【交通事故による後遺障害等級】醜状障害

公開日:2017/04/26
最終更新日:2017/12/27

951人が閲覧しました

後遺障害認定

交通事故により顔に傷を負い包帯を巻いている女性のイメージ画像

 

 露出する部分に傷痕が残った場合に障害として認められる事がある

 傷痕がどれぐらい残ったのかの程度によって等級が変わる

 被害者の職業によっては逸失利益が認められやすい

交通事故によって被害者の顔や腕など、人に見える部分に傷痕が残ってしまった場合、「醜状障害」して後遺障害等級が認められる場合があります。しかし、この醜状障害は女性と男性、また被害者の職業などによって扱われ方が異なります

ここでは、その醜状障害について詳しく説明します。

男性と女性で差が出る醜状障害

例えば、夫婦で同じ車に乗っていて事故に遭い、顔に同じような傷を負った場合でも、通常は妻の方が損害賠償が大きくなります。

理由としては、女性の方が、見た目が悪くなることで受ける不利益が、男性よりも大きいと考えられているためです。また、顔に傷を受けることで発生する収入への影響も、男性よりも女性の方が大きいと考えられているためです。

醜状障害の後遺障害認定

男性と女性の醜状障害についてのイメージイラストでは、実際に後遺障害等級では男女間でどれほどの差が出るのでしょうか。

女性の場合「著しい醜状」と認められた場合は第7級が、それに至らない「単なる醜状」の場合は第12級が認められます。しかし、傷跡が残れば必ず認定というわけではなく、非該当とされる場合もあります。

これに対し、男性の場合は「著しい醜状」の場合が第12級、「単なる醜状」の場合は第14級ですので、女性とはかなりの差があるのがわかります。女性の容貌の保護を重視したことからくる差別的取扱いですが、男性には厳しすぎるという意見から現在は改正されました。

改正前の表

障害の程度男性の特徴女性の特徴
外貌に著しい醜状を残すもの12級14号7級12号
外貌に醜状を残すもの14級10号12級15号

改正後の表

区分等級程度
外貌  第7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
 第9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
 第12級14号  外貌に醜状を残すもの 
 上・下肢 第14級4号 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜い痕を残すもの
 第14級5号 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜い痕を残すもの

後遺障害等級が認められるための基準

次に、醜状障害として認められるために必要な基準を見てみましょう。

外貌

外貌とは、頭部・顔面部・頸部(首)のように、上肢や下肢以外に日常生活において露出する部分をいいます。

「著しい醜状」の基準

原則として、下記のいずれかに該当する場合で、人目につく程度のものを指します。

1頭部の場合は、手のひらの大きさ(指の部分は含まない。以下同)以上の傷痕、
または頭蓋骨の手のひらの大きさ以上の欠損
2顔面部の場合は、鶏の卵の大きさ以上の傷痕、または10円玉の大きさ以上の組織陥没
3頸部の場合は、手のひらの大きさ以上の傷痕

「相当程度の醜状」の基準

原則として、顔面部に長さ5㎝以上の線状痕で人目につく程度以上のものを指します。

「単なる醜状」の基準

原則として、下記のいずれかに該当する程度のものを指します。

1頭部の場合は、鶏の卵の大きさ以上の傷痕、または頭蓋骨に鶏の卵の大きさ以上の欠損
2顔面部の場合は、10円玉の大きさ以上の傷痕、または長さ3㎝以上の線状痕
3頸部の場合は、鶏の卵の大きさ以上の傷痕

その他

1傷害補償の対象となる外貌の醜状とは、人目につく程度以上に限られ、
傷痕や線状痕および組織陥没であっても、眉毛や頭髪などで隠れる部分は対象外
2顔面の神経麻痺は、神経系統の機能の障害だが、その結果として生じる口の歪みは、
「単なる醜状」として閉瞼不能または目瞼の障害として取り扱われる
3頭蓋骨の手のひらの大きさ以上の欠損による頭部の陥没が認められ、
それによる脳の圧迫で神経症状が生じる場合は、
外貌醜状障害か神経障害にかかわる等級のいずれか上位の等級が認定される
4目瞼や耳介および鼻の欠損障害については、
外貌醜状障害か欠損障害にかかわる等級のいずれか上位の等級が認定される
なお、耳介および鼻の欠損障害にかかわる醜状の取り扱いは以下の通り
【1】耳介軟骨部分の2分の1以上の欠損は「著しい醜状」、一部の欠損は「単なる醜状」
【2】鼻軟骨部分の全部または大部分の欠損は「著しい醜状」、
   一部または鼻翼の欠損は「単なる醜状」
52つ以上の傷痕・線状痕が近くに存在、
または相まって1つの傷痕・線状痕と同程度以上の醜状となる場合、
面積や長さなどを合算して等級が認定される
6火傷の治療後の黒褐色に変色、または色素脱失による白班などで、
人目につく程度以上、かつ、一生残ると認められた場合は「単なる醜状」

