症状固定後の通院時に知っておきたい!治療費の支払いで使える2つの保険

公開日:2019/07/16
最終更新日:2019/07/23

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交通事故の被害者が症状固定後も通院して怪我の診察をしている写真

 症状固定後の治療費は原則として被害者の自己負担

 治療費の支払いに利用できる保険は「健康保険」と「労災保険」の2つ

 症状固定後でも治療が必要だと認められれば治療費が支払われるケースがある

ナビ夫

一般的に、交通事故の加害者側の保険会社が被害者の怪我の治療費を負担するのは症状固定になるまでと言われています。
症状固定とは、怪我が完治せず後遺症が残った状態の事を指す為、被害者の中には定期的に診察を受ける人もいるでしょう。今回は症状固定後の治療費代の支払い方や通院について解説していきます。

症状固定とはどういうものか?

交通事故に遭ってショックを受ける被害者のイメージ画像

症状固定とは、治療を続けても完治はせず、症状の改善がこれ以上見込めない状態のことです。
交通事故で負った怪我は完治するものもあれば、完治せずに後遺障害が残ることもあります。交通事故によって発生した損害として認められる怪我の治療費は、怪我の回復に必要とされる治療に限られます。

症状固定を判断するのは保険会社ではなく担当の主治医と被害者自身

なお加害者側の保険会社から、ある程度の期間が経過すると「そろそろ症状固定を行いませんか」と言って治療費の支給を打ち切ろうとするケースがあります。
しかし、怪我の症状固定を判断するのは保険会社ではなく、被害者の怪我を治療している主治医ですので、その場で返事をしないように注意しましょう。

主治医が「もう治る見込みもないから症状固定にしよう」という判断を行い、これを被害者が受け入れた時点で症状固定は確定します。この確定した日が「症状固定日」です。
つまり症状固定の最終的な決定は、被害者が判断することとなります。

症状固定後の通院費用は原則自己負担!

交通事故の治療費を計算する電卓の写真

今まで保険会社が支払っていた治療費は、症状固定後は支払われなくなります。もちろん、これはあくまで保険会社が治療費を払わなくなるだけであって、症状固定後も被害者が通院することを禁止するものではありません。
ただし原則として、症状固定後にかかった治療費は自己負担となり、損害賠償の対象外になるので注意が必要です。

症状固定前後で請求できる損害の種類が変わる!

怪我の症状が症状固定なのが明らかであるにもかかわらず症状固定日を先延ばしした場合、示談交渉の場において治療費の支払いが認められなくなる場合があります。

その理由の一つが、症状固定の前後で相手側に請求できる損害賠償の内容が変わることです。(下記イラスト参照)

症状固定前後で請求できる損害の種類

この「傷害部分」と「後遺障害部分」の境目をつくりそれぞれの費用を確定させるのが症状固定日のため、あやふやなままでは治療費や休業損害などの請求が難しいでしょう。

したがって症状固定日は治療費の損得で決めるのではなく、あくまで医師の判断に基づいて確定させるようにしましょう。

症状固定後の通院で利用できる2つの保険

症状固定となり、加害者側の保険会社からの治療費の支払いが止まって治療費が自己負担になっても通院を続ける被害者もいる筈です。自己負担で支払う場合、何もしないままでいると保険会社が支払っていた自由診療で支払う事になる為、注意が必要です。

 自己負担割合治療内容
保険診療10~30%制限あり
(国が認定した治療・薬のみ)
自由診療100%制限なし
(最先端の治療・新薬投与可能)

したがって症状固定後に通院する場合は、必ず健康保険への切り替え手続きを行ってから通院しましょう。
症状固定後の通院で利用できる保険は主に二つ存在します。

保険①:健康保険(社保・国保)

交通事故の治療における健康保険のメリット・デメリット

上記のように、症状固定後の通院において、健康保険(社保や国保)が利用できます。
健康保険を使うメリットは、治療費の自己負担額が約1~3割で済むことです。特に損害賠償の請求前で経済的な負担を少しでも軽減したい場合は、大きなメリットとなるでしょう。

他にも治療費を抑えられるため、慰謝料そのものが増額する可能性があります。

一方、デメリットとしては、自由診療ができないため治療方法が限られるという点や、医師が嫌がる点が挙げられます。
つまり怪我の状況によっては自由診療と健康保険による保険治療のどちらがより効果が高いかを判断することも大切です。

健康保険を利用する際の手続き

健康保険を利用する際の手続きについて説明している画像

手順の最初に被害者は、加入している保険組合(保険証を確認)に対して、事故に遭って治療を行っていることを連絡します。すると「第三者行為による傷病届」を提出するよう求められます。この届出を出さなければ保険証が適用されない為、症状固定だと判断したタイミングで届出を提出しておきましょう。

