交通事故の三大骨折は「バンパー骨折」「ハンドル損傷」「ダッシュボード損傷」
骨折で請求できる慰謝料は「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」
骨折は入院や手術、固定の絶対安静の可能性がある為、早めに弁護士に頼んで動いてもらう
交通事故で負いやすい怪我の一つに骨折があります。骨折は軽傷に思われがちですが、骨折の部位によっては入院や手術は勿論、後遺症や手術痕が残る怪我です。
また、交通事故で体の一部分が骨折になってしまうと、ギプス固定や入院生活になってしまうため、被害者は事故の後処理を行う事が難しいでしょう。
このようなとき、被害者はどうするのか見ていきます。
目次
交通事故で起こりやすい骨折3種類とその治療法
交通事故では、事故の衝撃で腕や足などに強い衝撃が加わるので、骨折をする被害者も少なくありません。交通事故でおきやすい骨折は主に5つ存在します。
骨折の種類
骨折名 | 状態 | 治療方法 |
---|---|---|
単純骨折 | 折れた骨が体内にとどまっている | ▶ギプスによる固定 |
複雑骨折 | 折れた骨が皮膚を突き破って外に出ている | ▶手術による傷の処置、固定。 ▶ギプスや石膏による固定。 |
剥離骨折 | 筋肉などが強い力で捩じられることで腱や筋肉と骨が剥がされる。動かすことができるので捻挫や突き指と勘違いされやすい | ▶ギプスによる固定 ▶薬物療法 |
圧迫骨折 | 脊髄等の腰回りの骨の衰弱や怪我が原因で、脊椎が圧迫された状態で折れている | ▶コルセットによる固定 |
粉砕骨折 | 複数の骨折線と砕けた骨の欠片が存在する。周囲の神経等を傷つけている為、痛みも強い。 | ▶ギプス等や複数回の手術による固定 ▶固着後はリハビリ |
骨折は、段階に応じて、単純骨折(閉鎖性骨折)、複雑骨折(開放性骨折)、剥離骨折、圧迫骨折、粉砕骨折の5種類に区分できます。
その中でも粉砕骨折は、骨折のなかでも最も重い症状です。骨が粉々に砕けているため、元に戻すだけでも複数回の手術と、数年に及ぶリハビリが必要です。
骨折が多い部位として見たときには、運転中か歩行中かによって異なるものの、鎖骨、腕、肘、大腿骨が交通事故で骨折しやすい箇所だと言えます。特に鎖骨はむき出しになっているため、最も折れやすい骨の一つです。
交通事故で多い骨折①:ハンドル損傷
▶骨折箇所:肋骨・鎖骨・胸骨
とても多いのは、急ブレーキをかけたことで運転手が胸をハンドル部分で強打してろっ骨や鎖骨、胸骨を骨折する「ハンドル損傷」です。
シートベルトをしっかり着用していれば打撲程度で済むケースもありますが、酷いものでは内臓の損傷を伴い、呼吸障害も引き起こされます。
ハンドル損傷の治療は安静→リハビリや電流療法
ハンドル損傷の治療では、まず安静にして炎症を落ち着かせます。炎症が落ち着き次第リハビリを行います。炎症の軽減を目的とした、自己治癒力を促進させる微弱電流療法を施すこともあります。
交通事故で多い骨折②:バンパー骨折(大腿骨遠位骨折)
▶骨折箇所:大腿骨・膝の骨折
また、歩行者と自動車の接触事故では、車のバンパーの部分が歩行者の膝にぶつかり、骨折するケースも多数見られます。
診断名は大腿骨遠位骨折などですが、その発生過程に着目して通称「バンパー骨折」と呼ばれています。
事故の後に太ももが痛くなり足が動かせなくなった場合はバンパー骨折を疑ったほうが良いと思います。
バンパー骨折の治療
一般的にバンパー骨折の治療は、機能障害や股関節の拘縮を防ぐため体内にプレートやネジを入れる接着の手術が行われます。他にも骨の中に釘を打ち込んで固定する治療があります。
また、太ももと膝の部分の骨折の為、徒歩や筋力回復のリハビリは欠かせません。バンパー骨折は後遺症が残る骨折の一つの為、注意が必要です。
交通事故で多い骨折③:ダッシュボード損傷(膝蓋骨骨折)
▶骨折箇所:膝蓋骨(いわゆる、「膝の皿」)
また、足の骨折のなかでも多いのが転倒した際に膝から着地した時などによく起こる「ダッシュボード損傷(膝蓋骨骨折)」です。
膝蓋骨は膝の動きを滑らかにする役目を持つため、この骨が折れると膝全体に影響が及びます。主に膝が腫れたり、全く動かせない状態に陥ります。
