交通事故の被害者による損害賠償請求

交通事故損害賠償請求

交通事故の損害賠償を説明する女性の画像

交通事故の被害者となった場合、相手方に治療費や修理費などを請求することができます。これを損害賠償と言いますが、どの範囲まで損害賠償請求できるかご存知ですか?損害賠償により相手に請求できるものは意外と多くあります。

ですので、損害賠償請求できるものを知らなければ、本来損害賠償してもらえるものを負担してもらえないこともあり損をする可能性があります。

ここでは、損害賠償請求により支払われるお金の種類や支払いまでの流れ、損害賠償請求でトラブルになりそうな場合の対応について説明します。

損害賠償の特徴

損害賠償には、被害者として必ず押さえておかなければならない特徴的な点がいくつかあります。どのような特徴があるか見てみましょう。

賠償請求の相手は加害者だけとは限らない

交通事故における損害賠償を迫る人のイメージ写真損害賠償の制度は、交通事故を起こした加害者に懲罰を与えるためにあるのではなく、被害者の損害を補償することを目的としています。

そのため、交通事故を起こした車の所有者や、加害者が未成年者の場合は加害者の親など、直接の加害者ではない人にも損害賠償の責任を負わせ、より確実に損害の回復を図る場合もあります

加害者以外の損害賠償請求について詳しくはこちら

賠償請求できるのは相当因果関係の範囲

交通事故の損害賠償請求はドミノ倒しのような因果関係というイメージ写真交通事故によって生じた損害には必ず原因があり、この原因と損害の関係を因果関係と言います。この因果関係は、広げようと思えば無限に広げられることができますが、それでは加害者と被害者の負担は公平でなくなってしまいます。

そこで、加害者が補償するべき損害を「加害者の行為と相当な因果関係がある範囲」と基準が設けられました。つまり、加害者の行為が原因で発生した損害のみ、被害者は加害者に賠償請求することができるということです。

精神的な損害も賠償請求ができる

財産的な損害だけでなく、悲しみや恐怖、痛みなどによって生じる精神的な苦痛や損害も、慰謝料として加害者側に請求することができます。

慰謝料について詳しくはこちら

過失相殺や損益相殺などの調整が行われる

加害者・被害者が負担する損害を公平にするため、発生した損害に関して、被害者にも責任(過失)がある場合は、被害者も過失の程度に応じて損害を賠償することになります。これを過失相殺と言います。

過失相殺について詳しくはこちら

また、被害者が交通事故によって損害を被りながら、一方で労災保険や健康保険などで利益を得た場合、加害者が支払うべき損害賠償額から、その得た利益分の金額が引かれます。これを損益相殺と言います。

損益相殺について詳しくはこちらから

基本的に損害賠償金は非課税

国税庁は下記のような損害賠償金を受け取った場合は、非課税であると定めています。

1 心身に与えられた損害に対する慰謝料
2 不法行為や突発的な事故により資産に与えられた損害に対する賠償金
3 心身または資産に与えられた損害に対する相当の見舞金

損害賠償金は、あくまで受けた損害を回復するために支払われるものであるため、所得として扱われません。そのため、基本的には損害賠償金に税金はかからず、確定申告も必要もありません。

損害賠償額を算定する時に使う3つの基準

被害者が加害者側に請求できる損害賠償額は、定型化された基準を用いて計算することになります。その際用いる基準は、3つの種類があります。

  1. 自賠責保険基準
  2. 任意保険基準
  3. 裁判所基準(弁護士会基準)

それぞれどのようなものか見てみましょう。

自賠責保険基準

人身事故について、損害保険料率算出機構が自賠責保険の損害額を計算する際に用いられる基準です。この基準には支払い限度額があります。

任意保険基準

人身事故について、任意保険の損害額を計算する際に用いられる基準です。保険の自由化に伴い、統一の基準は廃止され、各保険会社が独自の支払い基準を設けています

裁判基準(弁護士会基準)

弁護士会が過去の裁判例を元に作成した基準です。日弁連交通事故相談センター東京支部が作成する損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)、日弁連交通事故相談センター本部が作成する損害賠償額算定基準(通称「青い本」)に掲載されています。

基準によって金額に大きな差が出る!

裁判基準>任意保険基準>自賠責保険基準

交通事故の損害賠償額を電卓を使って示す人の画像上記は損害賠償額を大きい順に並べたものです。最も高い裁判基準と、最も低い自賠責保険基準では、請求項目によっては賠償額が2倍以上も差が出ることもあります

保険会社から示談で掲示される賠償額は、自賠責保険基準・任意保険基準を用いた低い金額であり、法律で決められた数字でもありません。全てが認められるわけではありませんが、被害者としては裁判基準で算定した賠償額を請求するようにしましょう。

損害賠償の請求内容

損害賠償がどのような制度なのかわかったところで、次は請求内容、つまりどのような損害を被害者が請求することができるのか見てみましょう。

「人身損害と物的損害」「財産的損害と精神的損害」

交通事故による損害は、大きく「人身損害」と「物的損害」の2つ、または「財産的な損害」と「精神的な損害」の2つに分けることができます。それぞれどのような損害なのか見てみましょう。

