むち打ち診断直後は絶対安静
安定してきたら理学療法
病院で治らなければ接骨院という手も
ムチ打ちは交通事故でよくある怪我のひとつですが、事故直後にはあまり症状が出ない怪我でもあります。「そんなに痛くないし大丈夫」と過信していると翌日、または数日後に思いもよらない痛みに襲われたり、手が痺れてきたりといった症状に見舞われることがあるので、「痛みを待たずに病院に行く」ことが非常に大切だと言われています。
しかしむち打ちだと診断されたらどうすればいいのかわからない人も多いはず。そこで今回はむち打ちの流れと治療方法についてみていくことにします。
ムチ打ちかなと思ったら、まずは病院で検査
とにかく、交通事故の被害に遭ったら病院に行って検査を受けることが重要です。体に痛みや違和感などがなくても、何らかの怪我を負っている可能性は捨て切れません。
それこそ、ムチ打ちだけでなく、脳出血など自分でも自覚症状のない怪我を負っている危険性もあるのです。
事故直後は興奮状態にあるため、痛みを感じにくいと言われています。また、受傷直後の検査を怠ると後遺障害などを残すことも考えられるので、まずは念入りに検査をしてもらうことが必要となってきます。
病院でムチ打ちと診断されたら
様々な検査を経て「ムチ打ち」と診断されたら治療の開始です。ムチ打ちの一番の治療法は「絶対安静」。とにかく首を動かさない、刺激を与えないというのがムチ打ち治療の第一段階となります。
ムチ打ちになった人を思い浮かべるとみんな首に「頸椎カラー(首用コルセット)」を巻いている人をイメージしませんか?
これは首をむやみに動かさないためのもの。意識的に動かさないようにしていても動いてしまうのが首です。そのため、強制的に固定してしまうのが効果的な治療法になるというわけですね。
ムチ打ちは「頚椎捻挫」とも呼ばれるものですから、基本的には普通の捻挫治療と同じことが行われます。「冷やす」のも治療のひとつ。患部に湿布を貼ったりするのも通常のムチ打ち治療の一環です。
あまりにも痛みがひどいと薬を出されることも
また、痛みが酷い場合は痛み止めの注射や痛み止めの薬を処方されることもあります。その他には胃の働きを良くする健胃剤とビタミン剤の処方が一般的とされています。
健胃剤は痛み止めの服用で胃を荒らさないようにするためのもので、ビタミン剤(ビタミンB12)は末梢神経の修復に必要な栄養素として処方されます。
痛み止め、健胃剤、ビタミン剤のセットが一般的なムチ打ち治療の処方薬ですが、患者それぞれの病状に合わせて、筋弛緩剤や向精神薬、脳代謝賦活剤、抗ヒスタミン薬などが処方されることもあります。
受傷後3〜4週間過ぎたら「理学療法」を開始
病院の整形外科で受ける理学療法は物理療法と牽引療法が主体となります。物理療法は温熱療法が主体で、鎮痛効果や血行改善効果、筋弛緩効果があるとされており、ムチ打ちによる痛みの改善などに効果的です。
温熱療法は各病院によって、温水や赤外線、ホットパック、パラフィンなど治療方法は様々。患部を温めるということにはかわりないので、医師の指示に従い治療を受けましょう。
牽引療法は電動間欠牽引(マシンを使っての牽引)によって神経の圧迫をなくしたり、頸部周辺のストレッチングを行う療法のことです。
物理療法……温熱療法(幹部を温めて痛みを和らげていく)
牽引療法…マシンを使って引っ張ることで神経の圧迫感の軽減や頸部のストレッチをしていく
以上のものが整形外科で行われる一般的なムチ打ち治療です。しかし、病院でのこれらの治療ではなかなか症状が良くならない…という方もいらっしゃいます。そういう場合は整骨院や鍼灸院院へ行ってみるのもおすすめです。
整骨院や鍼灸院でも「自賠責保険」は使える
病院が行う治療はいわゆる西洋医学に基づいたもの、対して整骨院や鍼灸院で行う治療は東洋医学に基づくものです。
病院治療……西洋医学
整骨院・鍼灸院…東洋医学
軽度のムチ打ちの場合、ほとんどの人が病院の治療だけで完治しますが、中には病院の治療だけでは思うような回復が見られないというケースも。
そんな方には病院での治療と整骨院や鍼灸院院での治療を並行して行うことをおすすめします。
ただし、注意しなければいけない点は、「まずは病院で治療を受ける」というところ。首はとてもデリケートな部位。受傷直後は絶対安静が基本のムチ打ちの場合、下手にマッサージや刺激を受けることで症状を悪化させてしまう可能性が高まります。
整骨院や鍼灸院に行くタイミングも医師と相談することができるような信頼関係を築くことがベストといえるでしょう。
後遺障害診断書は医師でないと書けない
また、軽症だと思っていたものが実は思ったよりも重症で、後遺認定を受ける必要が出てきた場合、整骨院や鍼灸院師では「後遺障害診断書」を書くことができません。