ダッシュボード損傷の治療
ギプスによって3、4週間固定する保存的治療が存在します。この治療になると手術をせず、膝を真っすぐ伸ばした状態で固定し、経過を見る事になります。
骨がくっついた後に曲げ伸ばしのリハビリを行います。また、手術の場合は細い針金を用います。針金で膝蓋骨を巻き、固定する手術です。
骨折したケースで受け取れる可能性があるのは“入通院慰謝料”と“後遺障害慰謝料”
交通事故の怪我が骨折になると、その骨折の内容によっては手術をしたり、骨がくっつくまでギプスで固定させるために入院することになります。
折れた骨がくっついた後も筋肉や徒歩や体の運動のリハビリを行う事になるでしょう。
骨折によって芽生えた精神的苦痛が慰謝料になる
入院することは、仕事を休まなければならない上に体を固定していることから不自由な生活を被害者の余儀なく強いられることになります。その期間被害者は入院や通院に精神的な苦痛を伴う事になります。
その為、被害者には怪我の治療期間(入院や通院)に応じた入通院慰謝料が支払われます。入通院慰謝料の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類があります。
入通院慰謝料:自賠責基準の場合
自賠責基準の計算 |
---|
1日4,200円×(治療期間or実通院日数×2 の少ない数字をかける) |
自賠責基準は、被害者救済のために加害者側の自賠責保険会社から支払われる保険金を最低限の範囲で算出するもので、1日につき4,200円が支払われます。
しかし「最低限」というからには無制限に支払われるわけではなく、上限は120万円です。
計算方法は治療期間(事故~症状固定or完治日までの全日数)と実通院数(実際に入院と通院した日数)×2倍した数字のうち、少ないほうを、1日4,200円の慰謝料とかけます。
Q:骨折で症状固定日まで1年かかった場合の入通院慰謝料は?(実際の入院は1か月、実際に通院した日数は100日とする) |
A:下記の計算で1,092,000円です。 |
治療期間=365日 > 実通院数=130日×2=260日
→少ないのは260日の実通院数
4,200×320=1,092,000
また、事故の1年後も通院していたとしても実際には月に1度のペースでしか通院していなかった場合、1年分の入通院慰謝料ではなく実際に通院した日数分の慰謝料しか支払われないケースもあります。
入通院慰謝料:任意保険基準・弁護士基準の場合
弁護士基準の計算方法 |
---|
入院・通院した月数を赤い本の算定表(別表)にあてはめる。 |
任意保険基準はそれぞれの保険会社が独自に有しているもので、はっきりとしたことはわかりません。
一方、弁護士基準は過去の裁判例の蓄積から割り出された慰謝料の相場で『赤い本』の別表に自分の入院日数・通院月数をあてはめて(縦軸が通院、横軸が入院)、算定されます(むち打ちなどの軽傷の場合と骨折などの重傷の場合で表が分かれているのが特徴です)
ただ、この赤い本は一般の書店では売られていない為、注意が必要です。
後遺障害の場合
骨折の種類で必要な治療や治療期間は自ずと異なってくるので、慰謝料の金額は変わるでしょう。加えて、骨折は打ちどころやその後のリハビリによっては後遺症として残ってしまうものがあり、その後遺症の具合によって後遺障害慰謝料が程度に応じて支払われることになります。
また、後遺障害慰謝料は後遺障害等級の認定を受けた怪我に対して支払われます。後遺障害等級は症状固定の診断を受けた後に、加害者側の保険会社に診断書や資料を提出して、認定の結果を待ちます。
骨折に多い後遺障害
欠損損害 | 体(腕や足)の一部分や全部を失う |
短縮障害 | 足や腕の長さが事故前に比べて短くなる |
機能障害 | 骨がうまくくっつかなかった為関節の動きに制限が入っている |
変形障害 | 骨折した部分がくっつかず、結果として腕や足が曲がっている |
神経障害 | 骨折した部分に痛みや痺れ等が残っている |
骨折で多くみられる後遺障害は欠損損害、短縮障害、機能障害、変形障害、神経障害の5つです。どの障害もかなり重い後遺症の扱いになります。