上肢・下肢

上肢または下肢の露出面とは、上肢については肘関節以下(下部を含む)、下肢については膝関節以下(足背部を含む)の部分をいいます。

「2つ以上の傷痕または線状痕」および「傷治療後の黒褐色に変色または色素脱失による白班など」のについては、上記の外貌【6】と同様の取り扱いになりますが、範囲は手のひらの大きさの醜い痕を残すものが該当します。

醜状障害の逸失利益

絆創膏による醜状障害についてのイメージイラスト上記の通り、醜状障害には男女差がありましたが、改正をもって等級認定の男女差に関しては一応の解決がみれらました。

しかし、交通事故の逸失利益の判断において、重要なのは等級そのものではなく、具体的な労働能力の喪失です。醜状障害は、麻痺や可動域制限などのように障害自体が身体機能を左右するものではないために、裁判上でも労働能力喪失の有無および喪失率が大きく争われることになります。

逸失利益が認められやすい職業

職業についていえば、女優やファッションモデル、ホステスなど、特に容貌が重要になる職業であれば、比較的容易に逸失利益が認められます。また、そこまででなくても、人に接することが多い仕事であれば、認められる可能性は高いと言えます。

また、未成年や若年層であれば、就職や転職の可能性が制限されることが多いという理由から、逸失利益が認められる可能性は高いです。しかし、逸失利益が認められるとは言え、喪失率や喪失期間が制限されるケースが多いのは否定できません。

男性の醜状障害

交通事故により顔に傷を負った男性のイメージ画像前述のとおり、男性に醜状障害が残った場合、女性の場合に比べ、後遺障害等級が低く抑えられていたという現実がありました。それが男女差別的であると批判を浴び、等級の改正に至りましたが、残念ながら、今でも男性の逸失利益の認定が、女性に比べて非常に困難であることは否定できません。

これは、「顔の傷は男の仕事に影響しない」という考え方からくるものと思われますが、男性であっても、職業が俳優やファッションモデルなどであれば、比較的認められる可能性が高いです。また、年齢や仕事内容によっては認められる場合がありますので、粘り強く保険会社にアピールしてみた方が良いでしょう。

醜状障害の労働能力喪失率

下記が醜状障害の後遺障害等級に対する労働能力喪失率です。

区分等級労働能力喪失率
外貌 第7級12号 56/100
 第9級16号 35/100
 第12級14号 14/100
上・下肢 第14級4号 5/100
 第14級5号

しかし、実際の裁判例では、傷の部位、程度、性別、年齢、職業、業務に対する支障、就職、転職の可能性などを考慮して喪失の有無、喪失率、喪失期間を判断する傾向にあります。

醜状障害の慰謝料

醜状障害も慰謝料が請求することができます。慰謝料の相場は、裁判基準で第7級は900万円~1100万円程度、第12級は250万円~300万円程度となります。

ちなみに、過去の裁判例において、必ずではありませんが逸失利益が認められない場合は、慰謝料を上乗せして調整を図るケースが多く、上記の相場より高額な慰謝料が認められる可能性もあります。

後遺障害の等級認定を受けるにあたり、スムーズかつ的確に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!

交通事故でケガを負い完治しないと判断された場合(症状固定)、適正な損害賠償額を受け取るためにも後遺障害の等級認定を受ける適正な等級認定を得るためには、書類作成から専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。

【後遺障害認定を弁護士に依頼するメリット】

・後遺障害認定に関する書類作成や審査などは専門的な知識が必要となるため、専門家である弁護士に任せることにより、スムーズに手続きを進めることができる。
・専門家により適正な障害等級を得ることができ、後遺障害慰謝料の増額が見込める。
・ケガをしている中で、心理的な負担を省ける。

↓  ↓  ↓

関連する記事一覧

シェアする