Q:なぜ整骨院や鍼灸院の先生では診断書を書けないんですか? |
A:彼らは「医者」ではないからです。 |
このように医師ではないため「治療」ではなく「施術」と認定されてしまいます。そのため受けているのは医療行為ではなく、施術という扱いになってしまい、治療を受けていないということにされてしまうのです。
ですので、まずは病院に行くのが先決です。レントゲンやCT、MRIといった画像診断をきちんと受けたうえで、病院での治療を優先することが重要といえるでしょう。
日本の法律では「医者が行う医療行為=治療」という扱いになっています。
自賠責保険で施術料は支払う必要はありませんが、後で問題が起きた場合、整骨院や鍼灸院だけに通っていたら「後遺障害認定」をもらうのは難しいと考えていた方がいいでしょう。
整骨院や鍼灸院ばかり通院していると……
さらに、病院にほとんど通わず整骨院や鍼灸院を中心にしていた場合も難しいと言わざるをえません。それは、担当医にもよりますが、「あんまり診ていない患者の後遺障害診断書は書けない」という医師もいらっしゃるからです。
医師に後遺障害診断書が書けないと言われてしまってはお手上げです。
転院して新しい病院で後遺障害診断書を書いてもらうという方法もありますが、受傷直後から症状を診ているわけではないので、きちんとした後遺障害診断書を書いてもらえる保証は残念ながらありません。
「国家資格」に注意!
病院以外での症状改善を望む場合は「国家資格の有無」に注意しましょう。柔道整復師は国家資格ですが、カイロプラクティックなどを行っているところは「柔道整体師」という資格を持ったスタッフが行っているところで、国家資格ではなく、民間の資格になります。
また、鍼灸院は「はり師」と「きゅう師」ふたつの国家資格を持った先生が施術を行う施設です。
なぜ、国家資格の有無が重要なのかというと、国家資格を持たない施設での施術では自賠責保険が適用されないからです。
自賠責保険が適用されないということはすべてが自費となってしまいます。「交通事故・保険適用」というのぼりを立てている整体院やカイロプラクティック院なども多く見かけますが、通院するかどうかを決める時には、きちんと国家資格を有しているところなのかどうかをリサーチしてから通う必要があるといえるでしょう。
国家資格である | 国家資格ではない |
・柔道整復師 | ・カイロプラクティック師 |
さらに、国家資格を有している施設での施術を受けたとしても保険会社によっては施術代を支払わないというケースもあるようなので、病院と並行して整骨院や鍼灸院に通いたい場合は、保険会社に連絡を入れて事前に自賠責保険が適用されるのかどうかを確認してから通うのがベストと言えます。
整骨院での治療
整骨院での治療は主に、患者一人ひとりの症状に合わせて行われるのが基本です。カウンセリング(問診)を行い、どこがどう痛いのか、違和感があるのかを丁寧に聞いてから適切な施術を行います。
マッサージや超音波治療、電気療法、冷温法、テーピングなどの中から患者に最適な施術を選んで行われるのが基本。
痛みや違和感のある患部だけでなく、全身をトータル的にケアすることで症状の改善が見込める、症状が緩和するとされており、ムチ打ち症で悩んでいる方々の多くが整骨院の施術で痛みが和らいだという実感を述べているのも事実です。
鍼灸院での治療
東洋医学でムチ打ち症は「痺症」と認識されています。「痺」とは詰まって通りが悪くなっているという意味の言葉です。
鍼灸院で行われる施術はその通りが悪くなっている箇所(ツボなど)に針やお灸を行い、巡りを良くする効果を期待することができます。
自分に合った治療方法を選択しましょう
病院でも整骨院でも鍼灸院でもどこで治療を受けるのかは、痛みを抱えた患者次第です。病院での治療で症状が改善できるのであればそれに越したことはありませんが、病院に通っても症状に改善がみられない場合は、その他の方法を考えても構いません。
大切なのは、「早く良くなって普通の生活を取り戻すこと」です。そのためにはどうしたらいいのかを考えて治療を受けるのがベストな選択といえるでしょう。
ただし、交通事故の被害者であることは忘れてはいけません。治療の選択にしろ何にしろ、自分がこれ以上の被害や不利益を被らないためにも、リサーチすること、そして、きちんと医師に相談すること、保険会社に相談することも重要なことです。
ひとつのプロセスを省くことによって、損をしてしまうことも少なくないのですから…。
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