てんかんは似た疾患が多いため誤った診断も多い脳疾患のひとつ
てんかん診断は「病歴」「発作の状況」「検査企画」の情報が必須
てんかんには多数の種類がある
てんかんとは、大脳ニュートロンの過剰な突発的発射に由来する反復性のてんかん発作を主徴とする慢性の脳疾患と定義されています。なお、大脳ニュートロンの過剰な発射に由来しない状況関連性発作は除外されます。
ここでは、てんかんについて、日本てんかん学芸ガイドライン作成委員会報告にしたがって詳しく説明します。
目次
てんかんの診断について
てんかんの診断
てんかんは、医師を始めとした多くの医療従事者が係わる疾患ですが、てんかんに似た疾患や状態が多いため、専門以外の医師によって誤った診断がされるケースが多いと言われています。
てんかんの診断は、診断をするために必要な知識や経験がある医師がするべきであり、内容的には、診断だけでなく、てんかんの分類までできなければ不十分だと考えられています。
てんかんの診断においては、以下に述べるような発作の方の特定や、脳波検査が重要であり、MRIやCTなどの画像診断は発作の原因などを判断するためには非常に有効です。
てんかん診断に必須の事項
まず第一に、情報の収集が重要になります。下記の情報を十分に収集し、発作の現場を目撃することが、てんかんの診断には最も有効であると言えます。
- 「病歴」…既往歴・現病歴・家族歴・出産歴・職歴など
- 「発作の状況」…起始部・左右差・意識状態・持続時間・経過など
- 「検査計画」…脳波・ビデオ-脳波・神経画像など
また、大脳ニュートロンの過剰な発射に由来しない状況関連性発作を除外する必要があります。子どもと成人では状態が若干異なりますが、成人で言えば脳卒中や一過性脳虚血発作など急性の脱落症状がてんかん発作に類似している場合もあります。
そのため、原疾患を考慮し、慢性の脳疾患としてのてんかんに起因する発作であるか見極める必要があります。以下はてんかんと見誤りやすい状況関連性発作になります。
子ども |
熱性けいれん、息止め発作、軽症下痢に伴う発作、睡眠時(入眠時)ぴくつき、悪夢、 かんしゃく、チック、失神、心因発作、急性代謝障害(低血糖、テタニー) |
成人 |
失神、心因発作、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、脳虚血発作、不整脈発作、頭部外傷、 急性中毒(薬物、アルコール)、薬物離脱、急性代謝障害(低血糖、テタニー) |
てんかん診断に必要な検査
てんかんと診断されるために必要な検査を説明します。
脳波
脳波は、てんかん診断にあたり最も有用な検査です。
てんかんの疑いがある時は、脳波を記録して、てんかん性放電および非突発性の異常所見を検索します。しかし、脳波が正常だとしても決しててんかんではないと診断されるわけではありません。
脳波にてんかん性異常波が検出されたとしても、それが臨床発作症状を説明できるものでなければなりません。発作および症候群が不明な場合は、ビデオ撮影をしながら脳波検査をした記録が参考となります。
神経画像検査
てんかんの発作を起こした患者さんは、神経画像検査を受ける必要があり、てんかんの疑いがある患者さんは、MRIまたはCT検査を受ける必要があります。
しかし、明らかな特発性全般てんかん、特発性局在関連てんかんの場合は、器質的異常の頻度が極めて低いため、必ずしも神経画像検査を受ける必要はありません。
MEG、PET、SPECTなどは脳外科的な対応を考慮する場合は必要ですが、てんかん診断には必須ではありません。これらは、あくまで補完的なものであり、より詳細な病態評価のためには効果的です。
専門機関に紹介してもらう方法も有用
医師が診断を迷う場合や、発作が複雑で分類が困難な場合、通常の抗てんかん薬で治療を3か月間行っても発作が抑制されない場合などは、診断が間違っている可能性があるため、日本てんかん学会認定の研修施設などの専門医療機関で診断してもらう必要があります。
てんかん発作とてんかんの分類
治療や予後の推測のために、てんかん発作とてんかんの分類の診断は非常に重要です。
