【交通事故による後遺障害等級】上肢に複数の障害が残った場合の認定基準

公開日:2017/05/18
最終更新日:2018/03/28

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後遺障害認定

上肢に後遺障害が複数残った人のイメージ画像上肢・下肢に複数の障害が残った場合、ただ単に等級を併合すると、等級評価の序列が乱れる恐れがあるため、労災の等級認定基準を用いて、自賠責の等級が認定されることになります。

併合

ア.系列が異なる障害が2つ以上ある場合は、労災則第14条2項および第3項により、併合して等級を認定する

【例1】
右上肢を手関節以上で失い(第5級2号)、かつ、左上肢の1関節の用を廃した(第8級6号)場合は、併合して第3級となります。

【例2】
右手の人差し指を失い(第11級6号)、かつ、左手の人差し指を失った(第11級6号)場合は、併合して第10級となります。

ただし、併合した結果として序列が乱れる場合は、直近上位または直近下位の等級で認定されます。

【例3】

1上肢を手関節以上で失い(第5級4号)、かつ、同じ上肢の上腕骨に癒合不全(第7級9号)を残した場合は、併合すると第3級となりますが、肘関節以上の失う(第4級4号)には達しないため、併合して第5級となります。

このように、同じ上肢に手関節以上または肘関節以上を亡失(第5級2号または第4級4号)と長官骨の変形障害を残す場合は、変形障害の程度に関わらず、手関節は併合して第5級、肘関節は第4級となります。

イ.下記の場合は、併合ではなくそれぞれ等級を認定する

a.等級の組み合わせが定められている場合

【例】
左右の上肢の用をともに全廃した場合、右上肢の用を全廃したもの(第5級6号)と左上肢の用を全廃したもの(第5級6号)を併合するのではなく、等級表に定められた「両上肢の用を全廃したもの(第1級4号)」が認定されます。

b.通常派生する関係にある場合

【例1】
橈骨の遠位骨端部の癒合不全または欠損と(第12級8号)、手関節の著しい機能障害(第10級10号)を残す場合は、上位の第10級10号が認定されます。

【例2】
上腕骨もしくは橈骨および尺骨の骨折部に癒合不全または変形を残し、その部位に疼痛を残す場合は、いずれか上位の等級が認定されます。

準用

後遺障害等級表に、その属する系列はありますが、該当する障害がない場合は、下記の方法で等級を認定することになります。

ア.併合の方法を用いて準用等級を定める

【例1】
1上肢の上腕骨に第7級9号の癒合不全を残し、かつ、同じ上肢の橈骨および尺骨に変形(第12級6号)が残った場合は、準用第6級が認定されます。

また、1上肢の機能障害と同じ上肢の手指の欠損または機能障害が残った場合は、これらはみなし系統であるため、上肢と手指それぞれ個別に等級を定め、さらに併合の方法を用いて準用等級が認定されることになります。

【例2】
1上肢の手関節の機能に障害が残し(第12級6号)、同じ上肢の親指の用を廃し(第10級7号)、かつ、中指を失った(第11級8号)場合は、手指に関する等級を併合の方法を用いて準用第9級に定め、さらに手関節の機能障害の等級と併合の方法を用いて準用第8級が認定されます。

ただし、併合の方法を用いた結果として序列が乱れる場合は、直近上位または直近下位の等級で認定されます。

a.直近上位の等級に認定されるもの

【例】
1手の小指を失い(第12級9号)、かつ、同じ手の薬指を用を廃した(第12級10号)場合は、併合の方法を用いると第11級となりますが、1手の親指以外の2指の用を廃したもの(第10級7号)よりは重く、1手の親指以外の2指を失ったもの(第9級12号)には達しないため、準用第10級となります。

b.直近下位の等級に認定されるもの

【例】
1上肢の肩関節および肘関節の用を廃し(第6級6号)、かつ、同じ上肢の母指および人差し指の用を廃した(第9級13号)場合は、併合の方法を用いると第5級となりますが、1上肢の用を全廃したもの(第5級6号)には達しないため、準用第6級となります。

c.3大関節のすべてに同じ機能障害が残った場合

1上肢の3大関節のすべての機能に【著しい障害】が残った場合は第8級、1上肢のすべての関節の機能に【障害】が残った場合は第10級に準ずる障害として扱われます。

d.手関節または肘関節以上を失った場合

手関節以上または肘関節以上を失い、かつ、関節に機能障害が残った場合は、機能障害の程度に関係なく、手関節は準用第5級、肘関節は準用第4級として扱われます。

【例1】
1上肢を手関節以上で失い(第5級4号)、かつ、同じ上肢の肩関節の用を廃した(第8級6号)場合は、準用第5級となります。

【例2】
1上肢を肘関節以上で失い(第4級4号)、かつ、同じ上肢の肩関節の用を廃した(第8級6号)場合は、準用第4級となります。

イ.他の障害の等級を準用するもの

a.前腕の回内と回外については、その可動域が健側の4分の1以下に制限されているものは第10級、2分の1以下に制限されているものは第12級に準ずる関節の機能障害として扱われる

