交通事故の示談を保険会社を使わず自分で行う場合のメリット・デメリット

公開日:2016/05/16
最終更新日:2018/08/07

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交通事故加害者損害賠償示談交渉被害者過失割合

メリット、デメリットのイメージ画像

 

 自分で行う示談交渉のメリットは自分の意見をしっかりいえること

 逆にデメリットは精神的に疲れる上、金額の相場がわからないこと

 保険会社が示談交渉に介入できない場合もある

交通事故の示談を当事者同士で行っていたのは昔の話で、現在は被害者と加害者の両者が加入している保険会社が行うのが一般的です。 

保険会社が行うのが一般的ですが、自分で示談交渉を行うことはもちろん可能で、自分で行うしかないケースも存在します。 

では、交通事故の示談を保険会社を使わず自分で行う場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。

示談交渉を自分で行うメリット

りんね
示談交渉するとしても相手はプロじゃん。自分でする意味ってあるのかな?

アシスト爺ちゃん
なんじゃ急に。

りんね
だって保険会社に任せてしまったほうが楽じゃない。それでも自分でしたいって人がいるのは、それだけ何かあるってことなのかなーと。

アシスト爺ちゃん
もちろん自分で示談交渉をするメリットやデメリットはあるんじゃ。ではそれを見ていくとするかのう。

昔と違い、今は保険会社同士で行われる「示談交渉」ですが、こちらを自分で行うメリットは存在します。ですがメリットの反面、デメリットも多く存在するので注意が必要です。

自分で行う示談のメリット
  • 示談の内容をきちんと把握できる
  • 自分の思いを伝えられる
  • 保険会社同士のなれ合いになるのを防ぐ

きちんと現状を把握できる

示談交渉で和解して握手をする被害者と加害者のイメージ画像

保険会社任せにしていたら、「今どんな状態になっているのか」がよくわからないという場合も想定されます。

相手はどんなことを望んでいるのか、妥協点はどこにあるのか、当事者として示談交渉に介入していれば、双方の納得のいく落としどころを見つけて、スピーディーに解決することができるかもしれません。

示談とは和解するということ。いつまでも揉めていたら精神衛生上よくないことは明らか。現状を把握して、早めに解決したいと思っている人は自分で示談をすることにメリットがあると言えるのではないでしょうか?

自分の受けた苦痛を直接訴えられる

示談交渉を自分で行うメリットは何と言っても、「自分の意見をきちんと言える」というところでしょう。示談交渉は症状固定(怪我をした場合)を行い、後遺障害の等級認定(後遺症が残った場合)したところからスタートすることが殆どです。

自分がどんな痛みを受けて、今現在もどんな苦痛に悩まされているのかは保険会社からの又聞きでは伝わりづらいことがあるかもしれません。

情に訴えるではないですが、「あなたの担当している加害者は被害者にこのような苦痛を与えているのですよ」ということを、きちんと自分の口から伝えることができ、賠償額の正当性を述べることが、納得のいく示談交渉に繋がる可能性もあると言えます。

保険会社同士の馴れ合いを避ける 

自分の加入している保険会社が、100%自分の味方だと考えるのは早計。被害者の立場に立って、被害者の望む金額で示談できればそれが保険会社の利益になるわけではありません。なぜなら、示談交渉はオプションに過ぎず、利益を生むものではないからです。

逆に、被害者側にも過失があった場合は、保険料を支払わなくてはならなくなるので、基準の一番低い「自賠責基準」で交渉をまとめようというのが暗黙のルールとなっている場合もあります。

相手がたの保険会社に言われることなら、疑念を持ってしかるべきですが、自分の加入している保険会社の提案するものに対しては「そんなものか」と思ってしまうのが人間というものです

しかし、その提案を鵜呑みにしてしまうと後で損をしたことに気づいても、交渉が成立していればそれを覆すことはできません。そう言った保険会社同士の馴れ合い交渉を避けるためにも、自分で知識を詰め込み、示談交渉に臨むという方法もありと言えるのではないでしょうか?

