後遺障害認定を得るためには「事故直後の怪我の画像診断」「神経学テストを受ける」「定期的な通院」が重要
後遺障害認定を進める上で大事なポイントは症状固定という言葉が医者や保険会社から出始めた後
むち打ちの後遺障害等級は12級14号か14級9号のどちらか
ムチ打ちは骨折などと違い、レントゲンなどの画像診断で明確に怪我が特定されない怪我の為、「後遺障害の認定を受けにくい後遺症」とも呼ばれています。
実際に、交通事故の後遺症や後遺障害があるにもかかわらず「非該当」とされ、後遺障害の認定を受けることができず、痛みに耐えて、自費で病院や整骨院などに通っているという人も少なくありません。
このようなむち打ちで後遺障害等級を得るためにはどうすればいいのか、その秘策を見ていくことにします。
目次
後遺障害等級の認定を得る為のポイント3点
あとは、認定は裁判基準でする事じゃな。だがその為には弁護士に依頼しなくてはいけないんじゃ。
むち打ちに限らず、交通事故の怪我で後遺障害等級を得るためには、まずは適切な検査を受けることが大切になってきます。
検査を飛ばすと、のちに後遺障害等級の認定を受けるために必要な書類を提出しても「非該当」「認定不可」とされてしまうでしょう。
【後遺障害等級の認定を得る為のポイント3点】
1.事故直後に解像度3テスラ以上の画像診断を受ける
2.神経学テストを受ける
3.整骨院ではなく病院で治療を続ける
ポイント1:解像度3テスラ以上の画像診断を必ず受ける
事故直後に病院で怪我の画像診断を受けましょう。いくらレントゲンに映りにくいと言っても、事故直後であればMRIでヘルニアを見つけることができたり、CTに何らかの病変が映ることもあります。
また、画像診断はムチ打ちで後遺障害を得るための必要な資料となるので、必ず撮っておく必要があります。
なぜ画像診断が必須なのか
Q:何故交通事故直後に画像診断を受けたほうがよいのですか? |
A:怪我をした直後に画像診断を受けると、画像に体の異変が残っている可能性が高いからです(=証拠になる) |
「むち打ちは画像に映らない怪我の一つ」と言われていますが、レントゲン、MRI、CTなどの画像診断は必ず受けておきましょう。
ただし、目視できない解像度の低いものでは意味がありません。MRIの解像度はテスラという単位で決められています。一般的に流通しているものは1.5テスラのMRIが多いですが、できれば3テスラ以上のものが望ましいと言われています。
怪我による肉体の異変を画像で確認出来るものほど他覚的所見と言えるものはありません。後遺障害認定を受けるかどうかは別として、交通事故でむち打ちだと言われた、痛みを感じたらまずは画像検査を受けましょう。画像を残しておけば証拠として示談交渉にも役立ちます。
ポイント2:神経学的テストも忘れずに受ける
神経に何らかの異常をきたしていないか診断するための「神経学的テスト」を受ける必要があります。ジャクソンテスト・スパークリングテスト・腱反射テスト・筋電図テストなどが主な神経学的テストです。
担当医に「必要ない」と言われても、もしもの時のためにこの「画像診断」と「神経学的テスト」この2つの検査だけは受けておきましょう。
後遺障害等級の認定は症状固定後に書類を審査機関に提出し、その書類の内容で等級が決定されますが、等級を確定するのは症状固定後の状態だけを見て決めるのではありません。後遺障害認定の等級審査は検査の時点から調査が入ります。
つまり検査をする時は「後遺障害認定を得ることになるかもしれない」ということを頭の片隅にとどめておく必要があるということです。
ポイント3:きちんと「病院」に通院する
交通事故に遭ったときに怪我をしても病院で治療を受けなければ相手側の保険会社に「病院で治療を受けていないのだから交通事故で受けた怪我が完治した」とみなされ、場合によっては治療費を払わない可能性があります。
むち打ちになった後の治療期間が6ヶ月を超えていたとしても、10回程度しか通院しなかったのでは、「病院に行って治療しないのだから怪我はさほど重症ではない」と保険会社に判断されても文句は言えません。
たとえ仕事が忙しくて通院することができなくても同様の判断をされます。保険会社からは「仕事ができるのだから大丈夫だろう」と判断されるだけです。
後遺障害等級申請をする場合、整骨院の治療がメインでは申請が難しい
また、整骨院や鍼灸院をメインの治療方法にするのも後遺障害認定においてはNGの行為です。何故なら整骨院や鍼灸院は保険会社や後遺障害の認定機関にとって「施術であって治療ではない」とされているからです。
後遺障害等級の申請をする為には、きちんと病院に行って治療を受け続けることが必須になります。
保険会社の見解では「病院は治療」「整骨院などの東洋医学は施術」という認識なので、病院に通っていないということは、症状は改善し、治療の必要がないと捉えられる可能性が高く、後遺障害等級の申請を行っても「非該当」という判断をされることが多くなってしまいます。
豆知識:施術と治療の違い |
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整骨院や鍼灸院は保険医療機関(病院、開業院)ではありません。また、柔道整復師やはり師などは国家資格ではありますが、薬を処方できる医者ではありません。その為保険医療機関の医者が行う「治療」と区別するために「施術」と呼ばれています。 |
