供の責任能力」「親の監督不行き届き」です。その部分で親の過失相殺になり、思ったよりも慰謝料がもらえないこともあると思います。
成人と未成年の示談交渉の違い | |
---|---|
被害者 | 成人 |
請求者 | 本人 |
相手 | 加害者の保険会社 |
慰謝料の中身の違い | 休業損害 |
責任能力(事理弁識能力) | あり |
何より子供が事故に遭った時、冷静に示談交渉を進めることができる親はそういないでしょう。もしそうなってしまったら、下手に自分で行うよりも子供の将来のことを考えてプロである弁護士に頼んでしまったほうが楽ですし、子供につきっきりになれるという点でもかなりよい選択だと感がられます。
交通事故の被害者になった場合、示談交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故でケガを負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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