りんね
自分の担当の保険会社も対応を気をつけないといけない場合があるってことね。

示談交渉を自分で行うデメリット

では、逆に自分で示談交渉を行う場合のデメリットについて考えてみましょう。デメリットは下記の4点が挙げられます。

自分で行う示談のデメリット
  • とにかく疲れる、ストレスが溜まる
  • 請求する金額がよくわからない
  • 一番高い「弁護士基準」の支払いが難しい
  • 延々と長引く可能性がある

精神的に疲れる

示談交渉でストレスにより疲れている女性のイメージイラスト

交通事故のような非日常的なアクシデントに見舞われ、精神的に疲れているところに「正当な賠償金を支払ってほしい被害者」「申し訳ないとは思っているがお金は出したくない加害者側の保険会社」が話し合うのですから一筋縄ではいきません。

自分で示談交渉を行うことは精神的に疲れますし、相談する相手もいないのですから、ドツボにハマっていくことも考えられます。

その点、保険会社(場合によっては弁護士)に交渉を丸投げできれば、精神的にも楽になりますし、面倒臭い手続きを行わずに済みます。

 示談交渉を自分で行うことによる最大のデメリットは「精神的に疲れる」というものでしょう。怪我をしたり交通事故で緊張しているときにさらにストレスを抱え込んでしまう事で自身が倒れてしまっては、元も子もなくなります。

妥当な金額がわからない

10000円札3枚と電卓のイメージイラスト

相手側の保健会社から金額を提示されても、これが本当に妥当な金額なのかどうかわからないというのも、自分で示談交渉を行う上でのデメリットになります。

起きてしまった事故はもうどうにもなりません。示談に応じても妥協しなければならない点も出てくるでしょう。

しかし、この金額で妥協して本当によいのだろうか?という疑問はネットの中にも、どんなに考えても答えが出てくるものではありません。この疑問を解決する手段はただひとつ、事故の概要を説明し、適正な金額を弾き出してくれる専門家からアドバイスをもらうより他ないのです。

弁護士基準の慰謝料が認められにくい

交通事故の被害に遭い、後遺症が残り後遺障害の等級認定をとった場合、慰謝料の基準は「自賠責基準」「任意基準」「弁護士基準」のどれかになります。

例えば、ムチ打ちで後遺障害14級となった場合、自賠責基準なら「32万円」、任意基準(推定)なら「40万円」、弁護士基準なら「110万円」となります。

慰謝料について提案をしている弁護士のイメージイラスト

自分で交渉した場合、どんなに頑張っても任意基準までで、弁護士基準の慰謝料は受け取ることはできません。

それは、「弁護士基準の慰謝料を求めるのであれば弁護士の助けが必要だから」です。

弁護士基準の慰謝料を認めてもらうためには、弁護士に依頼し、保険会社の弁護士と交渉し、交通事故紛争処理センターを利用するといった手続きが必要となります。

ただし、裁判を行う場合は本人でも弁護士基準を使うことはできますが、相手にするのは交通事故処理のプロである保険会社の弁護士ですから、簡単に弁護士基準での慰謝料を認めさせることはできないでしょう。

むち打ち後遺障害14級の請求
自賠責基準
任意基準
弁護士基準

交渉が長引く

専門的な知識の乏しい素人と交通事故のプロである保険会社では、なかなか折り合いがつかないということも予想されます。

素人意見だけでモノを言っても専門的な言葉で切々と「認めることはできません」と言われるのが目に見えています。どんなに話し合っても示談できないといった負の連鎖となる場合も…。

相手も落としどころを探っているはずなので、そこにマッチし、双方が納得のいく示談交渉ができれば良いのですが、自己主張をしているばかりでは、示談交渉に終わりはきません

双方疲弊して金額だけがかかる、なんてなってしまうこともありえます。

保険会社が示談交渉に介入することができないケース

示談の流れに介入する保険会社のイメージ画像

最近の示談交渉は保険会社同士で行われるのが一般的と前述しましたが、中には保険会社が示談交渉に介入できないケースも存在します。

自賠責保険にしか加入していなかった場合

自賠責保険は被害者を救済する最低限の保険なので、示談交渉を代行するサービスなどはついていません。ですので、自賠責保険にしか加入していない加害者は自分で示談交渉に応じるか、弁護士を立てるかのどちらかしかないのです。

これは被害者側にも言えること。任意保険に入っていなかった場合は、示談交渉を行ってくれる保険会社はありませんから、自分で示談交渉に臨むか、弁護士を立てるしか道はないのです。

