植物状態とはし尿失禁状態や自力での摂食不可など6つの項目が3か月以上続く状態を指す
加害者に請求できる賠償範囲は症状固定前か後で大きく変わる
植物状態の付き添い期間は平均寿命を用いるケースが多い
toubu
植物状態とは、頭部に深刻なダメージを負ったことでなってしまう状態で、一番重い等級認定がされる後遺障害の一つです。しかし、植物状態がどういう状態なのかイマイチわからない人も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は交通事故によって植物状態になってしまった場合について説明します。
目次
「植物状態」の定義
植物状態とは、下記の6項目に該当する状態が3ヶ月以上続く状態を指します。「遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)」ともいわれることもあります。
症状 | |
---|---|
1 | 自力で移動することができない |
2 | 自力で摂食することができない |
3 | し尿失禁状態 |
4 | 声は出せるが意味のある言葉の発声はできない |
5 | 目を明ける、手を握る等の簡単な命令には辛うじて応ずることができるが、 それ以上の意思疎通はできない |
6 | 眼球がかろうじて物を追ってもそれ以上の認識はできない |
「脳死」との違いですが、植物状態は自発呼吸ができるのですが、脳死はそれができないということです。
なお、後遺障害等級における植物状態の定義は以下の通りです。
等級 | 介護を要する後遺障害 |
---|---|
第1級 | 1.神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、「常に」介護が必要な状態 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、「常に」介護が必要な状態 |
第2級 | 1.神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、「随時」介護が必要な状態 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、「随時」介護が必要な状態 |
上記の意味では分からない人が多いと思いますので、わかりやすくかみ砕いてみたのが下記の言葉になります。
1級
被害者の自我がなく、本当に生きるためには誰か傍にいて介護をし続けなくてはいけない
2級
被害者の自我があり、食事やトイレなどの生理現象のサポートに誰かの介護が必要なこと
豆知識:「常に」と「随時」の違い |
---|
常に:常時:継続して、いつも |
加害者側に請求できる損害の項目
植物状態となった場合、加害者に請求できる賠償の範囲は、症状固定前と症状固定後では変わってくるため、注意が必要となります。
症状固定前に請求できるもの | 1 | 治療費 |
---|---|---|
2 | 入院雑費 | |
3 | 入・通院付添費 | |
4 | 交通費 | |
5 | 入・通院慰謝料 | |
6 | 休業損害 | |
症状固定後に請求できるもの | 1 | 後遺障害逸失利益 |
2 | 後遺障害慰謝料 | |
3 | 治療費 | |
4 | 将来の介護費 |
入院・通院付添費は職業付添人の場合は全額、近親者の場合は1日当たり5,500~7,000円程度が裁判基準で認められています。
職業付添人 | 近親者 | 何の請求扱いか | |
---|---|---|---|
症状固定前 | 全額 | 5,500~7,000 | 入院通院付添費 |
症状固定後 | 全額実費 | 6,500~8,500 | 将来の介護費用 |
症状固定後の将来の介護費用については、職業付添人による看護の場合は原則としては全額実費なのですが、近親者による介護の場合は1日当たり6,500円~8,500円程度が裁判基準で認められています。
基本的に、症状固定後の治療費は損害賠償で認められませんが、植物状態になったために、保存的治療を継続する必要性が認められた場合は、症状固定後であっても加害者側への治療費の請求が認められます。
付添期間=生存期間
植物状態になった場合の付添期間は、被害者が生存するであろう期間となります。しかし、保険会社によっては「植物状態になった場合、平均余命は生きられないのだから短くするべき」と主張をしてくる場合もあります。生存期間の予想は、個別に具体的な事情を基に判断せざるを得ず、裁判においても判断が分かれます。
平均余命より短い期間とするべきという見解は、重度の後遺障害が残った場合や、植物状態になった場合は健常者に比べ、生存可能な期間が短いとする統計資料を根拠にしていますが、統計資料自体が必ずしも十分なデータに基づくものではなく、信用性に疑問があります。そのため、無条件で平均寿命までの生存期間を用いるケースが多いです。
生活費の控除
後遺障害の逸失利益の算定にあたり、被害者が生存している事が前提となるため、生活費を控除することになります。しかし、植物状態にある場合は治療費、介護費用以外での支出が少なくなります。そのため、死亡の場合と同様に控除をしない、あるいは死亡の場合と近い生活費相当額を控除するべきではないかと考えられ、これを認めた裁判例もあります。
具体的な状況を加味したうえで判断される
しかし、控除されるかどうか、控除される金額は一律で決まっているわけではなく、被害者の状況を具体的に踏まえたうえで判断することになります。
例えば、被害者が自宅療養であって、食費や被服費などの支出が必要な場合は、生活費を控除するべきではありません。しかし、終身入院が確定しており、食費・衛生費・被服費などの生活に必要な費用が全て入院治療費などに含まれている場合は、生活費の支出が少ないため、控除される可能性が高くなります。
植物状態になった被害者に対する損害賠償請求のまとめ
交通事故に遭った被害者が植物状態になった場合の損害賠償請求についてみてきました。示談交渉において争点になるのは、「付き添い期間」「生存期間」と呼ばれる期間です。この部分は被害者の状態によって変動するため、示談において参考にできるケースが少ないといえます。
植物状態は後遺障害等級において1級1号の認定がされているすごく重い後遺症の一つ。そのため、植物状態を介護する関係者は精神的に疲れてきてしまう人も多いのではないでしょうか。加えて交通事故における損害賠償請求をする事で、いっぱいいっぱいになる場合が殆どです。
そのようなときにおすすめしたいのが、請求を弁護士などの専門家に任せることです。専門家に請求方面を任せてしまえば、自分たちは安心して被害者の付き添いや介護に専念することができます。まずは相談だけでもしてみてはいかがでしょうか?
ケガの治療費を保険会社へ請求するにあたり、交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故でケガを負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【交通事故の示談を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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