交通事故によるムチ打ちの症状

公開日:2016/05/16
最終更新日:2018/03/27

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ムチ打ち交通事故後遺障害通院治療

交通事故のむち打ちを表現した画像交通事故において代表的な怪我といえば「ムチ打ち」が挙げられます。ムチ打ちは正式には「外傷性頸部症候群」や「頸椎捻挫」と呼ばれるもので、交通事故でよくムチ打ちになってしまう理由は、追突時の衝撃が首や肩にかかることが原因とされています。

交通事故のむち打ちの瞬間のイメージ画像

人間の頭は思いの外、重いもの。しかも、首という不安定なものに支えられているのですから、車同士の衝突や電信柱などの物へ衝突した際の衝撃はかなりのものになります。特にムチ打ちはその85%が後方からの追突によるものだと言われています。

交通事故の際によく起こる怪我なので、「たかがムチ打ち」と思われがちですが、事故の衝撃、または人によってその重症度は様々。軽症で済む人もいれば、完治するのに何年もかかる人や、最悪の場合、その違和感や不快な症状が一生続くということもあるのです。

症状が遅れてやってくる「ムチ打ち」

ムチ打ちの特徴として、事故直後には何も違和感がなくても翌日や数日後に症状が現れることもあるので、事故直後に異変がなくても「無傷だった」と思わないで、経過を見ることが重要な怪我といえます。

<ムチ打ちでよく現れる症状としては…>

  • 首や肩、背中の痛み
  • 耳鳴り
  • 頭痛
  • めまい
  • 食欲不振
  • 自律神経系の異常

などが多いようです。

このような症状が現れた場合は、速やかに病院に行き診察を受けましょう。ムチ打ちは治療が遅れれば遅れるほど治るのに時間のかかる怪我です。早めの対策が早期治癒に繋がるので、「そんなに痛くないから…」と放っておくと後で大変な目に遭ってしまうかもしれませんよ。

いろいろある「ムチ打ち」の種類

ムチ打ち(外傷性頸部症候群・TCS)は5つの種類に分類されています。

捻挫型:頸部周辺の筋肉や靭帯の軟部組織に炎症を伴うもの

交通事故後、肩のむち打ちに苦しむ女性の写真

カルテなどの傷病名には「頸部捻挫」や「外傷性頸部症候群」と記載される傷病で、頸部を包み込んでいる筋肉や靭帯の部分断裂や出血などで止まっている場合、この傷病名が付けられます。

「捻挫型」の初期症状は頸部の痛みと首の可動域が狭まる頸部運動制限です。

この捻挫型がムチ打ちの70%程度を占めており、捻挫型の場合は受傷から3ヶ月以内に治癒することが予測されるため、後遺障害の対象にはなりません。

神経根症型:脊髄から枝分かれした末梢神経、神経根に障害を残すもの

交通事故のむち打ちの骨と神経付近のイメージ画像

カルテに記載される傷病名は

  • 頸部捻挫
  • 外傷性頸部症候群
  • 頚椎挫傷
  • 頚椎神経根症
  • 頚椎椎間板ヘルニア

など。

神経根は上肢(肩口から先の手)を支配している神経なので、現れる症状として、頸部の痛みや頸部の運動制限の他に、肩や手、指にかけて重いような違和感や、だるさ、痛み、痺れなどを伴うことがあります。

神経根症型の場合は神経に障害をきたしているため、ムチ打ちの神経症状として後遺障害の対象となります。

バレ・リュー型:交感神経の損傷が原因で自律神経失調症が出現するもの

頸部には交感神経のかたまりがあり、首に左右一対に星のような形をしていることから星状神経節と呼ばれている器官があります。

この星状神経節が椎骨静脈の血流コントロールを行う役割を担っており、この神経に損傷が生じると様々な症状が出現します。

交通事故のむち打ちの首付近(頸部)の神経のイメージ画像

例えば…

  • 倦怠感
  • 疲労感
  • 熱感
  • 不眠
  • 脱力感
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 難聴
  • 眼精疲労
  • 流涙
  • 視力調節障害
  • 頭痛
  • 頭重感
  • 動悸
  • 息切れ
  • 四肢冷感
  • 食欲不振
  • 胃重感
  • 悪心
  • 腹痛
  • 下痢

…などなど

上記のような不定愁訴や自律神経失調症を発症することがあり、これらを「バレ・リュー症候群」と呼んでいます。このような症状に見舞われるのだから後期障害に認定されてもおかしくないと思われるかもしれませんが、バレ・リュー症候群で後期障害に認定されることはほとんどありません。

交通事故のむち打ちの結果、頸部に麻酔を打つイメージ画像

その理由は、バレ・リュー症候群はペインクリニック(痛みの緩和に特化したクリニック)や麻酔科での治療で症状を改善することができるためです。

「ムチ打ち=整形外科」と思っている人がほとんどで、その治療も整形外科で行うのが当たり前と思っている人がほとんどですが、バレ・リュー症候群に関しては、麻酔科やペインクリニックでの星状神経節ブロックや硬膜外ブロック療法が必要とされます。