てんかん発作の分類は1981年、てんかんの分類は1989年の国際抗てんかん連盟(ILAE)の分類を用います。
てんかん発作の分類
発作分類では、大きくⅠ部分発作、Ⅱ全般発作、Ⅲ分類不能の3つに分けることができます。そして、さらにⅠ部分発作は3つ、Ⅱ全般発作は7つに分類されます。Ⅲ分類不能は、発作の詳細が十分捉えられない場合に用いられます。
それぞれ詳しく見てみましょう。
Ⅰ.部分(焦点・局所)発作
A.単純部分発作(意識滅損・意識障害はなし)
1.運動徴候を呈するもの |
a)マーチを示さない焦点運動性 b)マーチを示す焦点運動性(Jackson型) c)偏向性(方向性) d)姿勢性 e)音声性(発声あるいは言語制止、言語停止) |
2.体性感覚あるいは特殊感覚症状を呈するもの (単純幻覚、ヒソヒソ・ピカピカ・プンプンなど) |
a)体性感覚性 b)視覚性 c)聴覚性 d)嗅覚性 e)味覚性 f)めまい性 |
3.自律神経症あるいは徴候を呈するもの (上腹部感覚、蒼白、発汗、紅潮、立毛、散瞳を含む) |
4.精神症状(高次機能障害)を呈するもの (まれに意識障害を伴わないこともあるが、多くは複雑部分発作として経験される) |
a)言語障害性 b)記憶障害性(既視感など) c)認識性(夢様状態や時間感覚の変容など) d)感情性(恐怖や怒りなど) e)錯覚性(巨視症など) f)構造幻覚性(音楽や光景など) |
B.複雑部分発作(意識障害を伴い、時には単純部分発作で始まることもある)
1.単純部分発作で始まり、意識障害に移行するもの |
a)単純部分発作(A1~A4)で始まり、意識障害に移行するもの b)自動症を伴うもの |
2.意識障害(意識滅損)で始まるもの |
a)意識障害のみのもの b)自動症を伴うもの |
C.部分発作から二次的に全般化するもの(全般強直-間代、強直、あるいは間代発作でありえる)
1.単純部分発作(A)が全般発作へ進展するもの |
2.複雑部分発作(B)が全般発作へ進展するもの |
3.単純部分発作が複雑部分発作を経て全般発作へ進展するもの |
Ⅱ.全般発作(けいれん性あるいは非けいれん性)
A-1.あくび発作 |
a)意識障害(滅損)のみのもの b)軽度の間代要素を伴うもの c)脱力要素を伴うもの d)強直要素を伴うもの e)自動症を伴うもの f)自律神経要素を伴うもの(b~fは単独・組合せどちらもあり得る) |
A-2.非定型あくび |
a)筋緊張の変化はA-1よりはっきりとしている b)発作の起始・終末は急激ではない |
B.ミオクロニー発作(単発あるいは連発) |
C.間代発作 |
D.強直発作 |
E.強直間代発作 |
F.脱力発作(失立発作) |
Ⅲ.上記の分類に含まれていないてんかん発作
てんかん・てんかん症候群の分類
てんかん(症候群)は、局在関連てんかん・全般てんかん・未決定てんかんの3つに分類されています。そして、さらに局在関連てんかんは3つ、全般てんかんは2つに分類されます。
分類にあたり、局在関連てんかんと全般てんかんの区別が特に重要になります。この区別が、治療選択や原因検索、医療相談などに大きな影響を及ぼすためです。
それぞれ詳しく見てみましょう。
1.局在関連てんかんおよび症候群
1-1.特発性(年齢に関連して発病する) |
・中心・側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん ・後頭部に突発波をもつ小児てんかん ・原発性読書てんかん |
1-2.症候性 |
・小児の慢性進行性持続性部分てんかん ・特異な発作誘発様態を持つてんかん ・側頭葉てんかん ・前頭葉てんかん ・頭頂葉てんかん ・後頭葉てんかん |
1-3.潜因性 |
局在関連てんかんを示唆する徴候は、以下のようなものがあります。
- 病因となるような既往歴
- 発作が起こる時の局所性運動ないし感覚症状
- 発作中の局所性運動ないし感覚徴候
- 前兆
- 自動症
- 局所性脳形態異常
なお、潜因性とは、基盤の病因が推定できるけれど、確定していない状態を指し、ウェスト症候群やレンノックス・ガストー症候群などが含まれます。
2.全般てんかんおよび症候群
2-1.特発性(年齢に関連して発病する) |