ちなみに、回内・回外の可動域制限と、同じ上肢の関節に機能障害が残った場合は、併合の方法を用いて準用等級を認定することになります。

しかし、手関節部または肘関節部の骨折などによる手関節または肘関節の機能障害と、回内・回外の可動域制限が残った場合は、いずれか上位の等級が認定されます。

b.上肢の動揺関節については、それが他動的・自動的であるかに関わらず、下記の基準によって等級が認定される

1常に硬性補装具を必要とする場合は、
第10級に準ずる関節の機能障害として取り扱われる
2時々硬性補装具を必要とする場合は、
第12級の準ずる関節の機能障害として取り扱われる
3習慣性脱臼の場合は、
第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱われる

加重

ア.aとbの場合は、障害の程度を加重した限度で障害補償を行う

a.もともと上肢に障害がある人が、同一系列内で新たな障害を負った場合

【例1】
1上肢を手関節以上で失っていた人が、さらに同じ上肢を肘関節以上で失った場合

【例2】
1上肢の手関節に機能障害がある人が、さらに同じ手関節の機能に著しい障害を負った場合

【例3】
1上肢の橈骨および尺骨に変形障害がある人が、さらに同じ上肢の上腕骨に偽関節の残した場合

b.もともと上肢に障害がある人が、障害のある部分以上を失った場合

【例1】
1上肢の橈骨および尺骨に変形障害がある人が、さらに同じ上肢を肘関節以上で失った場合

【例2】
1手の手指を失っていた、または1手の手指に機能障害がある人が、さらに同し上肢の手関節以上を失った場合

c.もともと1手の手指に障害がある人が、同じ手指または同じ手の別の手指に新たな障害を負った場合

【例1】
1手の小指の用を廃していた人が、さらに同じ手の中指の用を廃した場合

【例2】
1手の親指の指骨の一部を失っていた人が、さらにその親指を失った場合

d.(両手指を含む)左右両上肢の組み合わせ等級に該当する場合

もともと1上肢に障害がある人が、他の上肢に新たな障害を負った場合、または(手指を含む)同じ上肢に新たな障害を負い、他の上肢にも障害を負った結果として、下記の組み合わせ等級に該当した場合は、障害補償について加重として取り扱われます。

1両上肢を肘関節以上で失った場合(第1級3号)
2両上肢を手関節以上で失った場合(第2級3号)
3両上肢の用を全廃したもの(第1級4号)
4両手指をすべて失った場合(第3級5号)
5両手指のすべての用を廃した場合(第4級6号)

イ.手指の障害のうち、下記の場合は、新たな障害のみを残したものとして取り扱う

加重後の障害に対する等級に応ずる障害補償の額(日数)から、既存の障害に対する障害補償の額(日数)を差し引いた額が、新たな障害のみの障害補償を下回る場合。

【例1】
1手の人差し指と中指を失っていた人が(第9級12号、給付基礎日額の391日分)、新たに薬指を失った場合、加重後の障害は第8級3号となるが(503日分)、給付基礎日額503日分から391日分を差し引いた112日分が、薬指のみを失った場合の第11級8号、給付基礎日額の223日分を下回るため、障害補償の額は薬指のみを失った場合の第11級8号で算定します。

【例2】
1上肢の手関節と肘関節の用を廃していた人が(第6級6号)、新たに中指の指骨の一部を失った場合、加重後の障害は準用第6級となるが、加重前の等級と同じであるため、傷害補償の額は新たな障害のみを残したものとして算定します。

その他

ア.親指延長術(血管や神経付遊離植皮を伴う造親指術を含む)を行った場合、術後の親指は切断時に比べて長くなるが、後遺障害としては、原則として「1手の親指を失ったもの(第9級12号)」として取り扱われます。

ただし、手術後の親指の延長が程度が、手術をしていない親指と比べて、明らかに指節間関節を超えていると認められた場合は、「1手の親指の用を廃したもの(第10級7号)」として取り扱われます。

イ.手指または足指の移植による親指の機能再建手術を行った場合、手術後の親指に残る機能障害と手術によって失うこととなった手指または足指の欠損障害が同時に生じたとみなし、準用または併合の方法で等級を認定することになります。

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