症状固定とは症状が現時点から改善されない状態
症状固定の日程は明確に定められていない
裁判所では主に2か月~3か月の傾向が多い
そこで今回はむち打ちの症状固定はいつぐらいが目安なのか見ていくことにします。
目次
“症状固定”とは?
むち打ちとは、交通事故による衝撃でムチを打たれたかのように首が激しく動くことによる症状をいいます。ムチ打ち症によって自律神経にダメージが与えられると、吐き気やめまい、頭痛などの症状が生じます。
もし、それらの症状が慢性化すると、投薬後しばらくの間は痛みが消えていても薬の効果が切れると同時に痛みが戻ってしまいます
症状固定=治療をしても症状の改善が見込めない状態
このように、それ以上の治療を続けても症状の改善の見込めない状態を「症状固定」と呼びます。痛みなどの症状が残るのですが、法律上、症状固定は完全治癒と並んで、ケガが治ったことを示す「治癒」に含まれます。このため、症状固定日後は治療費を加害者(保険会社)に対して請求できません。
ムチ打ちになった場合、症状固定はいつ?
ここでは、横断歩道を渡っているとき、スピード違反のバイクと接触し、腰を強く打った人の事例をご紹介します。 医師の診断は全治3日でしたが、腰に相当強い痛みがあり、リハビリが必要な状態でした。
そこで電気治療やマッサージなど整骨院でのリハビリ治療を続けていたところ、突然「症状固定」と保険会社から言われ、治療費の支払いを打ち切られました。 このケースは「リハビリ治療を受けている=症状固定」という保険会社の言いがかりによるものです。
むち打ちの症状固定の日取りは決まっていない
症状固定になるのは、もはや、それ以上の治療の効果がみられず完治が難しい場合です。もっとも、「他覚所見のない、ムチ打ちの場合事故から1カ月」「他覚所見があっても事故から最大半年で症状固定を迎える」などと明確に決まっているわけではありません。
事故後1~2週間で完治する人がいる一方で、事故後1年通院してもひどい頭痛に悩まされる人がいます。
走行速度やシートベルト着用の有無、車の状態によって衝撃の強さは異なりますし、同じ衝撃であっても年齢が高い人の方が一般的に重症化しやすい傾向にあります。
そもそも、ムチ打ちには頸椎捻挫、神経根症、バレ・リーウー症、脊髄症などいくつかの症状が含まれています。ケガの具合が違えば、当然治療に必要な期間も変わります。
医学的知識のない人の勝手な判断を鵜呑みにしない
確かに靭帯や骨など筋肉組織以外に損傷がなく単なる首の筋肉の捻挫であれば、一般に3週間程度で完治します。
しかし、靭帯や骨に影響がないかを医学的知識のない一般人が判断することは困難ですし、医師であっても判断に迷うことがあるかもしれません。少なくとも保険会社が一方的に決められるものではありません。
このため、保険会社から「そろそろ半年なので症状固定にしませんか?」などと持ち掛けられても応じる必要はありません。海外では事故から半年経過しても約3割の被害者がムチ打ち症に苦しめられていたという研究報告もあります。
個別具体的に症状固定日を判断するほかないのです。
ムチ打ちの症状が残っているのに、症状固定と言われたら?
保険会社から「治療費を打ち切ります」と言われたら、医師に「治療を続けることで症状が良くなるか」を尋ね、治療が必要だと言われれば保険会社にその旨を伝えてください。
裁判所は総じて症状固定を事故後2か月~3か月にする傾向がある
保険会社が争ってきた場合、最終的には裁判所で症状固定日を決めることになります。一般的に裁判所は事故後2~3カ月で症状固定を迎える判断をすることが多い傾向です。
しかし、その場合でも医師の意見を参考にしており、「むち打ちだから2カ月」などと画一的に決めるわけではありません。やはり、自分の状態について主治医に相談することが大切です。
裁判所の判断がわかるまできちんと通院して治療を受けるべき
裁判所が症状固定日を判断した場合、その日以降の治療費を受け取れず、自己負担となります。しかし、裁判所の判断は最後にわかるものです。通院段階ではわかりませんので、痛みがあるなら、通院を続けることをおすすめします。
通院期間の長さはケガの具合が悪いことを示す1つの資料となります。逆に通院をやめてしまうと、それを根拠に症状固定と判断されることがあります。自分の保険が利用できないかなどを含めて検討し、痛みが和らぐように治療を続けてください。
「たかがムチ打ち」では済まされない場合も…
後遺障害が残ったと認定されると、後遺症による逸失利益や慰謝料が支払われます。ムチ打ち症なら14級の「局部に神経症状を残すもの」または12級の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する可能性があります。
後遺障害の等級 | 慰謝料(自賠責基準) |
---|---|
12級「局部に頑固な神経症状を残すもの」 | 930,000 |
14級「局部に神経症状を残すもの」 | 320,000 |
むち打ちは後遺障害が認定しづらいけがの一つ
いずれにしても後遺障害として認められるには「医学的な証明」が必要です。そこで、症状固定後に後遺障害診断書を作成してもらいましょう。ムチ打ち症の後遺障害認定を受けることは、なかなか容易なことではありません。
そのため、弁護士に相談して効率的に手続きを進めると良いでしょう。弁護士費用特約の適用されるケースであれば、実質無料で弁護士に依頼することができます。
むち打ちの症状固定と治療費のまとめ
保険会社から「治療費を打ち切ります」と言われても、いつ症状固定するかを保険会社が判断するわけではないので、動揺する必要はありません。医師に「治療で症状が良くなるか」を尋ね、改善の見込みがあるなら通院を続けましょう。
症状固定は本人症状次第でわかるもの。保険会社からの言葉を安易に受け入れてはいけませんよ。
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