整形外科で上記のような症状を訴えた場合、知識に乏しい医師に当たってしまうと、様々な診療科をたらい回しにされかねないので注意すべき点と言えるでしょう。

神経根症型とバレ・リュー型の混合タイプ

カルテに掲載される傷病名は「頸部捻挫」や「外傷性頸部症候群」、「頚椎挫傷」、「頚椎神経根症」、「頚椎椎間板ヘルニア」など。神経根症型とバレ・リュー型の混合ですので、現れる症状も神経根症型とバレ・リュー型の混合で、肩から手や指の痺れに加えて、バレ・リュー症候群特有の疲労感や倦怠感、不眠、めまい、吐き気、耳鳴り、難聴、頭痛などに悩まされることになります。

神経根症型とバレ・リュー型の混合タイプの場合は、神経根症は整形外科で、バレ・リュー症候群は麻酔科やペインクリニックで、と並行治療を行います。

脊髄症型(脊髄症状を示すもの)

交通事故のむちうちの脊髄を表現したイメージ画像

カルテや診断書に記載される傷病名は「脊髄不全損傷」や「頚椎椎間板ヘルニア」、「変形性頚椎症」、「頸髄症」、「脊柱管狭窄症」、「後縦靭帯骨化症」など。

症状も様々で、難治性の怪我ですが年齢変性(外傷によるものなのか年齢経過によるものなのか判断がつきにくい)に左右される部分も多いタイプのムチ打ち症になります。

脳髄液減少症

交通事故のむちうちの結果、脳に異常をきたした脳の状態のイメージ画像

また、非常に稀ですがムチ打ちによって「脳髄液減少症」を発症してしまうこともあります。

「脳髄液減少症」は頭蓋骨と脳の間にある脳髄液が減少してしまう症状。脳は頭蓋骨の中で脳髄液に包まれて浮かんでいる状態にあります。

しかし、外部からの刺激で脳髄液を包んでいる膜が破れ、脳髄液が漏れだすと、脳髄液に浮かんでいた脳が不安定な状態になり、頭蓋骨に接触したり、他の器官に接触したりして損傷してしまうことも…。

交通事故によるムチ打ちと診断されると、医師の目も患者自身も首や肩など、ムチ打ち症状の出やすい部位に目が行きがちですから、こういった「脳髄液減少症」という症状を見逃す危険性もあり、気づくのが遅れるというパターンも少なくないようです。ムチ打ちの治療を続けても効果がみられない場合は、脳髄液減少症である可能性も考えて治療に当たる必要があると言えるでしょう。

「たかがムチ打ち」では済まされない場合も…

交通事故によるムチ打ちの場合、約70%を占めるのが「捻挫型」と呼ばれる比較的軽いものですが、前述したように、ムチ打ちには様々なタイプのものがあり、「ムチ打ち=軽症」とは言えないのが現状です。

数日、数週間で治癒すればいいですが、人によっては何ヶ月、何年かかる人もいれば、一生付き合っていかなければならないこともあるのです。事故直後に症状が出なないからといって、放っておくと症状が長引いたり、悪化してしまったりする可能性もあります。

まずは病院で診察を受けましょう

むち打ちを調べる病院の画像

交通事故に巻き込まれたらまずは病院に行って、適切な診断を受けること。これが後々、後悔しないための最善策です。しかし、ここで重要なポイントは「病院ならどこでもいい」、「整形外科ならどこでもいい」という判断をしないこと!

ムチ打ちは軽く考えがちな怪我ですが、「大切な神経の束が集まった大事な器官」怪我です。軽症ならともかく、もしかしたら神経に何らかの損傷を与えているとも考えられます。

ですので、診察を受ける病院を選ぶ際には、神経まできちんと見てもらえるような所を選ぶべきでしょう。例えば「整形外科」や「神経内科」、「脳外科」、「交通事故外来」など。ただし、バレ・リュー症候群特有の症状が現れた場合は医師と相談して、ペインクリニックや麻酔科などへ診察を受けに行くことをおすすめします。

自己判断は悪化させる危険性大!

交通事故のむち打ちをレントゲンを使って調べる医師の写真

絶対にやめた方が良いのは最初から「整骨院」などに行くことです。交通事故によるムチ打ち症の70%は頚椎の捻挫ですから、整骨院での治療の方が効果があるという場合もありますが、「最初の診断を整骨院で行う」というのは大きな間違い。

なぜなら、整骨院ではレントゲンもCTもMRIも撮ることができないからです。

最初からただの捻挫と決めてかかるのは早計というもの。もし、神経にダメージがあったら、バレ・リュー症候群だったら、脳髄液に問題が生じていたら…整骨院では対処することができません。

まずは、きちんと病院で診察を受けて、その過程で病院の治療の方がいいのか、整骨院や鍼灸など東洋医学での治療の方がいいのか、または、並行治療の方がいいのかを医師と相談しながら判断するべきです。間違っても自己判断で「首が痛いから整骨院に行こう」と決めるのは絶対にやめましょう。

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