・良性家族性新生児けいれん ・良性新生児けいれん ・乳児良性ミオクロニーてんかん ・小児あくびてんかん(ピクノレプシー) ・若年あくびてんかん ・若年ミオクロニーてんかん(衝撃小発作) ・覚醒時大発作てんかん ・上記以外の特発性全般てんかん ・特異な発作誘発様態を持つてんかん |
特発性全般てんかんを示唆する徴候は、以下のようなものがあります。
- 思春期までの小児期の発症
- 睡眠やアルコールがきっかけとなる発作
- 短時間の欠神発作
- 重延にならない強直・間代発作
- 早朝の強直・間代発作
- 脳波で3Hz棘徐派あるいは多棘徐派
2-2.潜因性あるいは症候群 |
・ウェスト症候群(電撃・点頭・礼拝けいれん) ・レンノックス・ガストー症候群 ・ミオクロニー失立発作てんかん ・ミオクロニーあくびてんかん |
2-3.症候性 |
症候性全般てんかんを示唆する徴候は、以下のようなものがあります。
- 非常に早い発症
- 頻繁な発作
- 発症前からの精神遅滞や神経症状
- 神経症状の進行や退行
- 広汎性緩徐棘徐派などの特異な脳波像
- 器質的脳形態異常
2-3-1.非特異病因 |
・早期ミオクロニー脳症 ・サプレッション・バーストを伴う早期乳児てんかん性脳症 ・上記以外の症候性全般てんかん |
2-3-2.特異症候群 |
3.焦点性か全般性か決定できないてんかんおよび症候群
3-1.全般発作と焦点発作を併有するてんかん |
・新生児発作 ・乳児重症ミオクロニーてんかん ・徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん ・獲得性てんかん性失語(ランドー・クレフナー症候群) ・上記以外の未決定てんかん |
3-2.明確な全般性あるいは焦点性のいずれかの特徴をも欠くてんかん |
未決定てんかんには、焦点性か全般性決定できないものと、焦点性と全般性どちらの特徴も同時に持っているものがあります。
4.特殊症候群
4-1.状況関連性発作(機会発作) |
・熱性けいれん ・孤発発作あるいは孤発のてんかん重延状態 ・アルコールや薬物、子癇などによる急性の代謝障害や急性中毒のさいにのみみられる発作 |
てんかんの後遺障害等級の認定基準
外傷性てんかんに関しては、発作の分類や回数などに着目します。
なお、1か月に2回以上の発作がある場合は、てんかん発作のみの単独であるとは考えづらく、脳挫傷による高度な高次脳機能障害が残っている可能性があります。そのため、高次脳機能障害にかかる第3級以上の認定基準によって認定されることになります。
等級ごとに詳しく見てみましょう。
等級 | 後遺障害 | |
---|---|---|
第5級 | 2号 | 1か月に1回以上の発作があり、その発作が下記のような状態 ・意識障害の有無を問わず転倒する発作 ・意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す動作 |
「転倒する発作」とは、
「意識消失が起こり、その後ただちに四肢などが強くつっぱる強直性の痙攣が続き、次第に短時間の収縮と弛緩を繰り返す間代性の痙攣に移行する」強直性代発作や、脱力発作のうち「意識は常にあるが、筋緊張が消失して倒れてしまう状態」が該当します。
「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す動作」とは、
意識混濁がみられるとともに、うろうろと歩き回るなど目的性を欠く行動が自動的に出現し、発作中は周囲の状況に正しくできなくなります。
等級 | 後遺障害 | |
---|---|---|
第7級 | 4号 | 転倒する発作が数か月に1回以上、 または転倒する発作以外の発作が1か月に1回以上ある状態 |
第9級 | 10号 | 数か月に1回以上の発作が転倒する発作以外の発作、 または服薬継続によっててんかん発作がほぼ完全に抑制されている状態 |
第12級 | 13号 | 発作の発言はないが、脳波上に明らかなてんかん性棘波が認められる状態 |
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