鎖骨などの体幹骨の変形障害は裸になってはっきりとわかる程度が認定の条件
基本的には労働能力喪失で認定の有無が争われる
変形が与える就労への影響を示すのが認定のポイント
ここでは、鎖骨・胸骨・肋骨・肩甲骨・骨盤骨の体幹骨の変形障害についてを、裁判上その労働能力喪失・喪失率・喪失期間がどう扱われるかとあわせて説明します。
鎖骨・胸骨・肋骨・肩甲骨・骨盤骨に著しい変形が残った場合は後遺障害等級は第12級5号に該当します。「著しい変形」とは、裸になった時に欠損を含む変形がはっきりとわかる程度とされています。そのため、変形がX線写真でなければわからない程度のものは該当しません。
目次
鎖骨の変形障害
鎖骨は、S字状に湾曲した長骨であり、胸骨と肩甲骨を繋げています。また、上肢帯の骨格を肩甲骨とともに構成し、肩甲骨と一体となって胸鎖関節を中心とする運動を行っています。
鎖骨の主な機能は以下の通りです。
- 肩甲帯の前後運動の支柱
- 筋の起こるところ、かつ着くところ
- 鎖骨下または腋窩動静脈、上腕神経叢の骨性の防御
- 鳥口鎖骨靭帯を介して、主に僧帽筋の作用を肩甲骨に伝える
上記でも4の機能が最も重要とされていますが、僧帽筋を三角筋に縫合すれば大きな機能障害は生じないとされており、先天性欠損や鎖骨を全摘出したとしても、肩関節の可動性や日常生活の動作には支障はないと言われています。
そのため、鎖骨変形だけでは労働能力の喪失が認められ辛く、労働能力喪失率が問題となります。
鎖骨変形の喪失率判断の視点
鎖骨変形の喪失率判断の視点としては、大きく3つに分けることができます。
1.変形の存在のみの場合
まず、変形の存在のみの場合は、変形の存在だけでは労働能力の喪失を認めることは困難とする裁判例が多いです。
しかし、被害者の職業がモデルなど外見を重視する職業の場合は、外貌醜状のように変形の存在自体が労働能力を喪失すると判断されるケースもあります。
2.痛みが生じている場合
痛みが生じている場合は、神経症状12級との均衡を図るためにも、労働能力の喪失は比較的認められやすいと言えます。
しかし、痛みは年が経つにつれて緩和するという考えから、喪失期間が制限される可能性があります。ただし、痛みが変形という器質的な原因によるものであることを重視して、期間を制限しないと判断されたケースもあるため、痛みの原因を詳細に検討する必要があります。
3.運動制限が生じている場合
最期に、運動制限が生じている場合は、前述の2つに比べると比較的高い喪失率が認められやすく、喪失期間についても67歳まで(もしくは平均余命年数の半分まで)認める裁判例が多いです。
これは、変形が改善できるものではないという性質であるうえに、痛みのように緩和するものではないことを重視しているためです。
肩甲骨の変形障害
肩甲骨は、胸郭の後外側部、第2~第8肋骨の高さにある平べったい骨であり、体部・頸部・肩甲関節窩・鳥口突起・肩甲棘・肩峰からなります。
前述のとおり肩甲骨は鎖骨と一体となって胸鎖関節を中心とする運動を行っています。
肩甲骨も鎖骨と同様に、変形の有無だけで判断するのではなく、どのような症状が、どのように就労に影響を及ぼすのかを具体的に示す必要があります。
胸骨の変形障害
胸骨は、胸骨柄・胸骨体・剣状突起からなります。肋骨・胸椎と相まって胸郭を構成し、心臓などの臓器を保護する役割を担っています。
胸骨変形障害の裁判例は少ないですが、鎖骨や肩甲骨と同様に、胸骨変形によって生じる症状や変形が与える就労への影響を具体的に示すことが、労働能力喪失の有無や喪失率の判断において重要と言えます。
肋骨の変形障害
肋骨は、肋硬骨および肋軟骨からなる左右12対の平たい骨で、胸骨・胸椎とともに胸郭を構成し、内臓を保護する役割があります。
肋骨変形障害の裁判例も多くはありませんが、他の変形障害と同様に、肋骨変形によってどのような症状が生じ、就労にどのように影響をするかを具体的に示すことが重要になると言えます。
骨盤骨の変形障害
骨盤は、左右の寛骨(下肢の付け根にあって下肢帯をなす骨格)と脊柱下端部(仙骨・尾骨)が作る環状骨格であり、脊柱が受ける荷重を2分けして左右の大腿骨に伝えるという役割があります。
また、骨盤の上部(大骨盤)は腹腔底として腹部内臓の受け皿となり、下部(小骨盤)は骨盤腔を作って膀胱・直腸・子宮などの骨盤内臓を収めます。
なお、骨盤は全身の骨格の中で最大の性差があるとされています。女性骨盤は産道として機能するため、小骨盤が大きく短くなります。一方、男性骨盤は運動機能に有利となるよう左右の股関節の距離が狭くなります。
骨盤骨変形の原因と考えられるもの
骨盤骨の変形は、事故による骨盤骨骨折が原因の変形と、腸骨の採取術が原因の変形の2つが考えられます。
腸骨の採取術とは、骨盤を構成する腸骨から採取した骨片を骨が欠損した部分の補てんや骨癒合促進のために移植することを指します。この採骨が原因で骨盤骨が変形した場合、その変形が著しいものであれば自賠責では第12級5号に該当します。
それぞれの労働能力の喪失・喪失率の判断視点を見てみましょう。
骨盤骨骨折が原因の変形
事故による骨盤骨骨折が原因の変形の場合は、労働能力の喪失、さらに喪失率表どおりの喪失率が認められるケースが多いです。
しかし、骨盤骨骨折が原因の変形であっても、変形による支障が少ないと判断されれば、労働能力の喪失は認めても、喪失率が下げられる可能性があります。そのため、他の変形と同様に、具体的な支障を立証する必要があります。
腸骨採取が原因の変形
腸骨の採取術が原因の変形の場合は、腸骨採取はあくまで医療行為の一環であり、身体に影響が残らないように行われるものであるとして、労働能力の喪失を認めない裁判例が多いです。
しかし、労働能力の喪失を認めない裁判例であっても、変形に伴って痛みが生じている場合は、喪失が認められる可能性がありますので、就労に与える影響を主張していくことが重要と言えます。
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