たとえば、骨折によって足や腕を失ってしまったときには、欠損障害として1級、2級、4級、5級、7級の後遺障害等級認定を得られる可能性があります。欠損障害の場合の金額は下記の表に記載しています。
後遺障害慰謝料の金額の違い
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | ¥11,000,000 | ¥28,000,000 |
2級 | ¥9,580,000 | ¥23,700,000 |
4級 | ¥7,120,000 | ¥16,700,000 |
5級 | ¥5,990,000 | ¥11,800,000 |
7級 | ¥4,090,000 | ¥10,000,000 |
14級 | ¥320,000 | ¥1,100,000 |
後遺障害慰謝料は等級によって慰謝料の相場が決まっており、ほぼ固定金額です。
しかし基準ごとに金額の違いは存在しており、一番等級が低い14級でも自賠責基準は32万円に対し弁護士基準は110万円と、実に3倍近くの差があるのです。(任意保険基準は保険会社によってまちまちです)
骨折した被害者が遅れをとらないために!早めに弁護士に相談するべき3つの理由
☆早期から弁護士に相談するのがおすすめな理由3点☆
1 後遺障害等級の認定を視野に入れる
2 証拠集めが難しく、後手に回ってしまう
3 自賠責基準で計算した慰謝料を保険会社が提案してくるため
交通事故が原因で骨折をした場合、弁護士に早めに慰謝料を含めた示談の相談をしたほうが良いでしょう。
その1:後遺障害等級の申請を視野に入れるため
骨折の怪我を後遺障害として認められるためには事故直後の診察の時点でCTやMRI検査などを受けておいたほうがよいでしょう。場合によっては事故直後の対応のまずさから思うような等級認定を得られないこともあります。
上記の後遺障害慰謝料の表のように、等級が違うだけでもかなりの金額の差がありますし、弁護士に依頼すれば一番高い弁護士基準での請求ができるのです。
このため、早いうちから弁護士の法的アドバイスを受けておいたほうがいいのです。
その2:被害者が入院している場合、証拠集めが難しいため
また、被害者と加害者の間で事故の内容に争いがあるときには目撃者を探すなど証拠を収集すべきですが、入院中の被害者はギプスや手術の後の絶対安静もあり、動くことができず、証拠収集で後れを取りかねません。
このため、示談交渉や後遺障害等級申請の際に被害者側に有利な証拠が取れず、思った以上に少ない損害賠償の金額による示談でまとまってしまうこともあるのです。
その3:保険会社が自賠責基準の慰謝料を提示してくるため
保険会社のなかには入通院慰謝料を自賠責基準の上限120万円を超えないうちに示談をまとめようとしてくるところもあるので、被害者が事故による適正な示談金を受け取れない可能性があります。
弁護士基準で算定された慰謝料は自賠責基準の2倍~3倍近い金額の差になります。自賠責基準の入通院慰謝料は上限が決まっているのに対し弁護士基準には上限がありません。
骨折を伴うケースでは被害者が自ら動くには限界が……早く弁護士に依頼しよう!
交通事故は人の死を招く危険性さえ秘めたもので、腕や足などの骨折を伴うケースは多数あります。
入院を伴う骨折を負った場合、被害者が自ら動くには限界があり、示談金額も高額になると見込まれるので、なるべく早く弁護士から法的アドバイスを受けたほうがスムーズに進められるでしょう。
無料相談で「交通事故の示談金の目安はいくらになりますか?」などと尋ねるとおおよそいくらになるのか目安がわかるはずです。
ケガの治療費を保険会社へ請求するにあたり、交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故でケガを負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット】
・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。
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