人身損害

傷害事故や死亡事故などの人身事故によって発生した損害を言います。

物的損害

物損事故により発生した損害を言います。

物的損害について詳しくはこちらから

財産的な損害

財産的な損害の中でも、所有物の毀損(きそん)や治療費の支出など、実際に財産が減少したことによって生じた積極損害と、事故に遭わなければ将来得られたであろう利益の喪失によって生じた消極損害に分かれます。

積極損害 治療費、通院交通費、入通院付添費、入院雑費、将来介護費、将来治療費
将来雑費、自動車改造費、家屋改造費、装具・器具等購入費、葬儀関係費
文書料、弁護士費用 など
消極損害 休業損害、逸失利益(後遺症逸失利益、死亡逸失利益) など

つまり、お金が実際に出ていくのが積極損害、お金が入ってこなくなるのが消極損害です。

積極損害/消極損害についてさらに詳しくはこちらから

精神的な損害

入院や通院をすることで受ける精神的な苦痛や、後遺障害を負ったことによる精神的なショックなどを指し、慰謝料という形で損害賠償を請求することができます。

慰謝料について詳しくはこちらから

請求できる損害をきちんと把握すること

check損害賠償額は、決して大まかに計算したものではなく、交通事故で被害者が被った損害の内容を一つ一つ積み上げた合計額です。そのため、被害者が請求できる損害の内容を理解することは、適正な損害賠償額を得るうえで非常に重要になります。

損害賠償額の算定に必要な資料

ここからは、被害者が損害賠償額を算定するにあたり、特に重要となる資料を紹介します。

診断書・診療報酬明細書

傷害慰謝料や入院雑費の算定や、慰謝料増額を主張する際に必要になります。診断書や診療報酬明細書で、実治療日数や入院日数、毎月の症状や治療内容を確認することができます。

入手方法

ファイルに綴じられた、休業の必要性を証明する医師の診断書や意見書のイメージ画像加害者側の保険会社が治療費を直接負担している場合は、保険会社は定期的に病院から診断書と診療報酬明細書を受け取っています。そのため、保険会社に請求すればコピーを送付してもらえます。

加害者側の保険会社が治療費を負担していない場合は、健康保険を使用していれば健康保険組合に、労災保険を適用していれば労働基準監督署に請求すれば、診療報酬明細書を開示してもらうことができます

後遺障害診断書・後遺障害等級認定票

後遺障害診断書と後遺障害等級認定票は、症状固定の日や後遺障害の内容、認定された後遺障害等級を証明するために必要となります。

入手方法

交通事故の診断書を作る医師の画像後遺障害診断書は、病院で作成を依頼して入手することができます。そのとき、後遺障害等級の認定は書面審査で行われることを頭に入れ、自分の症状を細かく正確に記入してもらうよう努力しましょう。

後遺障害等級認定票は、加害者側の自賠責保険会社が送付してくれます。しかし、事前認定で認定手続きを行った場合、保険会社が送付を忘れている場合もありますので、積極的に送付を依頼するようにしましょう。

後遺障害等級の認定について詳しくはこちら

各種費用の請求書・領収書

交通事故の通院費などの領収書をまとめて束にした画像加害者側の保険会社が損害と事故の因果関係を認めず、支払いを受け取ることができない場合、その期間の治療費、診断書料、タクシー代などの請求書や領収書を必ず保管しておくようにしてください。

ちなみに、被害者請求で後遺障害等級の手続きを行う場合は、後遺障害診断書の作成料は自己負担となりますので、必ず領収書を発行してもらい大切に保管しておきましょう。

「赤い本」と「青い本」

交通事故の損害賠償額を計算する赤い本と青い本の画像

裁判所・弁護士基準で損害賠償額の計算を行うとき、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(表紙の色から通称「赤い本」)が必須となり、『交通事故損害額算定基準』(同じく表紙の色から通称「青本」)も必要になることがあります。

赤い本=東京の基準、青い本=全国の基準

赤い本は、日弁連交通事故相談センターの東京支部が発行しており、東京地裁の実務に基づいた賠償額の算定基準と、参考になる判例が記載されています。

青い本は、同じく日弁連交通事故相談センターの本部が発行しており、全国の判例に基づく賠償額の算定基準が、判例とともに記載されています。

「○円~○円」のように算定基準が幅のある書き方をされている青い本に対し、赤い本は明確な基準が記載されているため、損害額が計算しやすい赤い本を先に用いることをお勧めします。ちなみに、東京以外の地域の事故であっても、赤い本を用いて損害額を算定したケースもあります。

赤い本と青い本の入手方法

赤い本と青い本は、書店で購入することはできません。それぞれの日弁連交通事故相談センターの窓口で直接購入するか、申込書をFAXすることで注文するかのどちらかになります。

詳細や購入は日弁連交通事故相談センターのHPをご覧ください。

日弁連交通事故相談センター公式HPはこちらから

交通事故での慰謝料を請求するにあたり、交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!

交通事故でケガを負った場合、慰謝料請求を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの慰謝料を増額できるケースがあります。初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、慰謝料を請求するにあたり不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。

【交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット】

・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する慰謝料を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも交渉を任せられるため、治療に専念できる。

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