さらに、後遺障害等級の認定に必要な後遺症障害診断書を作成するのは担当している主治医です。その為きちんと病院に通院し担当医とのコミュニケーションを図っておくことも大切な下準備と言えます。
後遺障害等級の認定申請の流れ
症状固定は「治療を行っても、治療後は回復するがすぐ元の治療前の状態に戻ってしまう」「怪我の症状が一進一退を繰り返す」「これ以上治療を行っても回復が認められない」という身体の状態です。
この状態になると保険会社から「症状固定にしませんか」と聞かれる為、了承すると症状固定として扱われます。
症状固定だといわれる時期は医師と患者(=被害者)とのやりとりや治療の進行次第で決定します。症状固定にする時期はだいたい治療を始めてから6ヶ月目くらいが多いです。
症状固定という言葉が医者や保険会社から出始めたら、後遺障害等級申請を行う時期が来たととらえるべきです。
症状固定の基準とは
自賠責保険における症状固定の基準は「十分な治療を行っていても症状の改善が見られないと判断された場合、症状が固定している」とされています。
つまり、十分な治療が行われていなければ、「後遺障害として認定することはできない」ということ。十分な治療が行われていたかどうかを判断するのは、診断書や診療報酬明細書で、後遺障害診断書ではありません。
後遺障害等級を申請する上で理解しておきたいポイント3点 |
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・後遺障害診断書はあくまで後遺障害等級を認定してもらうための書類 |
後遺障害診断書は後遺障害等級を受けるために必要な申請書類です。この書類の出来によって申請が降りるかどうかが変わってきます。
認定されやすい「後遺症障害書」を書いてもらうには?
医師の中には後遺障害診断書を書かない、または執筆経験に乏しい医師も存在します。こういった事態を避けるため、予め病院に執筆経験のある医師がいるかどうか問い合わせておきましょう。
また、自覚症状でしかない痛みや痺れなどを「他覚的所見」としてきちんと記してもらうことも重要。「患者はこう言っている」というだけでは、「非該当」にされる確率はグッと上がります。後遺障害診断書の「他覚的症状」の欄をきちんと埋めてもらうことが大切です。
さらに「後遺障害の慰謝料が欲しいから等級認定が欲しい」「等級を上げて多くの慰謝料をもらいたい」からと医師に後遺障害診断書の書き方を指示する被害者が一部存在しますがこれは絶対にやってはいけません。
このような行為をとると医師は「この人は後遺障害の慰謝料が目的なんだ」と思い、非協力的になります。専門医が書いた診断書の書き直しを求めるなんてことは言語道断です。
後遺症障害書を医師に書いてもらったら
医師に納得のいく後遺障害診断書を書いてもらったら、必要な書類とともに保険会社へ提出します。
提出された書類は、保険会社を通じて損害保険料率算出機構(またはJA共済連)へ送られ、後遺障害が本当にあるのかどうかの調査が行われます。そして、その結果が保険会社へと通知され、被害者へ結果が知らされるのです。
ちなみに、加害者の任意保険会社経由で行われる申請は「事前認定」といい、被害者が自賠責保険経由で行う申請は「被害者請求」と言います。
もし事前認定で申請した場合、示談が成立するまで損害賠償金が支払われないといったデメリットが生じます。そもそも事前認定は加害者の任意保険会社の一括払いという制度を利用しているからです。
その為後遺障害等級を申請する際は、等級が認定された時点で損害賠償金が支払われる被害者請求のほうをおすすめします。
被害者請求の申請方法
事前認定は後遺障害診断書を保険会社へ送るだけですが、被害者請求は申請の仕方が事前認定とは異なります。
まず、加害者の自賠責保険会社に自賠責保険の請求書類を請求して用意し、交通事故証明書、支払い請求書兼支払い指図書、事故状況説明図、印鑑証明書、診断書と診療報酬明細書、後遺障害診断書を揃えて、相手の自賠責保険会社へ送ります。
様々な書類を揃えないといけないので面倒に思えるかもしれませんが、この方法は等級が確定した段階で損害賠償金が支払われますし、提出する資料も被害者が吟味できます。
異議申し立ては何度でもできる
また、後遺障害診断書を提出しても「非該当」という通知が来た場合は、異議申し立てを行うことができます。
しかも、何度でも行うことができます。しかし、ただ闇雲に行っても、非該当の通知が来るだけでしょう。「なぜ、非該当という結論に至ったのだろうか?」という分析が必要になり、等級の取りやすい方法を考える必要があります。
等級が認定されるためには、「事故との因果関係」「症状の程度」「症状の継続性」「他覚的所見」といったものが必要になりますが、素人目には何が不足しているのかわからない…という場合がほとんどでしょう。
非該当を等級のあるものにしたい場合は、ひとりで書類とにらめっこしているよりは、弁護士や司法書士といった交通事故案件に詳しいプロに書類を見てもらい、アドバイスをもらうことを考えた方が効率的と言えるのではないでしょうか?