過失の割合が0:10の場合

弁護士にしか介入できないケースがあることを指摘する弁護士のイメージイラスト

「過失の割合が0:10」ということは被害者にまったく落ち度がなかったということです。

その場合、示談交渉サービスのついた任意保険に加入していたとしても、保険会社は示談交渉を行ってくれません。

それは、弁護士法という法律の問題からくるもの。弁護士法第72条によると、「弁護士の資格を持たない人は報酬を目的として、法律的な紛争や交渉をしてはいけない」という決まりがあるのです。つまり、被害者の過失が0の場合は、保険会社から支払われる保険料がないため、交渉に参加することができないというわけですね。

りんね
つまり、被害者の保険会社が介入できるのは、こちらも過失があって慰謝料を相殺する形で支払う可能性があるからそれを抑えようって事なんだねー。

そうなると、被害者は自分で示談交渉に応じ、納得のいく結果を導き出すか、あるいは、報酬を目的として交渉することができる弁護士に示談交渉をお願いせざるを得ません。

0:10の場合、加害者側の賠償金はかなりのものになるでしょうから、相手側の保険会社も「なるべく安く抑えよう」と躍起になっていることでしょう。

そういった値下げ交渉のようなものの相手をするのはなかなかしんどいもの。自分で行うよりも、弁護士にお願いした方がスムーズに解決する可能性が高まるといえるでしょう。

当事者間の示談交渉はもめやすい

保険会社を通さずに被害者、加害者で示談交渉を行う場合は、必ずと言っていいほどもめることを覚悟しておかなければなりません。なぜなら、当たり前のことですが両者の立場が「被害者」と「加害者」だからです。

示談交渉でもめる被害者と加害者のイメージ画像

保険会社が導き出した過失の割合にもよりますが、被害者が加害者に対して、感情的になってしまうことは避けられません

特に、被害者側にも過失が認められた場合は、加害者側も大人しく被害者の話を聞くというわけにはいかないでしょう。

そして、話し合うのはお金の問題です。知識の乏しい者同士がいくら話しあっても埒があかない、そんなケースも少なくないと思われます。

すんなりと話しがまとまればそれに越したことはもちろんありませんが、誰か専門家が「これは妥当な金額です」と太鼓判を押してくれない限り、両者ともこれで本当に良いのか?という疑問にかられ、なかなか前に進めないということが想像できます。やはり、ここは専門家の意見を取り入れて示談交渉に臨むというのが一番効率の良い方法といえるでしょう。

自分で挑む示談交渉のメリットとデメリットについてのまとめ

メリットデメリットを確認する被害者のイメージ画像

保険会社に頼らず自分で示談交渉をする際のメリット、デメリットを見てきました。

結果として、メリットもありますが、デメリットのほうが格段に強いといえるでしょう。保険会社に任せてしまった場合、双方の保険会社でいいようにまとめられてしまい、自分が望む結果にならなかった話はよく耳にします。

また、精神的に疲弊して示談がまとまる前に自分が参ってしまって示談が止まってしまう事も十分考えられます。これらのことを踏まえたうえでもう一度、自分で示談交渉を行うべきか熟考するべきではないでしょうか。

りんね
保険会社も味方になってくれないケースが多いなら、じゃあ被害者の味方っているの?

アシスト爺ちゃん
そりゃ弁護士じゃ。弁護士は100%契約した相手の味方になるんじゃよ。だから安心して頼むといいぞ。

りんね
でもお金かかるよねー

アシスト爺ちゃん
そうでもないんじゃ。最近は相談料も着手金も無料の弁護士事務所が多く存在しておる。相談だけでもしてみるのも手じゃよ。話すだけですっきりすることもあるじゃろうて。

りんね
まるでカウンセラーみたいだね、弁護士って

交通事故の被害者になった場合、示談交渉を有利に進めたい場合は弁護士への依頼がおすすめです!

弁護士に依頼することで訪れる裁判所のイメージ画像

交通事故でケガを負った場合、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することによって、治療費や慰謝料などの示談金を増額できるケースがあります。

初回相談料や着手金が0円の弁護士事務所もありますので、示談交渉に不安を感じたらまずは弁護士へ相談してみましょう。

【交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット】

・専門知識が必要な示談交渉を弁護士に任せることにより、有利かつスムーズに示談交渉を進められる。
・相手方に請求する示談金を増額させることができる。
・通院中や入院中など、交通事故のダメージが残っているときでも、示談交渉を任せられるため、治療に専念できる。

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