【交通事故による後遺障害等級】下肢の障害

公開日:2017/01/19
最終更新日:2018/03/28

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後遺障害認定

人間の足首のイメージ写真

 

 下肢の障害はほぼ上肢と同じ分類

 欠損障害の等級は失った部位で認定される

 機能障害は「可動域」が争点になりやすい

下肢の障害に関する後遺障害等級は、上肢の障害と同様、切断・骨折・脱臼・神経麻痺などによる欠損障害(短縮障害)機能障害変形障害に分類されます。それぞれ詳しく見てみましょう。

【下肢の障害】欠損障害

下肢の欠損障害とは、下肢の全部または一部を失った状態をいいます。

まず、下肢の欠損障害に関する後遺障害等級と認定基準を見てみましょう。

等級後遺障害
第1級5号両下肢をひざ関節以上で失ったもの
第4級5号1下肢をひざ関節以上で失ったもの

下肢をひざ関節以上で失ったもの」は、

  1. 股関節において、寛骨と大腿骨を離断したもの
  2. 股関節とひざ関節の間で下肢を切断したもの
  3. ひざ関節において、大腿骨と脛骨および腓骨とを離断したもの

上記のいずれかに該当する状態をいいます。

等級後遺障害
第2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
第5級5号1下肢を足関節以上で失ったもの

下肢を足関節以上で失ったもの」は、

  1. ひざ関節と足関節の間で下肢を切断したもの
  2. 足関節において、脛骨および腓骨と距骨とを離断したもの

上記のいずれかに該当する状態をいいます。

等級後遺障害
第4級7号両足をリスフラン関節以上で失ったもの
第7級8号1足をリスフラン関節以上で失ったもの

足をリスフラン関節以上で失ったもの」は、

  1. 足根骨(踵骨・距骨・舟状骨・立方骨および3つの楔状骨からなる骨)において切断したもの
  2. リスフラン関節において、中足骨と足根骨とを離断したもの

上記のいずれかに該当する状態をいいます。

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下肢の欠損障害や下記の短縮障害に関しては、症状が画像より明らかであることが多く、また事故による下肢への傷害が明確であることが多いことから、等級自体や事故と後遺障害の因果関係が争われることは少ないです。多くの場合に争われるのは、労働能力喪失率です。

【下肢の障害】短縮障害

下肢短縮障害とは、上前腸骨棘と下腿内果下端の長さを測定し、健側と比べて短縮した状態をいいます。

それでは、下肢の短縮障害に関する後遺障害等級と認定基準を見てみましょう。

等級後遺障害
第8級5号1下肢を5㎝以上短縮したもの
第8級相当1下肢が5㎝以上長くなったもの
第10級8号1下肢を3㎝以上短縮したもの
第10級相当1下肢が3㎝以上長くなったもの
第13級8号1下肢を1㎝以上短縮したもの
第13級相当1下肢が1㎝以上長くなったもの

下肢短縮の測定は、一般的には上前腸骨棘と下腿内果下端の長さを測定する方法で行いますが、X線写真を用いる方法もあります。

【下肢の障害】機能障害

下肢の障害機能に関する後遺障害等級と認定基準を以下の通りです。

等級後遺障害
第1級6号両下肢の用を全廃したもの
第5級7号1下肢の用を全廃したもの

下肢の用を全廃したもの」は、下肢の3大関節が強直した状態をさし、足指全部が強直したた状態も含まれます。

等級後遺障害
第6級7号1下肢の3大関節のうち2関節の用を廃したもの
第8級7号1下肢の3大関節のうち1関節の用を廃したもの

関節の用を廃したもの」は、

  1. 関節が強直したもの
  2. 関節の完全緩急性麻痺、またはこれに近い状態にあるもの
  3. 人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの

上記のいずれかに該当する状態をいいます。

等級後遺障害
第10級11号1下肢の3大関節のうち1関節の機能に著しい障害を残すもの

関節の機能に著しい障害を残すもの」は、

  1. 関節の可動域が健側の可動域の2分の1以下に制限されるもの
  2. 人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節(可動域制限は不要)

上記のいずれかに該当する状態をいいます。

等級後遺障害
第12級7号1下肢の3大関節のうち1関節の機能に障害を残すもの

関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されるもの

可動域の測定方法

可動域の測定については、日本整形外科学会および日本リハビリテーション医師会により決定された「関節可動域表示ならびに測定方法」に準拠して定めた「第2 関節可動域の測定要領」に基づいて行われます。