また、加入している保険組合によって提出する書類にばらつきがある為、必ず保険組合に連絡を取り確認を取るようにしましょう。

提出する書類(協会けんぽの場合)
・交通事故、自損事故、第三者(他人)等の行為による傷病(事故)届
・負傷原因報告書
・事故発生状況報告書
・同意書
・損害賠償金納付確約書・念書
・交通事故証明書
※物損事故の場合は「人身事故証明書入手不能理由書」

必要書類一覧(協会けんぽ編)はこちら

書類の書き方(協会けんぽ編)はこちら

交通事故で健康保険を利用する場合は、保険組合に第三者行為による傷病届を提出する必要があります。これは加害者の行為によって傷病を負ったことを示す届出であり、おって健康保険組合が立替払いした治療費を加害者側へ請求するために必要な書類です。

届出では治療状況や加害者の保険加入状況等を記載するだけではなく、事故発生状況報告書や交通事故証明書などを添付する必要があります。

また損害賠償金納付確約書・念書は加害者に記入してもらう書類ですが、加害者と揉めていたり加害者が記入を拒否した場合など、この確約書(念書)がなくても健康保険の適用が可能です。

保険②:労災保険

もし、交通事故に遭ったのが業務中や通勤中であった場合は、健康保険は利用できません。

この場合は労災保険を利用することになります。(もし誤って健康保険を使用したとしても、労災保険に切り替えが可能です)

労災保険のメリットは、労災指定病院で治療を受けた場合、治療費の自己負担が不要であることです。

無料で治療を受けられるので、経済的な負担を気にすることなく、安心して通院できます。

労災保険にも症状固定後の後遺障害等級も存在しますが、自賠責保険とは全くの別物になる為、互換がありません。

労災保険のデメリット:条件が業務のみ・自賠責保険との併用が不可

またデメリットを挙げるならば、労災保険は業務中や通勤中に発生した交通事故のみにしか利用できないことや自賠責保険(任意保険)との併用が不可のため、
自賠責保険(任意保険)をとるか労災保険をとるか、のどちらかになります。

労災指定病院以外の病院で治療を受けた場合は、治療費は被害者がいったん立て替えておき、後日、労災保険へ治療費を請求する必要があります。

労災保険の基本的な情報については下記の記事にも詳細が書かれているのでご覧ください。

 

症状固定後に治療費の支払いが認められるケース

症状固定後であったとしても、治療費の支払いが例外的に認められる場合があります。
認められるかどうかのポイントは、その治療が被害者にとって必要かつ相当なものであると証明できることです。

特定の治療をしないと現状を維持できないケースが治療費を認められやすい

治療費が認められやすいケースの一例

■リハビリテーションを続けなければ症状が悪化する
■継続的な介護がなければ動けない
■使い捨ての医療器具が必要

たとえば、症状固定後にリハビリテーションを行わなければ症状が悪化してしまう場合、リハビリテーションにかかった費用が認められることもあります。

また、継続的に介護が必要なほど重症な場合や、医療器具や介護用品の作成や取り換えが必要となる場合は、これにかかる費用が例外的に認められる可能性もあります。

治療費が認められた場合に備えて、領収書(レシート)はとっておくことが大切です。

症状固定後の対応は弁護士への相談がおすすめ

症状固定後の治療が被害者にとって必要かつ相当なものであることを立証するのは、なかなか難しいものです。必要性や妥当性を認めてもらうためには、医学的な知識を前提としての立証を必要とします。

交通事故に強い弁護士を探すコツ

そのため、専門的な知識や情報を持っていない人にとっては険しい道のりとなるでしょう。なお交通事故については、これらに精通した弁護士が多く存在します。
専門的な知識や経験をもとに立証してくれるので、ひとりでは難しいと感じた場合は弁護士に相談してみましょう。

まとめ・症状固定後の通院は自己負担だが保険を使うようにしよう

症状固定後の治療費は、原則として自己負担です。できるだけ経済的な負担を軽減するためにも、健康保険の切り替えや業務中の事故であれば労災保険を利用するようにしましょう。
たとえ症状固定後であったとしても、治療が必要なものであると証明できた場合は、治療費の支払いが認められることもあります。
しかし治療費の必要性の立証はなかなか難しいため、困った場合は弁護士へ相談することも検討してみてください。

症状固定と診断されたら、その後の後遺障害等級の申請や示談交渉に関して弁護士へ相談するのがおすすめです!

交通事故でケガを負い、その治療が長期に渡ると症状固定と診断されることがあります。特に相手方の保険会社から症状固定と診断されると、その後の治療費を打ち切られる場合もあるため、一度弁護士へ相談することをおすすめします。

初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。

【症状固定に関して弁護士に相談するメリット】

・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・弁護士に依頼することにより、後遺障害認定に関する手続きをスムーズに行い、かつ『弁護士基準』で後遺障害慰謝料を請求できる。
・ケガをしている中で、交渉にかかる心理的な負担が省ける。

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交通事故でけがをした場合、症状固定までにかかる期間は、加害者に対して請求する治療費に影響します。

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