事故の治療と回復に因果関係がある場合、医師への謝礼が損害賠償として含まれるケースがある
適用されるのは医師への謝礼のみであり、接待費などは認められない
医師への謝礼を渡す必要性がないと賠償請求としては難しい
目次
医師への謝礼は賠償の対象となるのか
交通事故における損害賠償は、ケガの治療そのものにかかった費用に対してのものであり、治療を担当した医師への謝礼は、損害賠償には含まれないと考えてしまいがちです。
必要なのは因果関係
しかし、交通事故によるケガが医師の的確な治療により、回復までの期間が通常より短く済んだなどの事情があった場合、被害者が医師にお礼をしたいと考えるのは自然なことです。また、早期に治療が済んだことにより、治療費や通院の際の交通費などの費用が通常より少なくなるため、加害者側の負担も軽減されることになります。
つまり、的確な治療と早期の回復の間に、直接の関係がある、つまり因果関係が認められた場合には、医師への謝礼も損害賠償の一部として認められることがあります。
・医師による適切な治療のおかげで予想以上に回復できた、
早く退院できた=この早い完治はこの医師でなければ無理だった
・医師のおかげで一命をとりとめた=医師が適切な処理をしてくれなければ自分は死んでしまっていた
というような関連や因果関係があれば、損害賠償の中に医師へのお礼も含まれる。
損害賠償として認められる金額の相場
裁判所においても、医師への謝礼は社会通念上で妥当な金額である限り損害として認める傾向にあります。ちなみに、社会通念上で妥当な金額としては、数千円~数万円程度です。
しかし、入院中の見舞い客に対してのお礼や快気祝い、接待費などについての費用は、ケガを負ったことにより必要となる費用とは考えづらいため、損害賠償として認められません。
損害賠償として認められない場合も
一般的には、妥当な範囲であれば認められている医師への謝礼ですが、裁判で認められなかった例もあり、必ずしも認められるとは限りません。
認められなかった理由としては、「そもそも謝礼とは、被害者が感謝の気持ちを表現するものであり、その気持ちを損害賠償として加害者に請求するのはおかしい」といった意見や「公的機関の医師が謝礼を受け取ることは、賄賂を受け取ることであり、それを認めるのはおかしい」などの加害者側の意見が認められたケースです。
謝礼を渡す必要性の証明が求められる
しかし、担当医師のお陰で一命を取り留めることができた場合や、担当医師が被害者の為に医療機関を探し、その結果ケガが早く完治した場合などは、損害内容として謝礼が認められる可能性は高いです。
加害者側の保険会社の立場としては、保険金を少しでも減らしたいという気持ちが当然あるので、示談交渉の際に、医師への謝礼を損害として認めるどうかについて、否定的な意見を主張してくる可能性はあります。そのため、謝礼を損害賠償として請求する場合、謝礼の必要性を主張できるようにしておくことが大事です。
まとめ・医師への謝礼は損害賠償として請求できるケースもある
医師への謝礼は果たして損害賠償に含まれることができるのか―――こちらを今回は見てきました。基本的にすべてケースバイケースで、事故と治療の因果関係が立証されれば損害賠償として認定されやすい出費といえます。
ですがだからといって全部全部損害賠償として認められるはずもなければ、認められたからと言って金額も十万単位のものを渡すのは常識的に考えておかしいといえます。
また、加害者側の保険会社も余計な出費や保険料を払いたくないという気持ちがあるため、「それはおかしい」といった意見を提示してくることは大いにあり得ます。その為、もし謝礼金を損害賠償に含める話の場合は、その謝礼金の存在意義をきちんと立証できるようにしておきましょう。
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