「可動域」に関する重要なポイント

下肢の機能障害に関しては、可動域が争いのポイントとなる場合が多いです。

その場合、新たに測定することはもちろんですが、受傷後から症状固定までの回復の過程に不自然または不合理な点がないか検討されることになります。

そして、下肢の機能障害の認定において重要となるポイントが3点ありますので、それぞれ詳しく見てみましょう。

1.参考可動域角度

関節運動は性別や年齢などによる個人差があるため、通常、可動域制限の判定には後遺障害が残っていない健側との比較を行います。しかし、両足に後遺障害が残っている場合など、健側との比較が難しい場合は、下記の参考可動域と比較を行うことになります。

部位運動方向参考可動域角度基本軸
屈曲125°体幹と並行
伸展15°
外転45°両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂線
内転20°
外旋45°膝蓋より下ろした垂線
内旋45°
屈曲130°大腿骨
伸展
屈曲45°腓骨への垂直線
伸展20°

2.自動運動と他動運動

自動運動とは、被害者自身が筋肉を作用させたときに生じる関節運動をいいます。これに対し、他動運動は、他人の手や機械の補助で可能な関節運動です。

可動域制限の測定は、原則として他動運動で行いますが、障害によっては自動運動による測定値を採用するケースもあります。

3.主要運動と参考運動

各関節の運動は、単一の場合と複数ある場合がありますが、複数ある場合には各運動ごとに重要性の差異があることから、それらの運動を主要運動・参考運動・その他の運動に区別をして障害を評価することになります。その区別は下記の通りです。

主要運動とは、各関節の日常の動作にとって最も重要なものをいいます。そして、関節の機能障害は、原則としてこの主要運動の制限の程度に応じて評価されます。

部位主要運動参考運動
股関節屈曲・伸展、外転・内転外旋・内旋
ひざ関節屈曲・伸展
足関節屈曲・伸展

ただし、下肢の3大関節について、主要運動の可動域が2分の1、または4分の3をわずかに(原則として5度)上回る場合には、参考運動も評価の対象となります。この場合、該当する関節の参考運動が2分の1以下、または4分の3以下に制限される時は、関節の著しい機能障害、または機能障害と認定されます。

なお、参考運動が複数ある関節に関しては、1つの参考運動の可動域角度が上記の通りに制限されていれば問題ありません。

【下肢の障害】変形障害

下肢の変形障害とは、偽関節を残す状態、または長管骨に癒合不全を残す状態をいいます。

偽関節は、骨折部の骨癒合のプロセスが完全に停止し、異常可動が認められる骨折の重篤な後遺症のひとつです。

それでは、下肢の変形障害に関する後遺障害等級と認定基準を見てみましょう。

等級後遺障害
第7級10号1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

下記のいずれかに該当し、常に硬性補装具が必要な状態をさします。

  1. 大腿骨の骨幹部などに癒合不全を残すもの
  2. 脛骨および腓骨の両方の骨幹部などに癒合不全を残すもの
  3. 脛骨の骨幹部などに癒合不全を残すもの
等級後遺障害
第8級9号1下肢に偽関節を残すもの

下記のいずれかに該当する状態をさします。

  1. 大腿骨の骨幹部などに癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要としないもの
  2. 脛骨および腓骨の両方の骨幹部などに癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要としないもの
  3. 腓骨の骨幹部などに癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要としないもの
等級後遺障害
第12級8号長管骨に変形を残すもの

下記のいずれかに該当する状態をさします。ちなみに、これらの変形が一つの長管骨に複数存在する場合であっても、この等級に該当することになります。

  1. 次のいずれかに該当し、外部から想見できる程度以上のもの
    なお、変形が腓骨のみであっても、その程度が著しい場合はこれに該当する
    a.大腿骨に変形を残すもの
    b.脛骨に変形を残すもの
  2. 大腿骨もしくは脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの、または腓骨の骨幹部などに癒合不全を残すもの
  3. 大腿骨または脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
  4. 大腿骨または脛骨の骨端部を除く直径が3分の2以下に減少したもの
  5. 大腿骨が外旋45度以上または内旋30度以上回旋変形癒合しているもの
    なお、判定の際には次のすべてに該当するかを確認
    a.外旋変形癒合に関しては、股関節の内旋が0度を超えて可動不可能なこと
     内旋変形癒合に関しては、股関節の外旋が15度を超えて可動不可能なこと
    b.エックス線写真などで明らかに大腿骨の回旋変形癒合が認められるもの

なお、長管骨の骨折部が短縮せずに良い方向に癒着している場合は、その部位に肥厚が生じていたとしても、長管骨の変形とは扱われなくなります。

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下肢の変形障害に関しては、認定基準が明確に定められているため、認定自体が争われることは少ないですが、その代わりに労働能力喪失率を巡って争われるケースが多いです。

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