むち打ちで受けられる後遺障害等級は12級か14級が殆ど
むち打ちで後遺障害認定を受けられる等級は12級か14級が殆どです。そこで「後遺障害等級が出て損害賠償金ももらえたから満足した」と思っていると、結果として慰謝料額で損をしている可能性があるのです。
何故ならば慰謝料請求の際にどの基準で請求をするかによって、もらえる慰謝料の額が全然違うからです。後遺障害等級を認定されたことでもらえるお金は「後遺障害慰謝料」という慰謝料の一つです。
どの基準で慰謝料を請求したかによって貰える金額が変わる
慰謝料の基準には「自賠責基準」と「任意基準」そして「裁判所基準」の3つの基準があります。
むち打ちの後遺障害認定等級
交通事故に遭って出来たむち打ちの後遺障害認定等級には「14級9号」と「12級13号」のふたつの認定が殆どです。
14級9号 |
---|
▶︎局所に神経症状を残すもの |
確認できる他覚的所見はないが、神経系統の障害が医学的に推定されるもの。外傷性の画像所見は確認できないが、自覚症状を説明する神経学的所見が認められるもの。 |
後遺障害慰謝料:自賠責基準¥320,000/裁判所基準¥1,100,000 |
12級13号 |
▶︎局所に頑固な神経症状を残すもの |
他覚的検査によって神経系統の障害が証明されるもの。自覚症状に一致する外傷性の画像所見と神経学的所見の両方が認められるもの。 |
後遺障害慰謝料:自賠責基準¥930,000/裁判所基準¥2,900,000 |
このように自賠責基準と裁判所基準では慰謝料の金額に三倍の差があります。
14級9号と12級13号の違いは?
14級9号と12級13号の違いは患者の訴える症状に、きちんとした「医学的裏付けがあるかないか」です。簡単にいえば14級に必要なのは「医学的根拠」、12級に必要なのは「医学的説明」ということです。
<各基準による慰謝料>
等級 | 自賠責基準 | 任意基準 | 裁判所基準 |
---|---|---|---|
第12級 | ¥930,000 | ¥1,000,000 | ¥2,900,000 |
第14級 | ¥320,000 | ¥400,000 | ¥1,100,000 |
※任意保険の場合は保険会社によって慰謝料の額がまちまちであり、明らかにされていないのでこの数字は推定となります。
同じ事故、同じ怪我、同じ等級でも自賠責基準と裁判所基準で3倍以上の差があります。違いを見れば「裁判所基準で慰謝料を計算してほしい」と思うのは当然です。
しかし被害者が保険会社に「裁判所基準で慰謝料が欲しい」と訴えても実行されることはありません。「裁判所基準」での慰謝料を望むのであれば、弁護士の力が必要となってくるのです。
Q:どうして裁判所基準の慰謝料請求は弁護士の力が必要なの? |
A:この基準は弁護士会が決めたからです。その為、弁護士ではないと活用できません。 |
まとめ・むち打ちで後遺障害等級を得るためには
後遺障害等級の認定を受けるための方法を見てきましたが、最も大切なのはまず病院にいき検査を受けることです。
後遺障害等級の申請に必要な診断書や後遺障害診断書をかけるのは病院の医師のみです。そこを理解せず、安いからと整骨院に行ってしまい、改善されなくて病院に駆け込んでも、後の祭り。順序を間違えないようにするのが大切です。
また医師も人間です。知らないことは知らないのが当然。いざお願いしたら診断書が書けないという事にならないように普段から怪我について相談し、コミュニケーションをとるようにしましょう。
後遺障害の等級認定を受けるにあたり、スムーズかつ的確に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!
交通事故でケガを負い完治しないと判断された場合(症状固定)、適正な損害賠償額を受け取るためにも後遺障害の等級認定を受ける適正な等級認定を得るためには、書類作成から専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。
【後遺障害認定を弁護士に依頼するメリット】
・後遺障害認定に関する書類作成や審査などは専門的な知識が必要となるため、専門家である弁護士に任せることにより、スムーズに手続きを進めることができる。
・専門家により適正な障害等級を得ることができ、後遺障害慰謝料の増額が見込める。
・ケガをしている中で、心理的な負担を省ける。
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